高田 崇史

昭和33年東京都生まれ。明治薬科大学卒。『QED 百人一首の呪』(講談社ノベルス)で、第9回メフィスト賞を受賞しデビュー。
著作に「カンナ」シリー ズ、「QED」シリーズ、「鬼神伝」シリーズ(2011年アニメ映画化)、「千葉千波の事件日記」シリーズなど。
近作に、『毒草師 パンドラの鳥籠』がある。

読書日誌Top

カンナ(飛鳥の降臨) 2008 QED(百人一首の呪) 1998 毒草師  2007 軍神の血脈
カンナ(天草の神兵) 2009 QED(六歌仙の暗号) 1999 白蛇の洗礼 
カンナ(吉野の暗闘) 2009 QED(ベイカー街の問題) 2000 パンドラの鳥籠 鬼神伝 鬼の巻 2004
カンナ(奥州の覇者) 2009 QED(東照宮の怨) 2001 七夕の雨闇 2015 鬼神伝 神の巻 2004
カンナ(戸隠の殺皆) 2010 QED(式の密室) 2002 鬼門の将軍 2017 鬼神伝 龍の巻 2015
カンナ(鎌倉の血陣) 2010 QED(竹取伝説) 2003 卑弥呼の葬祭 2018 麿の酩酊事件簿(花に舞)2003
カンナ(天満の葬列) 2011 QED(龍馬暗殺) 2004
カンナ(出雲の顕在) 2011 QED(鎌倉の闇) 2004
カンナ(京都の霊前) 2012 QED(鬼の城伝説) 2005 神の時空(鎌倉の地龍) 2014 クリスマス緊急指令  2007
QED(熊野の残照) 2005 神の時空(倭の水霊) 2014 化けて出る(千葉千波の怪奇日記)2011
QED(神器封殺) 2006 神の時空(貴船の沢鬼)2014
QED(御霊将門) 2006 神の時空(三輪の山祇)2015 源平の怨霊 2019 小余綾俊輔の最終講義
QED(河童伝説) 2007 神の時空(厳島の烈風)2015 采女の怨霊 2021 小余綾俊輔の不在講義
QED(九段坂の春) 2007 神の時空(伏見稲荷の轟雷)2016
QED(諏訪の神霊) 2008 神の時空(五色不動の猛火)2016 古事記異聞(鬼棲む国、出雲)2018
QED(出雲神伝説) 2009 神の時空 京の天命 2017 古事記異聞(オロチの郷、奥出雲2018
QED(伊勢の曙光) 2011 神の時空前紀(女神の功罪)2017 古事記異聞(京の怨霊、元出雲) 2020
QED(ホームズの真実) 2013 古事記異聞(鬼の統べる国、大和出雲) 2020
QED(月夜見) 2016 江ノ島奇譚 2023 古事記異聞(陽登る国、伊勢) 2022
QED(白山の頻闇) 2017
   QED(憂曇華の時)2019    
   試験に出ないQED異聞 2019    
   QED(源氏の神霊) 2021    
   QED(神鹿の棺) 2022    




 江ノ島奇譚
高田崇史
講談社



2023/11/26
2023/5/22 発行
 「顔がないんだ、ぬっぺっぽうみたいにさ」藤沢宿で働くお初は、自分の色男である勝道にそう言った。
「目も鼻も口も耳もない、ぺろりとした顔のそいつが、いつも出てくるんだ」怖いものなどない破戒僧の勝道だが、なぜか「ぬっぺっぽう」だけは恐ろしかった。「この悪夢を祓ってくれる、良い神社仏閣はないものかねえ」勝道は、お初を江島明神の弁財天詣でに誘う。その地に伝わる哀しい身投げ話など知りもせずに。


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古事記異聞
(陽登る国、伊勢)




高田崇史

講談社novels




2023/5/25

2022/11/28 発行
 神社の屋根にある千木(ちぎ)、鰹木(かつおぎ)。一般的には、その形や数で祀られているのが女神か男神かわかるとされるが、伊勢ではそれはあてにならない。女神を祀る神社が男神仕様であったり、またその逆も数多く存在する。日枝山王大学民俗学研究室の院生・橘樹雅は、学会出席のため三重へ向かう准教授・御子神伶二に同行。はじめての伊勢で大きな衝撃を受ける。(bookデータベース)

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  アマテル(男神)とアマテラス(女神)の違い?

 猿田彦神と天鈿女命は夫婦?

 夫婦岩の注連縄の向こうに神様はいるの?

 他の神社にあって伊勢神宮にないもの
   狛犬、お御籤、賽銭箱、拝殿前の鈴、注連縄

 伊勢と三輪の神は同体(にぎはやひ)

 いつもの怨霊のオンパレード、まだまだ知らないことばかり。頭に入らないし困ったもんだ。

    なにごとの
    おわしますかは知らねども
    かたじけなさに
    涙こぼるる    西行

    時に天照大神(あまとぇらすおおみかみ)
    倭姫命(やまとひめのみこと)に誨へて(おしへて)曰わく
    「この神風の伊勢国は、
    常世の浪の重浪(しきなみ)帰する国なり。
    傍国(かたくに)の可怜(うま)し国なり。
    子の国に居らむと欲(おも)ふ」
    とのたまう。   「日本書紀「垂仁紀

 もっともっと知りたいと思う。取って付けたような殺人事件はなく、ひたすら伊勢でお参りし伊勢の謎を考える旅だったので良かった。謎の答えについては次回かな。続編がありそうだ。


QED
神鹿の棺
高田崇史
講談社novels



2022/12/27
2022/3/17 発行
茨城県の山中にある寂れた神社の宝物庫にあった陶製の大瓶の一つから、膝を抱える体勢をとった古い白骨死体が発見された。その話を友人のフリージャーナリスト、小松崎から聞いた桑原崇は、大瓶と神社の祭神に興味を抱き、棚橋奈々を含めた三人で茨城へ向かうのだった。警察や郷土史家らが出入りするなか起きる新たな殺人。その死体もまた瓶に入れられていた。QEDシリーズ長編!

