伊与原 新


1972年、大阪生れ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。
2010年、『お台場アイランドベイビー』で横溝正史ミステリ大賞を受賞



オオルリ流星群
伊与原新
角川書店



2023/1/14
2022/2/18 発行
 「あのときのメンツ、今みんなこっちにいるみたいだぜ」「まさか、スイ子か? なんでまた?」スイ子こと、山際彗子が秦野市に帰ってきた。手作りで太陽系の果てを観測する天文台を建てるというのだ。28年ぶりの再会を果たした高校時代の同級生・種村久志は、かつての仲間たちと共に、彗子の計画に力を貸すことに。高校最後の夏、協力して巨大なタペストリーを制作した日々に思いを馳せるが、天文台作りをきっかけに、あの夏に起きたことの真実が明らかになっていく。それは決して、美しいだけの時間ではなかった。そして久志たちは、屈託多き「いま」を自らの手で変えることができるのか。行き詰まった人生の中で隠された幸せに気付かせてくれる、静かな感動の物語。

     ************************

 


八月の銀の雪
伊与原新
新潮社



2022/12/28
2020/10/15 発行
 不愛想で手際が悪い――。コンビニのベトナム人店員グエンが、就活連敗中の理系大学生、堀川に見せた真の姿とは(「八月の銀の雪」)。会社を辞め、一人旅をしていた辰朗は、凧を揚げる初老の男に出会う。その父親が太平洋戦争に従軍した気象技術者だったことを知り……(「十万年の西風」)。科学の揺るぎない真実が、傷ついた心に希望の灯りをともす全5篇。

 直木賞候補、本屋大賞6位、山本周五郎賞候補

      ******************

 世の中をうまく渡れない不器用な人の話を読んでいたら辛くなってやめたくなるが、そういう人が不思議な出会いから自分を取り戻し前向きになっていくお話。そこに科学のエピソードが差し込まれているので私は好んで読み進む。

@「八月の銀の雪」就職活動に行き詰まって内定がとれない大学生とベトナム人留学生の話、地球のコアの話
A「海へ還る日」幼い娘に何もしてあげられないシングルマザーと博物館職員との話 、鯨の歌の話
B「アルノーと檸檬」 不動産管理会社契約社員と伝書鳩飼い主との話、鳩の話
C「玻璃を拾う」珪藻作品を巡る話 、元同僚に彼氏を奪われた女性、珪藻の話
D「十万年の西風」不正に耐えきれず会社を辞めた技術者。原子力と気球の話
気象の凧の話


ブルーネス
伊与原新
文藝春秋



2022/2/25
2016/8/25 発行
はみ出し者の地震学者たちが、究極の津波予測に挑む――!

東日本大震災から三年。かつて地震研究所で広報を担当していた準平は、学界の“プリンス”武智要介に、ある計画に誘われる。
準平は、無謀だと思いつつも、武智の強い決意に推されてこの計画に参加することに。
他にも、それぞれの思いを抱えた〈チーム武智〉の個性豊かなメンバーたち。
彼らは、次々と立ちはだかる困難を乗り越え、プロジェクトを成功させることができるのか。

元研究者の著者による、「科学」への思いにあふれたエンタメ長篇


     ***********************

 はみ出し者達の個性が生き生きして、科学の世界のポスドクの立場やら気持ちやらある中で困難なプロジェクトに挑んでいく姿は応援したい。
 


プチ・プロフェスール
Petit Professeur

伊与原 新
角川書店



2022/2/8
平成23年9/15 発行
 貧乏大学院生で人見知りのは、留学費用を稼ぐため、不本意ながら成金令嬢・理緒の家庭教師をすることに。だがこの生徒、いまどき珍しい理科大好き小学生。律を「教授」と呼び、慕ってくる。そこへ降りかかる奇妙な事件の数々…「教授、科学の力で解決しましょう!」引き気味の律と、あくまで前向きな理緒。いつしか2人に、不思議なコンビネーションが生まれて…無類に楽しい、理科乙女ミステリシリーズ(Bookデータベース)文庫版では「リケジョ」に改題

        ***********************

 投げ出し墓のバンディット
 恋するマクスウェル
 チェシャ猫マーダーケース
 虹のソノリティ
 四〇二号室のプロフェスール

 登場人物の設定が、とても好き。ワクワクしながら読み進む。
 私が、理科が好きだからかもしれない。
 蘊蓄があるけど、小学生に説明する設定だから難しすぎることもない。
 私が小学生の時にこんな大人が近くにいてくれたら、今頃私はリケジョだったかしら。
 このコンビでシリーズがあれば、楽しいだろうなあ。


