山本巧次

1960年、和歌山県生まれ。中央大学法学部卒。
第13回「このミステリーがすごい!」大賞隠し玉となった『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう』(宝島社文庫)で2015年にデビュー。
生き生きとしたキャラクター造形と緻密な構成で読者を魅了する。
その他の著作に『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 両国橋の御落胤』『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 千両富くじ根津の夢』がある。
現在は鉄道会社に勤務


急行霧島
〜それぞれの昭和〜
山本巧次
ハヤカワ文庫



2024/2/21
2023/5/20 発行
 桜島が私の旅立ちを見守ってくれるーーー昭和36年、母を亡くして独り美里は、急行霧島で鹿児島から東京へ向かう。生き別れの父が東京で待っている。希望を乗せて汽車は走るが、県警の刑事が車内に潜む傷害犯を追っていた。さらに伝説のスリも目論む。急行霧島が進む中、やがて美里の身に危険が!終着点には、いったいなにが待つのか?人々が前を向いて進んだあの時代の人情系鉄道ミステリ。

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まやかしうらない処
信じる者は救われる
山本巧次
小学館文庫



2023/3/4
2022/9/11 発行
 本郷菊坂台にある占い処「瑠璃堂」。女主人・千鶴の占いは当たると評判で、少々高い見料だが、客は引きも切らない。ある日、正右衛門という男がやってきた。千鶴はその身なりや癖を子細に観察し、仕事や悩みを言い当てる。実は千鶴に占いの才はない。鋭い観察眼と卓抜した推理力、あとは口八丁で依頼人を丸め込んでいるのだ。相談は、家作を貸している男の行方が分からない、居所を占ってほしいというもの。怪しい借主に金儲けの気配を感じた千鶴は、瑠璃堂の調査役・権次郎と、執事役・梅治とともに調べに乗り出す。
 数日後、蔵前の札差・佐倉屋喜兵衛がやってきた。蔵に何者かが侵入した様子だが、盗られたものはない、人ならぬものの仕業では、と悩んでいた。その頃、江戸に贋金が出回っているという噂が流れだす。千鶴が瑠璃堂の売上金を調べると、一枚、贋小判が見つかった。佐倉屋が支払ったものだ。本格的に調べようと動き出した矢先、佐倉屋の一番番頭が何者かに刺されて死亡、間を置かず喜兵衛までもが石段を転げ落ちて死んだ。
 札差の事件と、江戸を揺るがす贋金造りの組織の繋がりとは? 一連の真相に迫る千鶴たちに、黒幕からの刺客が忍び寄る!

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八丁堀のおゆう 9
司法解剖には解体新書
山本巧次
宝島社文庫



2023/2/22
2022/11/19 発行

 時間旅行者にして十手持ちの女親分・おゆうこと関口優佳は、現代でコロナ第2波が囁かれる中、江戸でとある内偵を依頼された。
前長崎奉行の元配下だった男の死に、不審の向きがあるという。調査を進めると、他にも同じ状況で急死していた者がおり、さらには新たな死者も……。
連続不審死に毒殺を疑うおゆうは、杉田玄白の弟子の協力も得ながら、日本史上初めての司法解剖に向けて動き出す!

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  さすがに司法解剖は無理・・・・だね。どうするのかワクワクしながら待ったけど。


八丁堀のおゆう 8
ステイホームは江戸で
山本巧次
宝島社文庫



2022/3/1
2021/11/19 発行
 COVID‐19の感染拡大に伴い、自宅から二百年前へと避難することにした関口優佳。江戸では十手持ちの女親分おゆうとして活躍する優佳は、南町奉行所の同心・伝三郎からある調査を頼まれる。このひと月の間、子供が攫われ、数日後に何ごともなく戻ってくるという事件が続いているらしい。一方、跡目争いで世間の耳目を集めている材木商・信濃屋の周りでは、ついに殺人事件が発生して―。

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満鉄探偵
〜欧亜急行の殺人〜
山本巧次
PHP文芸文庫



2022/1/30
2022/1/20 発行
  昭和十一年、満州。南満州鉄道株式会社資料課の詫間耕一は、総裁・松岡洋右の命を受け、密偵の辻村とともに社内で頻発する書類紛失事件を調査することに。しかし調査対象だった人物が殺され、容疑者を追って乗り込んだ哈爾浜行きの急行列車の中で、さらなる殺人事件が…。謎の中国人美女、関東軍、ロシアのスパイらの思惑や陰謀が渦巻く中、詫間は真相に辿り着けるのか!