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 采女の怨霊
小余綾俊輔の不在講義
高田崇史
新潮社



2022/7/23
2021/11/20 発行
謎めいた社、誰のためとも知れぬ祭から、古代史の新たな真実が浮上する! 奈良・猿沢池の畔に鎮座する春日大社の末社。なぜか池に背を向け、普段はひっそりと門を鎖す。年に一度、連綿と続く祭の二日間以外は……。そこに祀られる入水した采女とは誰なのか。異端の民俗学者・小余綾俊輔が采女神社の謎を解き明かす時、壬申の乱から奈良朝に至る歴史の真実が塗り替えられる。長編歴史ミステリー。

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QED
源氏の神霊
高田崇史
講談社novels



2021/10/27
2021/3/17 発行
宮中を悩ませた妖怪・鵺を退治、獅子王と呼ばれる刀を拝領したほどの武勇を誇り、和歌にも秀でていた源頼政。従三位を賜り、満たされていたはずの晩年、なぜ彼は挙兵したのか。その墓である頼政塚は、どうして祟りをなすと伝承されるのか。京都・亀岡の頼政塚に放置された惨殺死体、壇ノ浦で碇のオブジェに繋がれた遺体の連続殺人を軸に、桑原崇が源平合戦の真実を解き明かす。QEDシリーズ長編!

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 桑原崇と棚旗奈々は奈々の妹の沙織と崇の友人の小松崎良平との結婚式で京都に来ている。
 頼政がなぜ77歳にもかかわらず挙兵したのだろう、というのが気になっているタタルなので平等院鳳凰堂へ行ってみたり、瀬田の唐橋で東京から来た日枝山王大学の学生と一緒に義仲寺へ行くことになったりしながら、頼政についてや木曾義仲についての膨大な蘊蓄が語られ今度は下関へ行く。
 そこでは何年も前に事件で知り合った中新井田という警察官とまた殺人事件に関わる。
 下関では平家物語の蘊蓄が語られる。

 東京から来た学生は、古事記異聞の登場人物だ。


試験に出ないQED異聞
高田崇史短編集
高田崇史
講談社novels



2021/4/10
2019/1/9 発行
デビュー20周年、講談社ノベルス53冊目は、歴史ミステリ「QED」、論理パズル「千葉千波の事件日記」など、人気シリーズの各短編が一冊に詰まった贅沢な短編集。「古事記異聞」の橘樹雅と、
桑原崇・棚旗奈々が旅先で出会い、雅の進路を決定づける出来事を描いた中編「木曾殿最期」を書き下ろし。高田作品の幅広い魅力が楽しめるお得な一冊。(bookデータベース)

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☆ QED〜ortus〜鬼神の社ーーー大学時代の桑原崇や棚旗奈々、
☆ 九段坂の春ーーー中学生の桑原崇と鴨志田、崇の初恋、三島由紀夫の豊饒の海など
☆ 《八月》夏休み、または避暑地の怪
☆ 《九月》山羊・海苔・私
☆ 茜色の風が吹く街で
☆ クリスマスプレゼントを、あなたにーーK’s BAR STORY
☆ 木曾殿最期ーー橘樹雅が、どうして民俗学を志すことになったのかーーー崇と奈々が結婚している。新しいシリーズのヒロイン橘樹雅と崇や奈々が出会った近江路のエピソード

   終わりにはエッセイもあり、なかなか良かった。はじめの二つは再録らしいがあまり記憶になかったので新鮮に読めた。


古事記異聞
鬼統べる国、大和出雲


高田崇史
講談社novels



2021/6/18
2020/11/4 発行
  橘樹雅(たちばなみやび)は研究テーマ「出雲」を調査するうちに、国を追われて京都に連行されていた出雲族の存在を知る。在野の研究者・金澤千鶴子(かなざわちづこ)に、大神(おおみわ)神社の主祭神・大物主(おおものぬし)神が素戔嗚(すさのお)尊同様「出雲」の神だと聞いた雅は、奈良に出雲族の痕跡を探し求める。二人を監視する何者かの不穏な動き。大和に存在した出雲村と野見宿禰(のみのすくね)伝説が、雅を真相へ導く。
 神話に秘匿された出雲王朝の真の姿が蘇る。出雲編完結!

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 島根の出雲大社は、江戸時代の終わり頃まで杵築大社と呼ばれていて、一般的には出雲大社というのは京都の「元出雲」といわれている出雲大神宮のことだという。・・・・えー!!そうなのか、と驚きながら読んだのだが、かつて読んだ、「QED出雲神伝説」や「カンナ出雲の顕在」でも読んでいたのに頭に入っていなかった。
 
 出雲シリーズは完結編ということだが、大和に出雲があるというのも今回初めて知った。
古事記や日本書紀にある神話や伝説は、この大和の出雲だったのではないか・・・・京都から逃げ出した
  


古事記異聞
京の怨霊、元出雲


高田崇史
講談社novels



2021/6/17
2020/7/6 発行
 橘樹雅は民俗学研究のテーマ「出雲」を追い、京都を訪れていた。かつて出雲族の集落があったという下鴨神社の西側には「怨霊の寺」が。遥か出雲国から都へやってきた人々がなぜ怨霊になったのか? 糺(ただす)の森で起きた殺人事件を機に、雅は「言霊(ことだま)」の真の力に気づき、出雲族等、まつろわぬ民にかけられた朝廷の「呪い」の正体を明らかにする。

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古事記異聞
オロチの郷、奥出雲


高田崇史
講談社novels




2021/4/5
2018/10/3 発行
 大学の研究室で民俗学を学ぶ橘樹雅は、出雲での調査を終えようとしていた。ところが「出雲の本質は奥出雲にある」という担当教官のひと言で、日程を延長して奥出雲へ向かうことに。素戔嗚尊とは何者なのか?「櫛御気野命」「櫛名田比売」など神の名前に頻出する「櫛」の意味とは?同日、亀嵩近くで起きていた殺人事件。その本質を雅が見極めるとき、「櫛」の謎も明らかに。敗者の歴史が蘇る!

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古事記異聞
鬼棲む国、出雲


高田崇史
講談社novels





2021/4/4
2018/6/6
 日枝山王大学の民俗学研究室に所属する橘樹雅は、研究テーマ「出雲」についての見識のなさを担当教官・御子神伶二に指摘され、現地に旅立つ。出雲四大神とは何なのか、伊弉冉尊を偲ぶ「神在祭」とは? 雅が向かう黄泉比良坂では、髪を切られ、左眼に簪を突き立てられた巫女の遺体が発見される。知られざる歴史の真実を描く新シリーズ!