コンタミ
科学汚染
contamintion

伊与原新
講談社



2022/2/6
2018/3/19 発行
「ニセ科学」――それは、根拠のないでたらめな科学用語をちりばめた、科学を装う「まがいもの」。大学院生のは、新進気鋭の生物学者・宇賀神と共に、ニセ科学批判の急先鋒である蓮見教授の元を訪ねる。そこで告げられたのは、宇賀神のライバルであり、想い人でもあった女性研究者の美冬に関する信じ難い事実だった。神秘の深海パワーで飲むだけでがんが治る、「万能深海酵母群」。「VEDY」と名付けられたニセ科学商品の開発に手を貸し、行方をくらませたのだ。
ニセ科学を扱うことは、研究者にとって「死」に等しい。なぜ彼女は悪魔の研究に手を染めたのか? 圭は宇賀神に命じられ、美冬の消息を追うが……。 すべての真相が明らかになったとき、「理性」と「感情」のジレンマが、哀しい現実を突きつける

  ******************************

 あまりにもたくさんの贋科学を元にした商品があることに驚く。ひょっとしたら効果があるかもしれない・・・・・・と思いそうになるので怖い。

 


青ノ果テ

伊与原新
新潮文庫



2022/1/1
令和2年/2/1 発行
東京から深澤が転校してきて、何もかもおかしくなった。壮多は怪我で「鹿踊り部」のメンバーを外され、幼馴染みの七夏は突然姿を消した。そんな中、壮多は深澤と先輩の三人で宮沢賢治ゆかりの地を巡る自転車旅に出る。花巻から早池峰山、種山高原と走り抜け、三陸を回り岩手山、八幡平へ。僕たちの「答え」はその道の先に見つかるだろうか。「青」のきらめきを一瞬の夏に描く傑作。

        ***************************
 
 この作品は、ライトノベル らしいが、中身の濃いすばらしいモノだった。
  
 読みながら、「銀河鉄道の夜」を読みたくなる。1度は読んだことがあるが、あまり詳しくないので、この中に出てくるいろんな場面や言葉を確かめてみたくなる。
 宮沢賢治の凄さを改めて感じた。あの時代でありながらの天文、地質などの知識・・・・・「地学の人」だったんだなあと、もっと早く知っていれば。

 「風の又三郎」をすぐに読んでみた。子供の時に読んだことがあったのか?他の童話も読んだことがあるような無いような。そしてこういうのは、どう解釈したらいいのかなあ。

 


梟のシエスタ
伊与原新
光文社



2021/12/27
2015/7/20 発行
 昼夜逆転の生活。昼間は眠そうで不機嫌、ときどきアルコールが入っている。嫌われてもひかれても気にしない。中世スペインを中心にした西洋建築史の専門家で、休暇はスペインで過ごす―。学長選挙の迫る地方国立大学に新たに赴任してきた袋井准教授。型破りな「フクロウ」は、閉塞感漂う学内のムードをものともしない。次々とトラブルに首を突っ込み、教授たちのスキャンダルを暴き立てていく。

     ***********************

 「フクロウ」さんは変わったキャラクターだけど、いまいちかな。


ルカの方舟
伊与原新
講談社


2021/12/18
2013/6/6 発行
 火星隕石に生命の痕跡が見つかった。世紀の発見を取材する記者・小日向に“ルカの末裔”から隕石論文の偽装告発メールが届く。研究室には、教授の遺体と方舟形に加工された隕石が残されていた。小日向は“天才”百地教授と謎の解明に乗り出す。東大院卒作家が研究の栄光と暗部を描く、傑作理系ミステリー。

        *************************

 


蝶が舞ったら、謎のち晴れ
〜気象予報士・蝶子の推理〜
伊与原 新
新潮文庫



2021/12/15
平成27/8/1 発行
天気予報が大嫌いな気象予報士・菜村蝶子と幼なじみの探偵・右田夏生の元に舞い込んでくるささやかな、でも奇妙な依頼の数々。降らなかったはずの雨や半世紀以上前の雷探し、“誘拐”されたバイオリンや早咲きの桜に秘められた想いを解き明かす鍵は天気予報!明日の天気を願う時、それは誰かの事を想う時―。