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 第1章  大連
 第2章  欧亜急行
 第3章  興安嶺
 第4章  満州里
 第5章  星ヶ浦

 年代的にも地理的にもなじみがないので、地味かなという印象。


入舟長屋のおみわ
江戸美人捕物帖
山本巧次
幻冬舎文庫



2021/4/4
令和2/12/10 発行
 北森下町にある長屋の大家の娘・お美羽は容姿端麗でしっかり者だが、勝ち気すぎる性格もあって二十一歳で独り身。父親に代わり、店賃を取り立てて、住人の世話をしている。ある日、小間物屋の悪い噂を耳にした。白黒つけなければ気がすまないお美羽は、密かに恋心を寄せる浪人の山際と手を組み、真相を探っていくが……。痛快な時代ミステリー!

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八丁堀のおゆう7
妖刀は怪盗を招く
山本巧次
宝島社



2021/2/23

貧乏長屋に小判が投げ込まれるという奇妙な事件に、十手持ちの女親分・おゆうこと現代人の関口優佳は、かの有名な鼠小僧の仕業かと色めき立つ。そんな折、おゆうたちは旗本の御用人から内々に相談を持ち掛けられた。屋敷に侵入した賊に、金二十両と脇差―かの妖刀・千子村正を盗まれたという。科学分析ラボの宇田川も江戸にやってきて、おゆうは鼠小僧の正体と村正の行方を追い始めるが…。(Bookデータベース)

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 江戸川が頻繁に江戸に来るようになった。その方が私には面白い。
 暗視ゴーグルを使って盗みに入るのを観察したり、ドローンで追跡したり、夜の張り込みをインカムのマイクで連絡を取り合ったり、江戸の人には知られてはまずい物を使っているのが楽しい。
 


早房希美の謎解き急行
山本巧次
双葉文庫



2021/1/25
2020/9/13 発行
 大手私鉄・武州急行電鉄に勤める早房希美のもとに、社内の各部署からトラブルが持ち込まれる。踏切の障害物検知装置が謎の誤作動を繰り返したり、駅員に階段で突き落とされたと乗客から訴えられたり――名刑事だった祖父の知恵を借りながら、鉄道の安全と乗客の生活を守るため、希美は奔走する! 鉄道ミステリー短編集。

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  ケース1ーー遮断機のくぐり抜けは大変危険です
  ケース2ーー雨の日は御足下に充分ご注意ください
  ケース3ーー危険物の持ち込みはお断りしております
  ケース4ーー痴漢は犯罪です
  ケース5ーー特急のご乗車には特急券が必要です

 それぞれの短編にはそれぞれの物語があって、殺人を未然に防いだり、M&Aが絡んだり、ストーカー、痴漢絡みの空き巣の発見、ロマンスの手助けなど、鉄道に関した物語のいろいろ。
 なかなか面白い。


留萌本線、最後の事件
トンネルの向こうは真っ白
山本巧次
早川書房



2020/7/20 
2020/4/25 発行
 鉄道ファンの浦本は廃線前の撮りおさめのため、北海道・留萌本線に乗車した。だが発車後まもなく発生したハイジャック事件に巻き込まれ、乗員乗客4名とともに車両内に閉じ込められてしまう。前代未聞の事態に頭を悩ます道警の安積らのもとに、犯人から連絡が入る。「道議会議員の河出を交渉役に、身代金として1億7550万を要求する」犯人はなぜこんな事件を起こしたのか? 鉄道を愛する著者がおくる、郷愁のミステリ

