瀬名 秀明

1968年、静岡市生まれ。東北大学大学院博士課程修了。薬学博士。
大学院在学中の九五年『パラサイト・イヴ』で第二回日本ホラー大賞を、九八年『BRAIN VALLEY』で第十九回日本SF大賞を受賞する



虹の天象儀

瀬名秀明
祥伝社文庫



2021/6/25
平成13/11/10 発行
 まるで宇宙船のようにも見える、不思議な形をした星の投影機。44年間の使命を終え閉館した東京・渋谷の五島プラネタリウムに、不思議な少年がやって来た。「おじさん、プラネタリウムはどんな時代の星でもつくれるんでしょう?昔に吸い込まれそうになったことはない?」―一つの思いが心に刻まれ、昭和20年前後の時代にタイムスリップする感動の物語。

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ポロック生命体

瀬名秀明

新潮社



2021/3/21

2020/2/25 発行

 シンギュラリティに備えよ! VS将棋、VS小説、VS絵画――。人工知能は、芸術家の夢を見るか? 人工知能が、将棋の永世名人を破るときが来た。映画や小説の面白さを分析、数値化し、それに基づいて魅力的な物語が生まれるようになった。では、ディープラーニングで創作を会得したAIが制作した作品は「芸術」と呼べるのか? そして、次にAIが目指す世界とは? AIは人類と共存出来るのか?技術者とAIが次に目指す世界とは?最先端の科学知識を背景に、明日にでも訪れるであろうAIと人間の姿を、リアルに描き出す。 (Bookデータベース)

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 瀬名氏の小説を読むのは久しぶりだ。しばらく読まなかった間に難しくてついて行けなくなっている。でも思い出してみれば、瀬名氏はずっとロボット、人工知能の世界を描いてきた。これは近未来。

 VS将棋を描いた「負ける」ーー対戦ではAIの方が完全に強くなる。研究は先へ進み、人の実力を見極め、接待将棋 ができるか、いかに指し方に個性を与えるか、という感性の方向へすすむという。

 VS小説「144c」「きみに読む物語」ーー人間が人間たる所以といわれる芸術活動、とりわけ 物語る という創作の原点にして究極といえる小説作品で、人間と勝負して文学賞を獲れるか。

 表題作のVS絵画も含む「ポロック生命体」では、今までの作風を感じる内容だったので少しは理解が進んだかも。これをきっかけとして少しばかり考えてみよう。


第九の日

The tragedy of joy

瀬名 秀明


光文社







2007/7/25


2006/6/25 発行

『デカルトの密室』の先行作品とその続篇によって編まれた本作は、4つの短編でつながっている。それぞれには、有名な物語が関わっている。
 E・A・ポウ、H・G・ウェルズの「モロー博士の島」C・S・ルイスの「ナルニア国ものがたり」、エラリー・クインの「第八の日」 A・P・チェーホフ
などへの言及やオマージュなど。

 「ぼくは」で語られる物語は、ケンイチというロボットを作った尾形祐介が、ケンイチの視点で小説を書くという設定だ。ケンイチは現在、一ノ瀬玲奈と暮している。
 
 機械化したヒトと、ヒト化した機械が互いにその身体性をぶつけ合った時、どのような適応的心理性を生じるのか?

 人間の本性とは、人間にできることの範囲にすぎないロボットの本姓は?
 
 デカルトは「われ考える、ゆえにわ,れあり」といって、身体から意識の主体を切り離し、自己をすべての中心に置いた。

 どうして僕らは痛みを感じることができないのか

 人間の存在と、本姓と、ロボットとの関わりについて、哲学的に考えているので、難しい。ロボットが宗教を信じる設定は、不思議な感じがした。

 瀬名氏は、東北大学大学院薬学研究科博士課程終了した薬学博士。今の肩書きは、東北大学機械系の特任教授(SF機械工学企画担当)。

 ずっとロボットと人間の関わりについて研究を続けている。
 
「せつない未来」を描いたロボット小説集。「あしたのロボット」。
 第一線研究者による解説記事やこれまでのロボットを扱った国内外小説の傑作
26編の紹介など、究極最大のロボット・アンソロジー「ロボット・オペラ」など、ロボットについての著作も多数ある。


おとぎの国の科学


瀬名 秀明

晶文社






2007/3/7

2006/8/30 初版
 理系の作家の書く小説が読みたい、という思いを持つようになったのは、瀬名氏の「パラサイト・イブ」を読んで以来のことだ。
 本書は氏にとってはじめてのエッセイ集だそうだが、意外な感じがする。今までにも読んでいたような気がしたからだが、ここの2章に収録しているのは、日本経済新聞の夕刊に「プロムナード」というエッセイコーナーで連載したもので、そういう形で今まで目に触れていたものらしい。
 瀬名氏の文章は、真面目で几帳面で素人にわかるよう工夫されていて読みやすいので好きだ。

 1章は「科学について考える」と題して、脳科学やロボットについてなど、科学分野のテーマを与えられて書いたものの中から、比較的長文のエッセイを選んだという。このテーマは私も好き。

 『バラサイト・イヴ』が出版されてからしぱらくは、奇妙な写真撮影の依頼がひっきりなしにやってきた。白衣を着て交差点の真ん中に立つ。同じく白衣を着て緑色のスライムを持つ。虫眼鏡でカメラを覗き込む。笑い事ではない。・・・・イメージを固定されて困った様子がなにやらおかしい。

 映画についても詳しく、「マトリックス」についての言及は、映画を見て何もわからなかった私にとって大いに参考になった。
 
 おしまいに「
アメリカで暮らしたあの一年間が、現在の私をつくったのだと思う。私は物語の基礎をドラえもんと「コロコロコミック」から学び、書くことの喜びをシスターから教わったのだ。」と書いている。「コロコロコミック」はもちろん小学校を卒業したころの愛読書だったらしいが、瀬名氏に親しみを感じてしまう。


