森 博嗣


1957年愛知県生まれ。某国立大学工学部助教授職の傍ら、96年「すべてがFになる」で第一回メフィスト賞を受賞して作家デビュー。

☆ S&M シリーズ (犀川・萌絵シリーズ)

タイトル 内容紹介
すべてがFになる

森 博嗣 著

講談社 Novels



2005/4/5

  
 なんともユニークなミステリーというのが第一印象だった。登場人物の女性たちが普通でないのが特に良かった。天才工学博士、真賀田四季の想像できない天才ぶり、学生、西之園萌絵の頭の回転の早さと暗算と俗人とのギャップ、犀川助教授の助手、国枝桃子の無愛想さと女性には見えない風貌、真賀田研究所プログラマー島田文子の部屋はプラモデルのロボットの大群、特にガンダム系でシャーが好き・・・と。

本の扉にある内容紹介より
 十四歳のとき両親殺害の罪に問われ、外界との交流を拒んで孤島の研究施設に閉じこもった天才工学博士、真賀田四季。教え子の西之園萌絵と共に、島を訪ねたN大学工学部助教授、犀川創平は一週間、外部との交信を断っていた博士の部屋に入ろうとした。その瞬間、進み出てきたのはウエディングドレスを着た女の死体。そして、部屋に残されていたコンピュータのディスプレイに記されていたのは「すべてがFになる」という意味不明の言葉だった。

 
すべてがFになることが数学だったなんて・・・・説明されても解らないがこういう設定は好きな方だ。コンピュータが出てきて専門用語も出てきてなおさら解らないがそれでも面白くてたまらなかった。

初めて読んだのだが、早く次の作品に挑戦しよう。

冷たい密室と博士たち
笑わない数学者
詩的私的ジャック
封印再度

森 博嗣 著
講談社Novels



2005/4/2
岐阜県恵那市の旧家、香山家には代々伝わる家宝があった。その名は、「天地の瓢」と「無我の匣」。「無我の匣」には鍵がかけられており、「天地の瓢」には鍵が入っている。ただし、鍵は「瓢」の口よりも大きく、取り出すことができないのだ。五十年前の香山家の当主は、鍵を「瓢」の中にいれ、息子に残して、自殺したという。果たして「匣」を開けることが出来るのか?興味を持って香山家を訪れた西之園萌絵だが、そこにはさらに不思議な事件が待ち受けていた!

 WHO INSIDE  封印再度 タイトルのつけ方がいつも面白い。その他、私が読み進むのはユニークな言い回しや言葉の使い方に惹かれるからだと思う。
 「飛行機でいうと、西乃園萌絵はファイタ。国枝桃子助手はアタッカ。どうも、工学部の女性は攻撃的だ、と思う。犀川創平助教授はステルス機のような人だ」
 犀川と彼女の関係は・・・・2年以上も時間をかけていた・・・・ちょうど、アンドロメダまで原付で出かけるようなものだ。ちゃんとヘルメットをして・・・」
 トリックと謎解きも面白いが登場人物や彼らの会話もなかなかいい。
幻惑の死と使途
夏のレプリカ
今はもうない
数奇にして模型
有限と微小のパン


☆ V シリーズ ( 瀬在丸紅子シリーズ )

黒猫の三角
人形式モナリザ
月は幽咽のデバイス
夢・出逢い・魔性
魔剣天翔
恋恋蓮歩の演習
六人の超音波科学者
森 博嗣 著
講談社Novels


2005/4/19
登場人物は保呂草潤平(探偵、便利屋)、香具山紫子(大学生)、瀬在丸紅子(自称科学者)、小鳥遊練無(たかなしねりな、大学生、女装)など、変わった名前でしかも奇人変人が多い。会話の内容も「左手のフレミング」やら「体重は三乗で増えるけれど、足の断面積は二乗でしか増えないから・・・・」こんなのがいきなりポンポン出てくる。
 山中深くに六人の科学者が集う土井超音波研究所で殺人事件が起こる。そこに通じる唯一の橋が爆破され、電話も不通になり、山中深くに築かれた研究所は陸の孤島となってしまう。仮面の博士が主催する、所内でのパーティの最中に死体が発見される。招待されていた瀬在丸紅子たちは、祖父江七夏(愛知県刑事)も加わり真相の究明に乗り出す。
 このような状況にもかかわらず深刻さもなく人物たちの軽妙な会話が楽しい。瀬在丸紅子の推理が鋭い、独特の世界の森ミステリXシリーズ第7弾。
森ミステリィの怜悧な論理が冴えるVシリーズ第7弾。
捻れ屋敷の利純
朽ちる散る落ちる
赤緑黒白


☆ 短編集

まどろみ消去
地球儀のスライス
今夜はパラシュート博物館へ
虚空の逆マトリクス


☆ 他

そして二人だけになった

森 博嗣 著

新潮社



2005/4/25
巨大な海峡大橋を支える<アンカレイジ>内部に造られた建物に集まった男女六名。海水に囲まれ完全な密室となったこの部屋の中で、次々と殺人が起きる。最後に残ったのは、盲目の天才科学者とアシスタントの二人。この密室で一体何が起きたのか?そして、二人を待ち受けているのは――。知的罠を張りめぐらせた<森ミステリィ>単行本初登場。
 どんなからくりを用意しているのかと身構えて読み進んだ。4展開(転回)ある内の1ステップは、身代わりに押し付け本人たちが行方不明ということで「ああやっぱりそうだったのか」と思ったのだが、2ステップは「えっ、そんなあ、無理すぎる設定」と思い、3ステップでは特捜部の宮原を加えそれぞれ3人の手記が並んだところで芥川龍之介の「藪の中」のような構成か?と思い、最終ステップで、「やられちゃった」と、予想外の結末だった。多重人格まで扱うとは。
 いつも設定が凝っているなあ、それと物理法則も意味があったのかな?フーコーの振り子以外はあまり関係がなかったような気がしたのはただ知識が不足していただけ?物理の理論(相対性理論)はこじつけっぽい。まあ、わからなくても大丈夫だと思うけれど。
 あれほど複雑に設定しておいたのに最後は肩透かしのような気がしたが、むしろ森ワールドらしいというべきか否か。
 