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八丁堀のおゆう 6
北からの黒船
山本巧次
宝島社



2020/6/24
2019/11/15 発行
 ロシアの武装商船アリョール号の船員ステパノフは、日本に漂着したところを捕らえられ、長崎へ移送されることとなった。しかし、陸路護送中、何者かの手引きを受けて脱走、江戸市中に侵入した可能性ありとのことで緊急配備が敷かれ、同心の伝三郎やおゆうにも招集がかかる。そんな折、ステパノフの移送責任者の配下が死体となって発見され……。不穏化する江戸時代の日露関係の渦中で、おゆうは現代科学捜査を武器に、事件解決に奔走する! (Bookデータベース)

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 この時代は、ロシアとはいわないでオロシャと言っていたらしい。でも伝三郎やおゆうは無意識にロシアと言ってしまったりするので面白い。
 なにやらややこしいが・・・・・・アメリカ人なのにロシア人のふりをして入国か。
 再び宇田川が江戸に来るのかと思ったら寸前で取りやめになったり、でも宇田川が江戸に来た方が面白そうだな。今後に期待しよう。

 ペリーが来る30年も前で、北の方ではロシアが来たりイギリス人が来たり、そろそろ日本の周りが賑やかになってきていた頃の話。


希望と殺意はレールに乗って
アメかぶ探偵の事件簿
山本巧次
講談社


2020/6/2
2020/1/20 発行
鉄道建設の陳情で長野の山間の村から上京中の村会議員が殺害され、裏金が奪われた。目撃談も証拠も得られず警察が頼ったのは、人気推理小説家でアメリカかぶれの探偵・城之内和樹と助手で旧華族のお嬢様・奥平真優。村へ向かった二人を待ち受けていたのは、鉄道計画を巡り対立する村民、開発に群がる人々、そして新たな事件。型にはまらない二人の大胆行動と推理で、村に潜む闇に迫る!謎に次ぐ謎、鮮やかな推理、あふれる旅情。(Bookデータベース)

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 アメリカかぶれの探偵×旧華族のお嬢様の異色のコンビでシリーズかするのかな。
 南信州の鉄道計画、恵那線か中津川線か・・・・・我が村に鉄道を誘致しようとする中での事件。
 戦争時の物資横領事件も絡む。

 


途中下車はできません
山本巧次
小学館



2019/10/1
2019/7/15 発行
北海道の各地を結ぶ鉄道のローカル駅。出会い、別れ、そして謎解きが、人々を数奇に絡み合わせる――。
<美馬牛駅>オープンしたての紅茶専門カフェ。オーナーの美和は美人だが、どこかワケありの雰囲気である。民宿「ドゥマン」に集う人々が推理をめぐらすが、そこには誰も知らない黒歴史があった。
<北浜駅>大学生の康生は行方不明になった祖母を探し、わずかな手がかりからこの地を訪れた。だが突然見知らぬ男にあらぬ疑いをかけられる。
<音威子府駅>札幌の建築会社で横領事件が発生。社長命令を受けた尾崎は音威子府を訪ねる。犯人の酒井は四千万円を元手に蕎麦屋を開こうとしている?
<落石駅>罠に嵌まり、振り込め詐欺グループに追われている荒川は、落石岬から投身自殺した、と見せかけ行方をくらますつもりだった。だが次々と邪魔が入って……。
<札幌駅>ライラック36号に乗る尾崎と酒井、康生。スーパーおおぞら8号に乗る荒川。地下鉄南北線でやってきた美和。多くの乗客が旅立ち、帰郷し、あるいは通り過ぎてゆく札幌駅のコンコースで、さらなる奇跡が巻き起こる!
現役鉄道マンで北海道フリークの著者が紡ぎ出す、人生大逆転ミステリー。

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 それぞれの駅でのちょっといい話。
 有川浩さんの「阪急電車」を思い出させる。