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 取って付けたような殺人事件と蘊蓄の凄さはいつもの通り。
 主人公を大学院に入る女子学生に設定することによって、古文書を読みながら疑問に感じたり謎について考えたり、という部分があって読み進みやすい。

 小説の形にしてあるおかげで、古事記や風土記の内容までが少しずつ頭に入ってくる。
ただの解説文ではこうはいかない。橘樹雅と一緒に勉強していける。


QED
憂曇華の時

高田崇史

講談社novels



2021/3/27

2019/11/6 発行
安曇野・穂高で地元神楽衆の舞い手が刺殺される。遺体の耳は削がれ、「S」の血文字が残されていた。数日後、二人目の被害者が。死の間際、彼女は「黒鬼」と言い残した。鵜飼見物に石和を訪れていた桑原崇と棚旗奈々は、フリー・ジャーナリスト、小松崎に呼び出され、事件現場へ向かう。筑前博多近郊の古代海人・安曇族が移り住んだという地で起きた哀しい事件の因果を桑原崇が解き明かす。

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   今回もタタルの蘊蓄が凄い。何が中心なのかがわかりにくかったので、詳しく説明をしていたサイトの助けを借りると次のようになる。

 ・なぜ安曇野を「あずみの」と読むのか? 「あどの」と読むのが普通ではないのか?
 ・鵜飼の鵜はどうして古代から重要な鳥と見られて来たのか?
 ・住吉大社と宇佐神宮の関係
 ・九州にいた隼人は悲劇の民族?
 ・神功皇后と住吉大社について
  ・「◯◯の犬」「犬死に」というような犬が出てくる表現について
・弓削道鏡に皇位が譲られようとしたとき、どうして伊勢神宮ではなく、宇佐神宮へ伺いを立てたのか?

 そして今回も、天皇はとっくに女系になっているじゃないかといっている。
 すべてを頭に入れ、自分で考えたいものだが、悲しいことに手に余る。読むだけでもアップアップだ。


源平の怨霊
小余綾俊輔の最終講義

高田崇史
講談社



2019/9/14
2019/6/25 発行
1160年、平治の乱の後、源頼朝は平清盛によって助命される。後に大納言・時忠が、「此一門にあらざらむ人は、皆人非人なるべし」とまで言い放ち、知行国三十余国、荘園五百ヵ所、田園その数を知らずと言われるまでに栄華を誇った平家一門の命運は、この瞬間に窮まった。
後に平氏を滅ぼすことになる頼朝を清盛はなぜ救ったのか?

平氏を滅亡に追い込んだ天才武将・源義経は数々の戦果を挙げたにもかかわらず、兄の不興を買って非業の死を遂げる。その義経が怨霊として祀られていないのはなぜなのか?

二つの謎が解けるとき、源氏と平氏の真の姿が現れる

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 今回は、とってつけたような殺人事件もなく、純粋に歴史の謎を解いていく旅だった。登場人物は、日枝山王大学助教授の小余綾俊輔、同歴史学研究室助教堀越誠也、OBでフリーの編集者加藤橙子

 よく似た名前が出てきて、誰とどういう関係かを把握しながら読まないと混乱する。


卑弥呼の葬祭
天照暗殺

高田崇史
新潮社



2018/6/3
2018/2/25 発行
 邪馬台国、天岩戸、宇佐神宮――古代史の謎が一つに?がった時、連続殺人の真相が明らかになる。宮崎・高千穂の夜神楽で、男性の首なし死体が発見された。宇佐神宮では、御霊水の三つの井戸に、女性の首と両手が。折も折、萬願寺響子の従弟・漣が「卑弥呼の調査に行く」と言い残して行方不明に。続発する怪事件を解決するには、日本史の根幹を覆す発想と「あの男」が必要だった―。天岩戸神話に隠された逆転。卑弥呼と邪馬台国の真実。(Bookデータベース)

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 萬願寺響子と従弟の漣とのシリーズができたようだ。謎解きは、あの男、桑原崇。
 
 響子が漣を捜していく道筋に沿って、響子の調べ物の内容が提示され、いつもの蘊蓄の語りになっている。
 インタビューによると、著者は普通の薬剤師で、小説家になろうという野心は持っていなかったという。デビュー当時、ネタの蓄積は全然なく、3冊分くらいしかなかった。デビュー作が百人一首で、次のテーマが六歌仙と七福神、3作目がシャーロック・ホームズ。それが今では57冊。神社・地酒・温泉という3条件を達成すると、この「お告げ」が降りて来やすいらしい。

 驚きの仮説が繰り広げられる。現在の皇室は?
 


QED 
白山の頻闇
(しきやみ)
Ortus
高田崇史
講談社NOVELS


2018/5/18
2017/11/7 発行
 棚橋奈々は妹・沙織の新居を訪れるべく、桑原崇と金沢へ向かっていた。白山神社の総本宮白山ひめ神社を参拝した二人は、殺人事件に巻き込まれる。手取川で見つかった首なし死体、上流で昏倒していた男、現場から走り去った女。すべてがひとつに繋がるとき、白山の謎も明らかに!
大学一年生の奈々が吉原を訪れ、崇の博覧強記ぶりを目の当たりにする「江戸の弥生闇」も収録。(Bookデータベース)

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 ortusとは? 「上がり」
 白山神社に絡む菊理媛神の神話の謎解きが表題作のテーマ。作者が神話に関わる自説を披露するために無理やり殺人事件を起こしている感じ。「再生儀礼」のために首を切るって、いくら何でも・・・・・・。

 江戸の弥生闇 は、祟さんと奈々ちゃんがまだ知り合ったばかりのエピソード。


 崇の語る蘊蓄の長さ、凄いけどしんどいな。

 「神谷バー」に行く。有名な場所らしいが、崇がいくとは読者サービスか。


QED
月夜見
(つくよみ)

flumen

高田崇史


講談社NOVELS






2018/6/15


2016/11/8 発行
 京都・月読神社で女性の絞殺死体が発見される。翌朝、近隣の松尾大社では女性の兄の死体が鳥居に吊される。事件を取材する小松崎良平は、桑原崇と棚旗奈々が一泊旅行で京都にいると知り、強引に合流する。記紀最大の謎とされる月読命の真の姿とは?渡来人技術集団・秦氏の悲劇とは?(Bookデータベース))

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 前の作品が最終巻だと思っていたので、続きが出て、楽しみが増えた。崇と奈々は、思わせぶりな終わり方をしたにも関わらず、まだ結婚してなかったなあ。