デカルトの密室

瀬名 秀明


新潮社




2006/2/14



 
 世界的な人工知能コンテストに参加するためメルボルンを訪れていた尾形祐輔は、プログラム開発者の中に、10年前に夭折したはずの天才科学者・フランシーヌ・オハラという名前を発見する。
 本物なのか?同姓同名の別人か?訝る祐輔の前に現れたのは、紛れもなく祐輔の知るフランシーヌその人、そして彼女の姿をそっくり真似てつくられた、窮極のアンドロイド「人形」だった。
 混乱する祐輔に、彼女はとあるゲームを提案する。迷走するゲームの果て、祐輔は密室に幽閉され、フランシーヌは祐輔の作ったロボット・ケンイチに射殺されてしまう。(カバーより)

 未来にはアシモフが考えた人間のようなロボットが出現するのかしら。クラークが考えたような知能を持つロボットかしら。デカルトの「われ思う、故にわれ在り」考えるロボットAIが出てきたら・・・・。

 人間とロボットとの違いは何か?ロボットは人間のパートナーになれるか?ロボットは自分で考えることは出来るか?心を持てるか?人と区別がつかないほど人に似ていたら、気持ち悪くならないか?
 なぜこの宇宙に知的な存在が誕生したのか、なぜその存在はこの世界を、この宇宙を、そして自分自身のことをもっと知りたいと願うのか、「知能」の謎を追いかける。
 
 これは難解な本ではあるが、トールキンの「指輪物語」、クラークの「2001年宇宙の旅」のチェスのシーンなど、わかる場面を使っての説明があったので少しは歩み寄れたかな。
 
 難しい。解説が欲しい。新潮社さんのHPから
  デカルトの密室


瀬名秀明の博物館

書名 出版社 紹介(読後時間が経過して記憶が不確かな為、出版社の紹介から 読了日
ロボット・オペラ

光文社 ビアス『自動チェス人形』、海野十三『人造人間殺害事件』、アシモフ『うそつき』、オールディス『世界も涙』、P・K・ディック『にせもの』、手塚治虫『鉄腕アトム サンゴ礁の冒険』、星新一『ボッコちゃん』、田辺聖子『愛のロボット』、大原まり子『告別のあいさつ』、スターリング『ボヘミアの岸辺』、イーガン『誘拐』、藤崎真悟『コスモノートリス』ほか傑作26編!
さらに瀬名秀明の書き下ろし500枚と、第一線研究者による解説記事、総計784ページの、究極最大のロボット・アンソロジー!(
出版社、著者より
2005/2/2
奇石博物館物語

2003/10/8
小説と科学
ーー文理を超えて創造する
2002/12/20
あしたのロボット


文芸春秋 「鉄腕アトム」に描かれた未来、ではないけれど―。人間とロボット、ともに永久ではない存在の共生の形を模索した5編を収録。「せつない未来」を描いたロボット小説集。
2002/12/2
八月の博物館


角川書店 終業式の帰りにトオルが足を踏み入れたのは古ぼけた洋館。そこで不思議な少女・美宇と黒猫に出逢う。「ミュージアムのミュージアム」というその奇妙な洋館の扉から、トオルは時空を超え、「物語」の謎をひもとく壮大な冒険へと走り出した―。小説の意味を問い続ける作家、小学校最後の夏休みを駆け抜ける少年、エジプトに魅せられた十九世紀の考古学者。三つの物語が出口を求め、かつて誰も経験したことのない感動のエンディングへと至る!エンタテインメントの常識を覆した話題作。
2000/11/27
ブレイン・ヴァレー
上・下


角川書店 山奥の最新脳科学総合研究所「ブレインテック」。脳科学者の孝岡は、同研究所所長の北川の指名を受け、この地に赴任する。到着早々に目撃した若い女性の身体から放たれた白い光。が、不思議な体験はそれだけではなかった。孝岡は、エイリアンらしきものに拉致され、生体実験を施されてしまう。しかし、それらの超常現象も、この地で行われている数々の研究も、すべては人類を更なる進化へと導く壮大な計画の一環でしかなかった。人類の根元を司る「脳」に最先端の科学理論で迫り、オカルト現象をはじめ様々な謎を解き明かす究極のサイエンス・フィクション 1998/7/28
「神」に迫るサイエンス 脳はいかに「わたし」を創り出すのか?チンパンジーは「神」を知っているか?コンピュータは「魂」を宿すことができるか?臨死体験で死後の世界を証明できるか?ベストセラー小説『BRAIN VALLEY』に記された「科学」の各ジャンルを、第一線の研究者たちが最新の知見とともに解説。読者の知的好奇心を刺激しながら、現代の科学を見渡す恰好のガイドブック。 1998/4/20
パラサイト・イヴ


角川書店 永島利明は大学の薬学部に勤務する気鋭の生化学者で、ミトコンドリアの研究で実績をあげていた。ある日、その妻の聖美が、不可解な交通事故をおこし脳死してしまう。聖美は腎バンクに登録していたため、腎不全患者の中から適合者が検索され、安斉麻理子という14歳の少女が選び出される。利明は聖美の突然の死を受け入れることができず、腎の摘出の時に聖美の肝細胞を採取し、培養することを思いつく。しかし、"Eve 1"と名づけられたその細胞は、しだいに特異な性質を露わにしていった…。第2回日本ホラー小説大賞大賞受賞作。
同タイトルの 単行本のレビューから
1996/12/23


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