軍艦探偵
山本巧次
角川春樹事務所



2019/7/2
2018/4/18 発行
 短期現役士官制度に応募して海軍主計士官となった池崎幸一郎は、戦艦榛名(はるな)に配属された。山本五十六連合艦隊司令長官の視察を控え、運び込まれたはずの野菜の箱が一つ紛失したことが彼に報告される。銀蝿(海軍での食料盗難)かと思われたが、食料箱の総数は合い、破壊工作の疑いが生じる(第1話)。一方、駆逐艦岩風が救助した陸軍兵士の行方不明事件(第5話)はやがて他の事件と結びつき--.。
 鋭い推理力で軍艦内事件を解決し、図らずも「軍艦探偵」と呼ばれた海軍士官の活躍を描く軍艦ミステリー。

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 軍艦については、予備知識も無かったし、少し読みにくかったかも。戦時下でありながら、殺伐とした内容でなかったのが良かった。
 著者は、電車だけでなく軍艦にも詳しいらしい。


八丁堀のおゆう5
ドローン江戸を翔ぶ
山本巧次
宝島社



2019/6/28
2018/10/18 発行
連続する蔵破りに翻弄される南町奉行所の伝三郎らのため、江戸と現代で二重生活を送るおゆうこと関口優佳は、化学分析ラボの宇田川に協力を依頼。現代で証拠品の分析をしてもらうだけのつもりが、彼も江戸へとついてきて、ドローンなど最新技術の力で捜査を行うことに・・・・・・・・。やがて事件の関係者として、将軍家斉の側近、林肥後守の存在が浮かび上がる。背景には、大奥最大のスキャンダルが!?

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 サブタイトルのドローンを江戸で飛ばすとはどういうことか?と興味津々で読み進む。とうとう宇田川が江戸に乗り込むわけね、大丈夫か?どんなふうに話をまとめるのかが楽しみ。
 この後の歴史がどうなるのかを知っているから、事件の謎がわかる・・・・というのも、今回は解決しないまでも仕方が無いと思えるなあ。
 


開花鐵道探偵A
第一〇二列車の謎
山本巧次
東京創元社



2019/4/11
2018/12/21 発行
 明治18年。6年前、京都逢坂山トンネルの事件を解決した元八丁堀同心の草壁賢吾は、日本初の私鉄・日本鉄道を経営する奈良原繁社長と、井上勝鉄道局長に呼び出される。高崎発の貨物第102列車が大宮駅で脱線し、そこから積んだはずのない千両箱が発見された謎を解決してほしいという。千両箱は、江戸幕府の要人にして高崎で刑死した小栗上野介が、幕府から持ち出した隠し金と疑われていた。草壁は小野寺乙松技師と共に、捜査のため高崎へ向かう。しかし矢先、爆弾騒ぎに巻き込まれる。更に現地では、千両箱の事情を知るとみなされていた、小栗の元従者が行方不明に。千両箱を狙う警察や、自由民権運動家の過激派、維新で困窮した没落士族たちが不穏な動きを見せる中、ついに殺人が!(Bookデータベース)

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 小栗上野介の隠し金とは面白いモノと鐵道を関連させたものだ。
 興味はあるけど、少し読むのがしんどかったかな。テンポがゆるくて。


八丁堀のおゆう4
北斎にきいてみろ
山本巧次
宝島社




2018/7/12
2017/10/19 発行
新たにオープンする「東京青山美術館」の目玉のひとつ、葛飾北斎の肉筆画に贋作疑惑が浮上した。江戸時代と現代で二重生活を送る元OLの関口優佳=おゆうは、真贋をはっきりさせるため、江戸で直接、北斎に尋ねてみることに。しかし、おゆうが調査を始めた途端、絵の売買にかかわった仲買人が死体で発見される。事情を語るわけにいかないおゆうは、同心の伝三郎たちから疑惑を持たれながらも、現代科学と北斎の娘・阿栄の助けを得て、事件を追いかける

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 ちょっと複雑で何が何だか頭の中が混乱していたのだが、絵についての書き付けの方がニセモノだったということか?
 北斎自身が日記にそれについて書くということにしたのか?