 「月」に関しての蘊蓄が素晴らしい。ここまで考えたことがなかった。
   〜〜〜夜を司る神。男性神とも、あるいは女性神ともいわれ、性別すら定かではない神。ただ『万葉集』に「天に坐す月読壮士」「み空ゆく月読壮士」「月入壮士」などという文字が見られ、また伊勢神宮の『皇大神宮儀式帳』にも、男性神として書かれているから、今では男神という考えが主流になっているのである。〜〜〜とある。

月読命
 永遠の時間をただ一人、黄泉国で過ごしている神。
 暗い夜だけが、自分を取り巻いている神。
 決して地上へその姿を現すことのない神。
 喜びや笑みなどとは、永久に縁のない神。
 
 天照は男神
 天照大神は女神
 太陽を女神にしたので月が男神になって、日本だけ月が男である。他の国では太陽が男性、月が女性であることが多い。
 
 天照は殺された・・・・・・説は、この作品の後、卑弥呼の葬祭に詳しい。
 前の作品の中でも、この説が述べられていたが、私の頭には入ってなかったので、改めて考えることになった。

 ただ、月への信仰があったにしても人まで殺すかなあ?
 いつも蘊蓄が凄くて、頭を素通りしている。


千葉千波の怪奇日記
化けて出る
高田崇史
講談社NOVELS



2018/1/26
2011/11/7 発行
 国際江戸川大学の1年生、ぴいくんと慎之介は、同期生の古都里ちゃん、海月ちゃんと居酒屋「ちの利」で開く宴が学校帰りの楽しみ。そんなある日、大学に伝わる恐怖の七不思議、通称「江戸七」の一つを目の当りにしてしまう。4人は、ぴいくんの従弟である天才高校生、千葉千波くんに解決を依頼するのだが――!?書き下ろし特別編も収録した、ユーモアとパズル感覚満載の好評シリーズ第5弾! (Bookデータベース)

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神の時空 前紀
女神の功罪


高田崇史
講談社NOVELS



2018/1/11
2017/9/6 発行
 アカデミズムの異端児、潮田誠教授の主宰する天橋立へのバスツアーで起こった全員死亡事故の因縁を解き明かす。事故のおよそ二年前、大学関係者が立て続けに、野犬らしきものに喉元を食い破られて命を落とす。彼らは二人とも同じ研究室に所属していた。助手の永田遼子は教授が密かに研究しているらしい神功皇后について独自に調べるうち、歴史を揺るがしかねない記述をある古典籍にみつける。(Bookデータベース)

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 凄い仮説が展開されている。
 昨今話題の天皇家の女系天皇に絡む万世一系の皇位継承問題。神功皇后の皇子、後の応神天皇の父親が、武内宿禰であり、万世一系の男系の皇位継承は、既に崩壊している(皇統が女系に変わっている)と云う大胆な説で物語は展開。

『住吉大社神代記』に「是に皇后 大神と睦事(むつびごと)あり。」これが何を意味するのか。


神の時空
京の天命

高田崇史
講談社NOVELS

2018/1/16
2017/4/5 発行
 松島、天橋立、宮島。日本三景と呼ばれる名勝が次々と倒壊炎上し、篭神社で神職が惨殺される。高村皇らの最大の仕掛けの始まりだった。神々を鎮めるため、辻曲兄妹と関わりのある女性たちが全国の神社に散る。摩季が亡くなり六日目、「死反術」を執り行う期限も迫る。八年前、天橋立で辻曲夫妻を巻き込んだ大事故の真相とは?これまで日本の怨霊を揺り起こしてきた高村皇の真意が明かされる。(Bookデータベース))

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 歴史薀蓄怨霊ミステリー
 これまで本シリーズでも取り上げられた神社と登場人物オールキャスト
 高村皇の真意ーー神と共に生き築いてきた国であることを忘れ、神を崇める事を忘れた現代人への警鐘

 最終刊の大団円にしては大急ぎでまとめて終った感がぬぐえない。
謎も残っているし・・・・・・。


クリスマス緊急指令
きよしこの夜、事件は起こる!
高田崇史
講談社NOVELS


2018/1/5
2007/11/6 発行
 クリスマスに、不思議な事件が発生! 大伴黒主(おおとものくろぬし)の歌が、ダイイング・メッセージとなった事件を解明する「鏡影」。
 バーでカクテルを傾けながら謎を解き、相談者の心も溶かす「K's BAR STORY」。
 調律を誤ったオルゴールの音色が、琴線に触れ、宿泊客の人生さえ変えてしまう「オルゴールの恋唄」など。(Bookデータベース)

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 「オルゴールの恋唄」は、面白い嗜好で良かった。

 最後の「茜色の風が吹く街で」は青春もの。著者の中学時代かなあ、と想像しながら読んだが、どうだろう。なかなか良かった。このような物語も書くのかと少し驚いた。


神の時空
五色不動の猛火

高田崇史
講談社NOVELS



2017/12/14
2016/7/6 発行
 都内各地で同時多発的に発生した放火殺人。被害者は全員十六歳で、碑文谷女子大付属高校の一年生だった。辻曲彩音は江戸五色不動が狙われていると気づき、現場へと急ぐ。その彩音を警視庁捜査一課の刑事らが密かに追う。妹・摩季を救える期限まであと二日を切った辻曲兄妹は、再び高村皇との対決を覚悟するが!?振袖火事とも呼ばれる明暦の大火を経た復興都市「江戸」の鎮魂の歴史が明かされる。

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 相変わらず蘊蓄がすごい。ミステリーや他の事件は添え物で蘊蓄求めて読むのだからいいのだが。

 聖地だのパワースポットだの、土地の歴史や埋葬者や祀られている者のことなど考えず、知ろうともせず、ただただ利己的に、他力的に、現世利益を求める人々。本来は鎮魂のため、死者と生者双方のために催されるべき花火大会や祭りは、哀しい出来事が起きれば逆に延期か中止してしまう。
 私たちはもっと死者を、そして歴史を身近に感じるべきなのでは、と書かれていた。

 今回は、事件が中途半端だ。何がどうなっていたのかわからなかった。江戸の六地蔵?

