1917年、イギリスのマインヘッド生まれ。
グラマー・スクール卒業後、ロンドンで会計監査の公務員となる。
第二次大戦中はイギリス空軍に所属し、除隊後はキングズ・カレッジに入学、物理学と数学を専攻した。
1946年のデビュー以来、r幼年期の終り』r渇きの海』『海底牧場』などの名作を次々と発表、
1973年の『宇宙のランデヴー』と1979年の『楽園の泉』はヒューゴー・ネビュラ両賞受賞をはたした。
『2001年宇宙の旅』に始まる《宇宙の旅(オデッセイ)》シリーズは、
世界的ベストセラーとなった。本書は『過ぎ去りし日々の光』につづく、バクスターとの二度めの共作長篇である。
2008年3月、スリランカで逝去.
地球幼年期の終わり Childhood's end アーサー・C・クラーク Arthur C. Clarke 沼沢洽治 訳 創元推理文庫 1984/2/13 2021/2/25 再読 1969/4/25 発行 |
20世紀後半、地球大国間の愚劣きわまる宇宙開発競争をあざ笑うかのように、突如として未知の大宇宙船団が地球に降下してきた。彼らは、他の太陽系からきた超人で、地球人とは比較にならぬほどの高度の知能と能力を備えた全能者であった。彼らは地球を全面的に管理し、戦争や病気や汚職といった有史以来の人類の悪のすべてを一掃し、その結果、地球にはインターナショナルな理想社会が出現した。しかし、この全能者たちの地球来訪の真意は、はたしてなんであろうか?(表紙扉より) ****************************** 「インディペンデンス・デイ」の映画の元ネタであるという記事を読み、再読する気になった。少しも覚えていない。ホントに読んだことがあるのか? SFの最高峰の作品だという。読んでいたときにはわからなかったが、内容は崇高なテーマを扱っていて、書かれた時代(1953年)にこんなことまで考えた著者の凄さを改めて感じた次第。 |
〈タイム・オデッセイ〉 太陽の盾 アーサー・C・クラーク & スティーブン・バクスター 中村 融 訳 2013/1/15 2008/4/20 発行 |
時の眼 の続編、ラストシーンが 太陽の盾 のファーストシーンとなって始まる。 悪意を持った宇宙の知性「魁種族}(ファーストボーン)が、地球の生物を滅ぼそうと何千年も前に仕掛けたもの、太陽のエネルギーの爆発、それのせいで地球上の生物が焼き殺される・・・・太陽のエネルギーを遮るために巨大な盾を作るプロジェクトが始まる. * * * 2037年6月8日、国連平和維持軍のビセサは〈断絶〉と呼ばれる現象で、アフガニスタンの国境地帯からもうひとつの地球、ミールに転移させられてしまっ た。そこは、200万年にわたるさまざまな時代と土地がつぎはぎにされた世界だった。アレクサンドロス大王やチンギス・ハンが覇権を争うミールで5年にわ たり苦闘したビセサは、なんとか故郷の地球に帰還する。ところが、戻ったのは、自分が失踪した翌日、6月9日のロンドンだった。 その日、地球を史上最悪の大災害が襲った。突如、太陽が異常をきたし、太陽嵐を起こしたのだ。そのため、未曾有の磁気嵐にみまわれた地球では、あらゆる機器が壊滅的打撃をうけて大混乱となり、多数の死傷者が出た。だが、これはたんなる前触れにすぎなかった。 月面にいる若き孤高の天文学者ユージーンは、さらに強大な太陽嵐が2042年4月に起こると予測した。それだけの規模の嵐になれば、地球上のあらゆる動植物はもちろんのこと、人類が生き延びることは不可能だ。 そこで、科学者たちは前代未聞の大計画を企てた。宇宙空間に地球と同じ大きさの盾を設置し、太陽の巨大なエネルギーを防ごうというのだ。途方もない計画の実現に向け、科学者、宇宙飛行士が結集し、たった4年あまりで"太陽の盾"を完成させようとするが…… 英国SF界の新旧ふたりの巨匠、クラークとバクスターが、『2001年宇宙の旅』に始まる《宇宙の旅》シリーズを新たな角度から描く《タイム・オデッセイ》シリーズ、待望の第二弾。 ****************************** |
〈タイム・オデッセイ〉 時の眼 アーサー・C・クラーク & スティーブン・バクスター 中村 融 訳 2007/8/26 2006/12/10 発行 |
久しぶりに読むクラーク。かつて『2001年宇宙の旅』に始まる《宇宙の旅(オデッセイ)》シリーズを読んだが、本作は、元のシリーズに対して「直角篇」つまり「続篇でも前篇でも」なく、「同様の前提を異なる方向から検討するもの」だというのだ。 宇宙と人類の進化を描くシリーズ、元のは善意のエイリアンが人類進化に干渉するモノリスが登場したが、本作は眼のような球体が多数空中に浮かんでおり、その干渉がはじめから敵意に満ちている設定である。 2037年、国連平和維持軍の英国人三人がヘリで不時着したのは1885年の大英帝国領インドのジャムルド砦だった。将兵のほか、アメリカ人記者ジョシュ、のちに大作家となる若き英国人記者キプリングがいた。百万年前に絶滅したはずの猿人までが捕まえられていた。そして、紀元前4世紀のアレクサンドロス大王の軍団が砦に迫りつつあった。 2037年、国際宇宙ステーションからソユーズ宇宙船で帰還中の宇宙飛行士たちが、通信途絶のため自力で着陸した所は、13世紀のモンゴルだった。 地球は恐るべき天変地異〈断絶〉により、200万年にわたるさまざまな時代と土地がキルトのようにつぎはぎされていた。「歴史上のさまざまな時代が並立する地球」という設定。時代の異なる人同士が話し合うことにより時代によるそれぞれの見方の違いに気付く。同時に存在する設定は面白い。 英国人たちが知恵を提供するアレクサンドロス大王の軍団と、宇宙飛行士たちとチンギス・ハン率いる軍勢がバビロンで激突する。なんというぜいたくな歴史の〈IF〉だろう。 アレクサンドロス大王やチンギス・ハンの場面では、それぞれ歴史小説としての楽しみもあり、両者が対決する場面では戦いの行方が気になり・・・・。 太陽に生じた異変については、本書の末尾で暗示されたあと、第二部 Sun Stormで大々的に描かれることになる。これもまた、大いに楽しみだ。 |
スティーヴン・バクスター
1957年、イギリスのリヴァプール生まれ。
ケンブリッジ大学とサウサンプトン大学で数学と工学を学ぶ。
数学と物理学の教師をするかたわら、作家活動をつづけ、1995年から専業作家となった。
1987年のデビュー以来、『プランク・ゼロ』や『真空ダイヤグラム』などが含まれる壮大な未来史を描く
《ジーリー》シリーズをはじめ、H・G・ウエルズの名作『タイム・マシン』の公式続篇で、
英米独の4賞を受賞した『タイム・シップ』、現代の孤島で生きるマンモスー族の冒険を描いた
『マンモス/反逆のシルヴァーヘア』など、話題作をつぎつぎと発表している。