 北斎と馬琴は同じ頃に生きていたのか・・・・・・。
 馬琴の作品に挿絵を描いた北斎って本当?面白いなあ。


阪堺電車177号の追憶
山本巧次
ハヤカワ文庫



2018/6/10
2017/9/20 発行
 大阪南部を走る路面電車、通称・阪堺電車。なかでも現役最古のモ161形177号は、大阪の街を85年間見つめつづけてきた―戦時下に運転士と乗客として出会ったふたりの女性の数奇な運命、バブル期に地上げ屋からたこ焼き店を守るべく分闘するキャバクラ嬢たち、撮り鉄の大学生vsパパラッチvs第三の男の奇妙な対決…昭和8年から平成29年の現代まで、阪堺電車で働く人々、沿線住人が遭遇した事件を鮮やかに描く連作短篇集。 (Bookデータベース)

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 85年間走り続けた電車の追憶なんて、面白い発想だ。大阪弁が効いている。
 プロローグ            平成二十九年三月
 第1章  二回の手拭い     昭和八年四月
 第2章  防空壕に入らない女    昭和二〇年六月
 第3章  財布とコロッケ    昭和三十四年九月
 第4章  二十五年目の再会    昭和四十五年五月
 第5章  宴の終わりは幽霊電車    平成三年五月
 第6章  鉄チャンとパパラッチのポルカ    平成二十四年七月
 エピローグ            平成二十九年八月

 伏線が効いていて、どの話も少しずつつながりがあって、見事に大団円。
 鉄道にまつわるいい話、鐵道の蘊蓄もほどほどにあって、良かった。


開化鐵道探偵
山本巧次
東京創元社



2018/5/19
2017/5/31 発行
 明治12年晩夏。鉄道局技手見習の小野寺乙松は、局長・井上勝の命を受け、元八丁堀同心の草壁賢吾を訪れる。「京都―大津間で鉄道を建設中だが、その逢坂山トンネルの工事現場で不審な事件が続発している。それを調査する探偵として雇いたい」という井上の依頼を伝え、面談の約束を取りつけるためだった。井上の熱意にほだされ、草壁は引き受けることに。逢坂山へ向かった小野寺たちだったが、現場に到着早々、仮開業間もない最寄り駅から京都に向かった乗客が、転落死を遂げたという報告を受ける。死者は工事関係者だった! 現場では、鉄道工事関係者と、鉄道開発により失業した運送業者ら鉄道反対派との対立が深まるばかり。そんな中、更に事件が……。

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 井上勝は、明治五傑の一人。逢坂山は、夫の実家のすぐそば、読んでいて親しみがわく。比叡山に抜ける山道があるそうな。

 この時代の、鐵道を敷設することすらまだ認めがたい人々の考え方や、それでも未来に向けて作っていくんだという強い意志がが感じられて、良かった。
 調べるのが、元八丁堀同心というのが変わった嗜好で面白かった。
 
 


八丁堀のおゆう 3
千両富くじ根津の夢
山本巧次
宝島社



2018/3/27
2016/12/20 発行
 史上最高額―現代の“宝くじ"の原形となった、根津・明昌院の千両富くじに沸く江戸の町で、呉服商の大店に盗人が忍び込んだ。同心の伝三郎たちは、その鮮やかな手口から、七年前に八軒の蔵を破った神出鬼没の盗人“疾風の文蔵”の仕業に違いないと確信する。一方、江戸と現代で二重生活を送る元OLの関口優佳=おゆうは、長屋の奥さんから依頼された旦那探しと並行して、指紋採取やDNA鑑定など現代科学を駆使して伝三郎が追う"蔵破り"の捜査に協力するが…。 (Bookデータベース)