 最近、現実の世界で殺人事件が起こった、富岡八幡神社の名前も出てきた。ここはかなり格の高い神社のようだ。
 
  


鬼門の将軍

高田崇史
新潮社


2017/5/15
2017/2/20 発行
 平将門は大怨霊なのか? 将門塚の祟りの真相は? 論理と驚愕の歴史ミステリー! 触れた者に呪いが降りかかるという東京・大手町の将門の首塚。その塚が壊され、男の生首が転がった。京都・宇治川には、胴体だけの首なし死体が。これは将門のさらし首が宙を飛んだという伝説の再来か。
 貴船神社の釘づけ死体を発端に、京都と東京で続発する怪事件。京都府警が捜査を進める一方で、事件に関わりを持った萬願寺響子は、博覧強記の大学生・漣と将門怨霊伝説の真偽を追って、成田山新勝寺、神田明神へ。
 数々の怪異を為し、GHQも恐れたと伝えられる将門怨霊伝説の驚くべき真相は?

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神の時空
伏見稲荷の轟雷

高田崇史
講談社NOVELS


2016/6/24

2016/3/2 発行
 京都・伏見稲荷大社の境内、千本鳥居に吊るされた四体の遺体が発見された。伏見稲荷の氏子で狐憑きの家筋である樒祈美子は稲荷山の気の乱れを感じ山を巡拝 するが、相次ぐ落雷で鳥居が次々と倒れていく。高村皇らの策動を読み取った辻曲彩音たちも稲荷山を目指すが、現れた白狐に行く手を阻まれてしまう―。「お 稲荷さん」と親しまれ、日本中で信仰される稲荷神に秘められた、恐るべき真の姿とは!? (BOOKデータベースより)

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 「貴船」の時の瀬口警部補と裕香巡査が再び登場。狐憑きの家筋の樒祈美子が加わって霊を鎮めることになる。
 千本鳥居がドミノ倒しのように倒れていく。ここも怨霊なのか?

 なぜ「稲荷」をいなりと読むのか?
 「稲荷史六つの謎」
  一  農耕龍雷神   二 穀霊白鳥   三 稲荷神と御霊会
  四 稲と杉       五 男神か女神か  六 キツネ神使      何だこれは?
 「五つの謎」などがある。
  一 何故、穀物神と狐が結びつくのか。  二 何故、二月初午に祀られるのか
  三 何故、朱の鳥居なのか         四 何故、油揚げと小豆飯が供えられるのか。
  五 穀物神が商売・鋳物金属神となるのか。

 本当の稲荷神は・・・・・・鋳成り・・・・蹈鞴だった?・・・・
 稲荷信仰については知らないことばかりだった。蘊蓄がまた凄い。

 

鬼神伝 龍の巻
高田崇史
講談社文庫




2016/4/12
2015/7/15 発行
 高校生になった天童純は、鎌倉・長谷寺で、死んだはずの水葉に似た少女に遭遇。追いかけるも気を失ってしまう。一方、時を遡って鎌倉時代、刀鍛冶を志す十 五歳の王仁丸は、仲間を刑場から救い出しにきた鬼の少女と、その手に携えられた大太刀「鉄丸」を見て、何かとんでもないことが起きる予感に襲われる。 (裏表紙の紹介より)

    ******************

 前回からは300年経っている。
 鬼たちが戦っているのは貴族から武士に変わった。
 純はタイムスリップしただけでなく時間をさかのぼっていたらしく、この世界ですでに数年たっている。
 刀鍛冶のところで拾われ修行している。

 北条氏の武士たちと鬼の戦いは、北条が鉄器を欲しがって、鬼の辰砂や砂鉄を奪い取ったことだろうか。


神の時空 
厳島の烈風

高田 崇史
講談社NOVELS



2016/2/16
2015/11/4 発行
 広島市内の大学に通う観音崎栞は、実家のある宮島に戻っていた。台風のような烈風や地震など自然災害がつづくなか、神社で相次いで栞の知人が殺害される。 「神の島」で起きている異変を知った辻曲彩音らは、怨霊を目覚めさせようと企む者たちの仕業だと感じ、宮島に急行する。突風吹き荒び、大鳥居が揺らぐ嚴島 神社に封印された巨大な怨霊は解き放たれるのか?

   *************************

 厳島神社はそんなに遠くないのに、知らないことばかりだった。祀られているのは、三柱の田心(たごり)姫、湍津(たぎつ)姫、市杵嶋(いちきしま)島の女神(ひめかみ)たち。
 「神の島」といわれ、昔は土足で入ってはいけないところだったらしい。
 清盛や元就すらも恐れたという怨霊・市杵嶋姫命。神社はこんなにも怨霊ばかりなのか・・・・・・・?

 殺人事件は、あってもなくてもいいようなストーリー、それはいつものことだが。
 
 高村皇がしようとしていることは何か?
 太古の倭の国に戻そうとしている?
 幽霊や怨霊の存在を否定したのは明治維新以降、それ以来、神の威信は地に落ちてしまったという。時の政府が明治8年、参拝の方式も統一してしまったという。2礼2拍手1礼に。


鬼神伝 神の巻

高田崇史

講談社 ミステリーランド




2015/12/19

2004/4/27 発行
 現代に戻った天童純が、今まで自分の身に起こったことが全部夢だったのではないかと疑い始めたころ、純は六道珍皇寺に現れた小野篁によって平安時代に呼び 戻され、再び鬼神たちとともに貴族との戦いに加わることになった。一方貴族は、鬼神たちを封じ込めるために三種の神器を揃えようと、最後の一つ、純の持つ 剣を血まなこになって探していた。とてつもない破壊力を持つ「弥勒」を招致しようとする貴族たちとの激しい戦いの中、純は今まで一緒に戦ってきた仲間を失 う。素戔嗚尊の血を引く純が、命よりも大切なものがあると気づいたとき……。(Bookデータベースより)

     ********************

 源頼光に乗り移った帝釈天に続き、天竺から四天王もやって来た。頼光の部下、綱、金太、季武、貞光にそれぞれ乗り移り、鬼たちと闘っている。
 帝釈天を追って阿修羅も参戦。阿修羅王の部下たち、伐折羅(ばさら)、宮毘羅(くびら)、摩虎羅(まこら)は鬼たちを助成する。
 京の町は不思議な闘いが続いている。
 小野篁に仕えている牛頭(ごず)、馬頭(馬頭)は、実は純の両親――――?牛頭天皇は素戔嗚の命ーーー
 
 闘いの中で眠り薬を飲まされたオロチは、しゅるしゅると小さくなり元の石の像になり千年の眠りについてしまった。
 純が剣(草薙の剣)を持つと小さな可愛い雄龍霊(おろち)が巨大で頭の八つある龍になれるが・・・・・・。
 毘沙門天が攻め込んできて、闘いのなか、純は現代に戻った。