女王の百年密室 女王が統治する幸福で豊かな楽園。不満も恨みもない世界で起こる空前の殺人。女王の塔の中で殺されていたのは・・・・・・。完全なる密室。そして、完全なる犯罪。
工学部・水柿助教授の日常

森 博嗣 著

幻冬舎



2005/5/11


 「水柿君は、・・・・・・」で始まるこれは、作者が何度も「小説である」というけれど、森氏の日常を描いたエッセイだと思われる。 森氏のミステリィは何冊か読んできてそろそろやめようと思っていたのだが、これはそれまでのミステリィとは趣が異なり、むしろ面白く読めた。
 森氏は言葉に対する感受性が鋭く(駄洒落が多い)、センスがあるというのか、少し変わった表現を好み、それが私の嗜好、思考、指向にあった気がする。身近なミステリィになりそうな話題を奥さんに話したり、オチがあったりなかったりする。

水柿君は、N大学工学部助教授である。専門は建築学科の建築材料。須摩子さんというミステリィ好きの、二つ年下の奥さんがいる。水柿君は、いつしか自分の身の回りで起こるなにげない細やかな不思議を、須摩子さんに披露するようになっていた。水柿君の周りには、ほのぼのミステリィがいっぱい。

* 奥さんは、実に気さくで、一晩寝ればリセットされる一昔前のパソコンのような人で・・・・・
* 夫婦の間で細かい謎をいちいち解明していたらきりがない。凸凹も、少々のギャップも、飛び越えて素早く走り去るのが、コツといえよう。これが、「夫婦オフロードの教訓」あるいは「夫婦ぜんざい一気飲みの教え」と呼ばれる法則で、・・・・・・。こういう表現をする。

 森氏は、テレビを見ない、新聞も読まない、電話もかけない、友達とも会わない、などなど、他の時間を排除して、ひたすら研究と趣味(飛行機や鉄道関係のミニチュア模型工作)に没頭しているらしいのだが、ちゃんと奥さんもいて、人の心もわかる不思議な人だ。もっともっと水柿助教授こと森博嗣氏について知りたくなってしまった。

墜ちていく僕たち
スカイ・クロラ
奥様はネットワーカ
森博嗣 著
メディアファクトリー

2005/4/27
某国立大学工学部で多発する暴行傷害事件。化学工学科秘書のスージィこと内野智佳の周辺でも不審な出来事が連続し、友人のルナも被害者となってしまう。事件は連続殺人に発展。それぞれに秘密を抱えた学部内の6人の人物の視点で謎を追うポエティカルな森ミステリィ。
迷宮百年の睡魔 外部との接触を拒絶した迷宮の島。サエバ・ミチルが、この地を訪れたその晩、宮殿の曼陀羅の中央、密室状況で僧侶の首なし死体が見つかった。深く美しく謎と解決が連鎖する傑作タペストリィ。
ナ・バ・テア
ZOKU
探偵伯爵と僕
工学部・水柿助教授の逡巡

森 博嗣 著

幻冬舎



2005/5/22
ミステリィ作家の森博嗣は作品よりも自身のほうがよっぽどミステリィだと思われたので、自伝風、エッセイ風、小説風・・・よくわからないが日常に続く逡巡を読んでみた。

 あふれ出てくる言葉の洪水、どうしてこんなに次々とふつうでない表現(駄洒落、軽口、試験的言葉)が出てくるのだろう。止まらない言葉がしばらく続いた後、やっと水柿助教授と須磨子さんが出てきてミステリィについて話したりする。なかなか話は進まないながらミステリィを書くきっかけと、出版社に送ってからの展開といつの間にかミステリィ作家になってしまった姿が描かれる。

 「もともと、水柿くんは自分の好きなもの以外に対しては非常に倹約かである。どんな分野にお金を使うのか、という状況をグラフにすると、趣味だけが槍のごとく突き出し、他はほとんどゼロにちかい超いびつな図になるだろう。食べることにも、着る物にも興味はない。酒を飲むこともなく、ギャンブルもしない、また、ゴルフもしない、海水浴もしない、スキーもしない、ダイビングも、スカイダイビングも、宇宙遊泳もしない。お祭りにも興味はないし、季節の風物詩にも、温泉にも、名物にも、行列ができる店にも関心はない。・・・・・・水柿君の生き方は、極めてシンプルだといって良いだろう。ほとんど監獄に入っている囚人と同じといえる。・・・・・なにか一つ、自分の好きな状況を部屋の中に集めてしまえば、もう一生そこにいられる。・・・・・・・条件が揃えば、引き籠りが、彼にとっての憧れの生活といえる。
 こんなに人と異なる水柿君こと森博嗣氏は充分ミステリィだった。



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