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 富くじはこれから全盛期を迎えるのだが、水野左近将監忠邦が越前守となり、老中首座に就いて天保の改革を行ったとき全面禁正とされ、明治になるまで復活しなかった。水野忠邦に冷や汗をかかせた今回の富くじ騒動は、もしかしたら天保の禁上の遠因になったのではあるまいか、とおゆうが思う。
 おゆうは、「粕壁」を「春日部」だと思っていることがわかった。埼玉県の粕壁町が町村合併で春日部町になったのは、昭和十九年の四月、江戸時代を通して あそこはずっと「粕壁」だったんだーーーと伝三郎は気づいた。昭和20年までを知っている伝三郎ならではのことだ。春日部ということしか知らないおゆうは、戦後ずいぶんたってから生まれたのだろうとまで気づかれている。
 こういうところが面白い。
 

 今回は、祖母の澄子を知っているという男に出会う。こっそりとおゆうを心配し守ってくれていたりした。きっとよく似ているのだろう。


八丁堀のおゆう 2
両国橋の御落胤
山本巧次
宝島社



2018/4/5
2016/5/24 発行
 江戸と現代で二重生活を営む元OLの関口優佳=おゆうは、小間物問屋の主人から、息子が実の子かどうか調べてほしいと相談を受ける。清太郎を取り上げた産婆のおこうから、清太郎の出生に関する強請りまがいの手紙が届いたという。直接話を聞こうと、消息を絶ったおこうの行方を追う優佳であったが、そこで同心の伝三郎と鉢合わせる。老中からの依頼で、さる御大名の御落胤について調べているらしい。そんな中、清太郎が謎の男たちに襲撃され、さらにはおこうが死体で発見される――。ふたつの時代を行き来しながら御落胤騒動の真相に迫る!(Bookデータベース)

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 実の子かどうかは現代ならDNAで調べられる。小間物問屋の大津屋の親子が実の親子だとおゆうにはわかったが、それをどうやって江戸の知識で証明するのか?

 玄関についてのことがあった。現代ではあらゆる表口を玄関というが、江戸時代では、式台のある立派な入り口しか玄関とは言わない。明治以降だそうである。平成と江戸時代の感覚の違いは、うっかり口にしてはいけない。

 伝三郎は、備中の仏像の体内文書をおゆうが手に入れたと気がつくが、六日で備中を往復できるか、難題を仕掛けた。太平洋戦争経験者の伝三郎の知識では飛行機かもとなり、操縦桿を握ったことのある零戦か隼か、と思ったりするのもおかしい。そして新幹線などまだ無い時代だから頭にも浮かびやしない。いろいろ考える伝三郎が面白い。伝三郎に未来人だと気づかれているのにおゆうはまだ知らない。
 


八丁堀のおゆう 1
大江戸科学捜査

山本巧次

宝島社



2018/3/17
2015/8/20 発行
 江戸・文政年間、両国橋近くに住むおゆうは、江戸一番の薬種問屋・藤屋から調査を依頼される。
息子が殺されたうえに、薬を闇で横流ししている疑いまでかけられていたのだ。
おゆうは気心の知れた同心とともに調査に乗り出す……が、彼女の正体はミステリマニアの元OL関口優佳。祖母から受け継いだ家から繋がるタイムトンネルを通り、二百年の時を隔てて二重生活を送っていたのだった――。
 科学捜査研究所に勤める友人を頼りに、現代科学で事件の詳細をつかんでいく優佳だったが、
それをどうやって江戸の人間に伝えていくのか……。ふたつの時代を行き来しながら、おゆうは薬種問屋の闇に迫る! (Bookデータベース)

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 2015年『このミステリーがすごい! 』大賞、話題の隠し玉!ーー大賞でなく隠し玉って何よ、と思うが、審査員の期待が大きかったらしい。
 シリーズになっているので次が読みたい。

 科学捜査というのが私は好きだし、タイムスリップも好きだし、このアイデアは素晴らしい。
 八丁堀同心の伝三郎も1945年の夏から江戸時代にきた者なので、おゆうの不可思議さの元に気づいているらしい。だから貴重な物的証拠を不思議なほどおゆうに渡してくれる。
 
 科捜研の宇田川にも江戸時代に関わっていることがばれる。そりゃそうだ、江戸時代にしかないものを次々と持ち込むのだから。

 闇薬・阿片・和薬種改会所問題に発展、実行犯→黒幕→更に黒幕…
 


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