 日本の神様と天竺の神様が出てくるファンタジーだが、分かりにくいなあ。


神の時空
三輪の山祇


高田崇史
講談社NOVELS




2015/10/3
2015/7/6 発行
 奈良県の高校生・早見淳一が殺害された。彼が「蛇が…」と言い残して事切れたと聞き、友人の田村暁は戦慄する。数日前、二人は大神神社のご神体とされる三 輪山で、ある禁忌を犯していた。神罰を恐れた暁は神社へ急ぐが、事故があったらしく、登山口は閉鎖されていた。同日、京都にいた辻曲彩音・巳雨姉妹は、大 神神社の怨霊を目覚めさせようとする企みを阻止すべく、急遽、奈良へ向かう―。

   **********************

 
 


七夕の雨闇
〜毒草師〜

高田 崇史
新潮社




2015/9/19
2015/6/20 発行
 織女と牽牛は決して会ってはならぬ……。七夕はおそろしく陰湿な祭だった! 「り……に、毒を」不可解な言葉を残して死んだ能楽師と密室の連続毒殺事件。毒物は特定されず摂取経路も不明。事件に影を落とすのは《七夕伝説》の闇。なぜ七夕は七月七日なの か。「金銀砂子」に隠された秘密、子孫根絶やしの呪いとは。《毒草師》こと名探偵・御名形史紋がすべてを解き明かすとき、古代史のタブーが現れる。

   *********************

 毒草師・御名形史紋と御名形に振り回される西田青年、京都府警の警部。胡散臭い薬剤師が七年前の貴船の事件を解決して云々とぼやいてる村田警部。
 能楽の家と七夕の神を祭る家。両家の確執をめぐる事件から、七夕に秘められた謎を説き明かす。
 織姫と彦星が会うと良くないことが起こるという、それで万葉集では二人が出会えない歌が多いのだそう。言霊が信じられていた時代だから、会えないことを望んでいたらしい。
 七日の夜を意味する「七夕」を何故「たなばた」と読むのか。

 織姫は天照、彦星は素戔嗚ほか、あまりに薀蓄が多かったので、少しも頭に残らなかったなあ。
 他のシリーズでも七夕については読んだはずなのに。


神の時空
貴船の沢鬼


高田崇史
講談社NOVELS




2015/7/25
2014/12/3 発行
 京都で起こる奇怪な連続殺人事件。目撃証言によれば、それぞれの現場から走り去った犯人は般若や鬼だったという。事件の背後に浮かび上がる、帰らぬ夫を待 ち焦がれ川に身を投げた橋姫の伝説―。同じころ、霊力の強い水を手に入れるため、貴船に向かっていた辻曲姉妹たちは新たな殺人事件に行く手を阻まれる。さ らに、清浄なはずの貴船の流れが穢れていることに気づく…。 (「BOOK]データベースより)
 今回の舞台は京都・貴船神社。丑の刻参りで知られるこの神社で、どんな怨霊が解き放たれるのか。暗躍する高村皇に、辻曲兄妹が挑む!

        ********** 

  今回はいつもにも増して薀蓄が多かった。
 鞍馬と貴船、その間に流れる川があり、まるで七夕のように引き裂かれた二人。


麿の酩酊事件簿
花に舞

高田 崇史
講談社NOVELS




2015/7/10
2003/7/5 発行
名門・勧修寺家の十七代目当主にしてベンチャー企業のオーナー、文麿。三十一歳・独身貴族の彼は、理不尽な家訓に適う素敵な花嫁を募集中!しかし彼の前に 現れる美女たちは、なぜかトラブルメーカーばかり。彼女たちが巻き込まれた事件を、酔うほどに冴える酩酊推理で解決する文麿だが、結婚への道は遙か遠く。 (「BOOK]データベースより)

   *********************

 


神の時空
倭の水霊


高田 崇史
講談社NOVELS




2015/5/26
2014/7/2 発行
 OLの涙川紗也は、横浜・レンガ倉庫近くで男の死体を発見。現場を走り去った彼女は、容疑者として、警察から追われる身となってしまう。その頃、東海地方 では、いつ止むとも知れぬ豪雨が降り続いていた―。一見、無関係に思える二つの現象。だが、背後に蠢く闇の存在を感じた辻曲兄妹が探索を開始すると、一人 の古代史上の人物が浮かび上がってきた。その名は、日本武尊…。

   *****************

 ヤマトタケルが大怨霊だったのか、嵐を収めるために船から飛び込んだ弟橘媛は、ヤマトタケルを怨んでいるのか?
 さねさし 相武の小野に 燃ゆる火の
   火中にたちて 問いし君はも
      弟橘媛の辞世のうた
 今までとは異なる解釈で---- 「日本武尊の軍勢が、三浦半島の走水あたりから上総に渡ろうとした時、その地方の豪族――海神―――たちによって大敗北を喫してしまった。この時、日本武尊はできる限りの財宝を差し出して命乞いをした。しかし、海神たちは承知しない。そこで彼は、自分につき従ってきた弟橘媛を差し出した。その結果、海神たちの許しを得て、尊たちは無事に海を渡ることができた。そこで弟橘媛は、日本武尊の情けない行為をなじった。あの歌はどう読んでも性愛の歌であり、かつ日本武尊に対する恨みを述べている歌
 
 涙川紗也が弟橘媛の子孫だから生贄にしようとした何者かがいた。辻曲家の兄妹たちが駆けつけて助けてくれたが・・・・・・次女の摩季が元気で学校に行こうとしている――――前作の方が時系列で後ではないか?
 前作で、成仏していないぬりかべ君がどうして死んだのか、誰とかかわりがあったのかが、今回分かった。時間を逆にしたのは何故?

 


神の時空
鎌倉の地龍


高田 崇史
講談社NOVELS




2015/5/15
2014/3/5 発行
 女子高生・辻曲摩季が、意識不明の状態となり由比ヶ浜で発見された。同じ頃、鎌倉幕府二代将軍・源頼家と源氏一族の遺跡が荒らされ、鶴岡八幡宮の鳥居が倒 壊する!摩季の兄姉と友人の陽一は、二つの事件の背後に潜む怨霊の影を感じ、鎌倉時代について調べ始めた。すると、数多の謀殺と陰謀が渦巻く、闇の鎌倉殺 戮史に気がつく。歴史の闇に隠された、鎌倉将軍暗殺事件の真相とは…!?