    ******************************

 
地学ネタ。昔、地学が好きだったので蘊蓄も好き。
 蝶子のキャラクターは面白いけどやり過ぎの感あり。
 短編の集まりで人の死なない暖かなミステリーは私好み。
  • 序章(書き下ろし)
  • ミモザの霞んだ日(初出:『小説新潮』2012年2月号)
  • 五十二年目の遠雷(初出:『小説新潮』2013年2月号)
  • 台風二過(初出:『小説新潮』2014年2月号)
  • エオルスの竪琴(初出:『小説新潮』2014年9月号)
  • 標本木の恋人(初出:『小説新潮』2015年2月号)
  • 終章(書き下ろし)


博物館のファントム
〜箕作博士のミステリ標本室〜
伊与原 新
集英社



2021/12/14
2014/1/30 発行
旧標本収蔵室に住みつき、ファントムと呼ばれる作(みつくり)類。. 人のことは変な呼び名で呼び、自らは死語になりつつある「博物学者」を名乗る。. 「どんなものも絶対に捨ててはならない」を博物館の第一原則と公言し、博物館の収蔵物と私物の様々なものに囲まれて過ごしている。. かたや、新人の博物館員・池之端環は片づけ魔。. 専門はコンピュータで、ひそかに生き物よりコンピュータのほうがかわいいと思っている。. 博物館に務めているものの、収蔵物に関する知識も興味もほぼない。. この正反対のコンビが博物館で起こる日常系(?. )ミステリを解決していく。. ...

     *****************************

 変人と新人の探偵コンビ、科学の蘊蓄が楽しい。
  • 呪いのルビーと鉱物少年(初出:『小説すばる』2012年4月号) - 「標本収蔵室の怪人」改題
  • ベラドンナの沈黙(初出:『小説すばる』2012年10号)
  • 送りオオカミと剥製師(初出:『小説すばる』2013年1月号)
  • マラケシュから来た化石売り(初出:『小説すばる』2013年4月号)
  • 死神に愛された甲虫(初出:『小説すばる』2013年6月号)
  • 異人類たちの子守唄(初出:『小説すばる』2013年10月号) - 「異人類たちの歌」改題



磁極反転の日
伊与原 新
新潮文庫


2021/11/24
へいせい29/4/1 発行
 地球のN極とS極が反転し始めた。大規模地磁気嵐が発生し、東京上空にオーロラが出現。異様な寒冷化と降り注ぐ宇宙線に不安が広がる中、女性記者浅田柊の耳に奇妙な話が聞こえてくる。都内の病院から妊婦たちが次々と失踪しているというのだ……。謎の団体、脳科学の闇、不可解な妊婦の死。取材の果て、柊が突き止めた恐るべき真相とは。パニックSFの新たなる傑作。『磁極反転』改題。

     ***************************

 


お台場アイランドベイビー
伊与原 新
角川書店



2021/11/19
平成22/9/30 発行
 日本を壊滅寸前にした大震災から4年後、刑事くずれのアウトロー巽丑寅は、不思議な魅力を持った少年・丈太と出会う。謎に包まれた彼の出自は、近年起こっている「震災ストリートチルドレン」たちの失踪と関連しているらしい。丑寅は元上司の鴻池みどりと協力し、子供たちの行方を追う。やがて、手がかりが震災で封鎖されたお台場にあることを知った丑寅は、丈太と潜入を試みるが―驚天動地の近未来「本格」アクション!!第30回横溝正史ミステリ大賞を受賞。

     ****************************

 「月まで三キロ」を読んだイメージから、本作も短編集かな?との勘違いで気楽に読み始めたら、けっこう重い長編だった。まさか近未来の設定とは・・・・。大賞受賞作でもあり、読み応えがあった。

 宮城県沖地震より前に書かれた作品だという驚き。壊滅的大地震が起こるなんて想像すらしてなかった中での作品、作家の想像力って凄い。


月まで三キロ
伊与原 新
新潮社



2021/11/12
2018/12/20 発行
 「月は一年に三・八センチずつ、地球から離れていってるんですよ」。死に場所を探してタクシーに乗った男を、運転手は山奥へと誘う。
 「実はわたし、一三八億年前に生まれたんだ」。妻を亡くした男が営む食堂で毎夜定食を頼む女性客が、小学生の娘に語った言葉の真意。
 姑の誕生日に家を出て、ひとりで山に登った主婦。出会った研究者に触発され、ある決意をする―。―山を刻む。
 科学のきらめきが人の想いを結びつけ折れそうな心に寄り添う短篇集。(Bookデータベース)

      **************************

 天体としての月、雪の結晶、アンモナイト、水月湖の年縞、素粒子・ISS、火山学の専門家たちが絡んできて、・・・・・これらの内容は好きだなあ。
 



読書日誌Top

inserted by FC2 system