    *******************

 鎌倉時代について、認識不足なのはわたしだけじゃないんだなあ。
 源頼朝は、鎌倉時代を造ったが、北条氏の傀儡で、弟の範頼、長男の頼家も殺されているし、人のほとんど訪れないような小さな神社にしか祀られていない。鎌倉はたった三代で滅びたが、それはその後の北条氏が仕向けたことであり、初めから北条氏が頼朝すら操っていたようだ。
 そのあげく、頼朝も殺されたかもしれない。隅っこにあるのが頼朝の墓とも言われている。
 頼朝は、大怨霊ではないか。

 範頼と頼家の怨霊を呼び出し、第一の鳥居を壊し、第二の鳥居も壊し、いよいよ第三の鳥居を崩壊させて頼朝の怨霊を呼び出して鎌倉を崩壊させようとする影の力は何だろう。

 それを阻止しようとした、僕は、成仏していない誰?


QED 
ホームズの真実


高田崇史
講談社NOVELS




2015/3/7
2013/9/4 発行
 大学時代の知人、緑川友紀子に誘われシャーロキアンの展覧会に参加した崇と奈々。その最中、参加者の一人が展覧会場から不可解な墜落をし、意識不明の重体 に。彼女の手に握られていたのはスミレの花だった…!「紫」の意味を巡り、事件は『シャーロック・ホームズ物語』『源氏物語』に隠された秘密へと近づい ていく。
 『QEDパーフェクトガイドブック』同時収録。

   *******************

 「この世に架空でない小説は存在しない。どんな出来事であっても、それが文字になった時点で全てがフィクション。ゆえに、ノンフィクション小説というのは自己矛盾、自家撞着してしまう」緑川由紀子の言葉。ーー文字になって世に現れたものは、フィクションもノンフィクションも精度に大差がない。シーザーや、シェークスピアや、ディケンズの存在していた確立と、シャーロック・ホームズの実在していた確立はヒフティ・ヒフティ、光源氏の実在性もヒフティ・ヒフティーーーだというのだが、よくわからない。

 シャーロキアンたちは、ホームズを実在として語り合っているし、ドイルの書いた文章も細かく頭に入っているようだ、恐るべき記憶力で。

 ホームズがモリアーティと闘った後、3年間どこで何をしていたのかわからないそうだが、日本にいたのではないかとの仮説を立てている。ホームズの父親も日本に来ていたとか、日本の歴史上の出来事と照らし合わせたり・・・・・・凄い。

 昔読んだだけのホームズだが、じっくり読み直してみてもいいかもしれない。


QED
伊勢の曙光


高田崇史
講談社NOVELS



2015/3/3
2011/10/5 発行
 秘宝の鮑真珠『海の雫』を携えて三重県から上京していた神職が、不審な墜落死を遂げた。桑原崇は親友・小松崎良平から事件解決への協力を頼まれ、棚旗奈々 とともに伊勢へと向かう。二人が伊勢神宮の真実に迫る一方で、東京では新たな被害者が。さらには崇と奈々までもが命の危険に晒されてしまう! 事件の背後に拡がる歴史の闇は、日本史上最大の神秘を解き明かす鍵となるのか!?

    ****************************

 メインテーマは、「伊勢神宮の祭神は一体誰なのか?」。ええ、何をいまさら天照大神じゃないの−――から始まって驚きの連続。猿田彦や瓊瓊杵尊の名前が上がってくる。女神ではなく男神だったかもなど、たくさんの説が存在しているらしい。
 「天皇家の始祖天照大神とは?」、「天皇家とは?」、「日本人とは?」
 伊勢神宮は、ホントに不思議 !!謎がたくさんあったが、いつもなら崇が解説をし続けるのだが、崇の初恋の人でもある恩師が登場し、崇を上回る知識を見せる。
 
 伊勢神宮が他と違うところ
 *何故、明治になって突然公式参拝されたのか。
 *何故、鳥居に注連縄がないのか。
 *何故、狛犬がいないのか。
 *何故、賽銭箱がないのか。
 *何故、神殿正面に鈴がないのか。ーーーー不思議だ
   

 いろんな関係者が顔を出してきて、まさに大団円ーーしかも、やっと二人は結ばれる。


QED
出雲神伝説


高田崇史

講談社文庫




2015/3/6
2013/1/16 発行
2009/10/
 講談社NOVELS
  奈良・初瀬(はせ)川沿いのマンションで起こった、密室殺人事件。その一週間前に橿原(かしはら)神宮で起こった、ひき逃げ事件。どちらの現場にも、「出雲神流(いずもしんりゅう)」という古(いにしえ)の忍び集団の紋様が残されていた。
 奈良に「出雲」という地名が数多く残されている理由は? 古代出雲の起源は?

   ********************

 出雲といえば島根県だと思っていたのに、奈良に出雲がある――――?
 奈良にいた出雲臣が追い出されて島根に移っていったーーー国譲りの神話は奈良で起こったのではないかーーーなど驚く様な仮説が出てくる。でも、そのような気もしてきた。

  解説にも書かれていたがQEDシリーズは、まず序盤から中盤にかけては、比較的読者の興味を引きやすい謎を題材にした単発の作品が多い。それらにユニークな解釈を提示することで、歴史や常識には別の見方があることを読者になれさせ、中盤からは鬼や河童、たたら、蜘蛛や熊など「記録されない人々の歴史」にスポットを当てることが増えてくる。その時代の為政者に都合よく書かれた史書の裏側にこそ真実が隠されている。
 そしてここまできて、諏訪大社、出雲大社、伊勢神宮といった「大物」に挑戦してきた。順番が違っていたら、ただのホラ話だとして、読者がついてこなかったかもしれないと解説している。
 なかなか頭には入らないけど、少しずつ表には出てこない歴史の真実を、自分でも推理していけたらいいな。

 巻末にはQED〜flumen〜出雲大遷宮   9年後の世界が描かれている。
 「なぜ出雲大社の拝殿は大国主命の横顔に向いているのか」 「『八雲之図』といいながら、なぜ雲は七つしか描かれていないのか」が物語の「謎」。
 小松崎が子連れ女性と結婚していて、子供の名は「大地」 崇と奈々はどうなったのかは書かれていないが・・・・・。
  


QED
諏訪の神霊


高田崇史
講談社文庫



2015/3/2
2008/1/ ノベルス
2011/8/12 文庫発行
 坂を滑り落ちる巨大な御柱に、男たちが荒々しく群がる「御柱祭」。75頭もの鹿の生首が捧げられた「御頭祭(おんとうさい)」。長野県・諏訪大社に伝わ る、これらの奇祭を調べるため、同地を訪れた桑原崇と棚旗奈々は、不可思議な連続殺人事件に遭遇。御柱―御贄柱―怨念柱。千二百年続く謎が解けたとき、事 件の真相も明らかに!

   ********************

 諏訪の御柱祭。地面を引き摺られ、急坂から落とされ、川を潜らせて禊ぎ。その間中多勢の人が跨って乗っている御柱。尊敬される『神』とは思えない扱いを受ける御柱の正体とはーーー?
 諏訪大社をめぐり、上社、下社の成り立ちの差、向いている方角、出雲を追われた建御名方神の移動で諏訪を追われたミシャグチ神の処遇、四本の柱の表すもの、また御柱に対する乱暴な扱いなどから見ていく。

 


QED
flumen
九段坂の春


高田 崇史

講談社文庫




2015/2/6

2011/4/15 発行
2007/8/ 講談社NOVELS
 桜の木の下で、花びらを握り締めた男の死体が発見された。中学生の桑原崇が想いを寄せる、女教師/五十嵐弥生は事件に関係があるのか?
 崇(タタル)の淡い失恋、棚旗奈々のファーストキスーーー小松崎、御奈形らの学生時代が綴られ、いつしか複雑な糸は、一本の美しい「縁」となる。切なくも眩しい、QED青春編 !

      **********************

 解説によれば、この作品が、作者一番のお気に入りとか。そしてこの作品の中には、いろんなしかけがしてあるという。
 
 九段坂の春ーーー桑原崇の中学生の初恋
 北鎌倉の夏ーーー棚旗奈々の高校生時代
 浅草寺の秋ーーー小松崎の高校空手部時代
 那智瀧の冬ーーー御奈形史紋と殺人事件の真相が――天狗

 登場人物たちが、まだ知らないままでニアミスしている様子が見える。
 九段坂では、崇の眼前で、楽しそうにきゃっきゃ言っている姉妹は棚旗姉妹の子どものころでは?
 夏の鎌倉宮の管理人五十嵐勝は、
 秋の出雲屋拓蔵は、「海妖坊」という骨董屋、―‐‐高校三年の鴨志田翔一は、後でどうつながってくるのか?
 
 flumen は、ラテン語で「流れ」や「川」という意味がある。タタルや奈々の若かったころを書いているから時の流れを表したくてつけたという。
 三島由紀夫の「豊饒の海」の構成を下敷きにした、オマージュ?
 ーーー恋と読書ーーー武道ーーー寺社ーーーー海と終末
 奥が深い。


QED
河童伝説


高田崇史
講談社NOVELS




2015/1/30
2007/2/6 発行
 今なお、河童伝説が残る川で、左手首が切断された死体が、続いて、左腕が切り落とされた死体が浮かぶ。一方、相馬野馬追祭(そうまのまおいまつり)を見物 に出かけていた棚旗奈々たち一行は、岩手県遠野まで足を伸ばしていた桑原崇と合流。そこでまた、血なまぐさい事件が……。

    *********************
 
 すぐに鋳鉄に話がいってしまうとか、たたらの話だらけじゃないかという印象を受けた。
 河童についての薀蓄は面白いけれど。

 取ってつけたような殺人事件だから、結局は河童伝説を語るために河童伝説の残る場所で殺人事件を起こしたという作者の都合か。
 
 河童とは・・・・・・タタルが会いに行った東北の河童とは、骨董屋の「海妖坊」そこで河童についての薀蓄がたっぷり。タタルが大学3年の時に東北で出会って以来の知人。
 河童と馬と稲荷は縁が深い。?
 
 これを読んだ後、「遠野物語」を読んでみようと思った。


QED
東照宮の怨


高田 崇史
講談社


2014/12/31
2004/3/16 発行
「三十六歌仙絵」を狙った連続強盗殺人事件が発生。不可解な事件の手がかりは意外にも日光東照宮にあった。「陽明門」「山王権現」「三猿」「北極星」「薬 師如来」「摩多羅神」「北斗七星」。桑原崇が東照宮に鏤められた謎を解き明かした時、天海僧正が仕掛けた巨大な「深秘」が時空を超えて浮かび上がる。第4弾。

   *****************

 日光東照宮は実は、薬師如来ではなく日光菩薩、出羽の月山を月光菩薩そして、会津を薬師如来に見立てたというのが、天海の本当の呪だったのだ。そのラインを切るように八重垣がホテルを建てようとしていたので、それを阻止するために、歌仙絵盗難をカモフラージュにして殺人を犯し、ホテル建設を阻止しようとしたのだった。出身地の会津の 霊的守護が解かれるのが嫌だったのだ。八重垣と言う名前も何重もの囲いの意味だし、バックの花坊才蔵は歳翁ということでさらに道をふさいでしまう名前だっ たのだ。かごめというダイイングメッセージは、「華甲め」で華甲とは61歳のことで花坊才蔵を表している。歌仙絵が偽物と知らされたことに対する花坊才蔵 を恨む言葉だった。

  かごめの歌の謎解きーーー後ろの正面だあれの答えは、江戸町の後ろの正面で日光東照宮

    ***************

 殺人事件のほうはどうでもいい。東照宮にこんなにも秘められた事柄があったとは!
 カゴメの歌の深い意味もーーーーはじめて知る驚きの?−−−仮説だ。こういうところがこの作者の魅力である。


QED
御霊将門


高田崇史
講談社NOVELS




2014/11/22
2006/10/5 発行
 暖かい春の日差しのなか出掛けた桑原崇と奈々、沙織の棚旗姉妹のお花見は、いつしか日本三大怨霊として畏怖され続ける平将門の名所行脚へと一転。『神田明 神』『将門首塚』からはじまり、茨城県そして成田山までを巡りながら、崇によって少しずつ解き明かされていく歴史の謎。『繋馬』の家紋が示唆する驚愕の真 実とは。

    ******************

 いつもの3人連れは、将門めぐりで、靖國神社を皮切りに、築土神社、神田明神、首塚、兜(かぶと)神社、烏森神社、稲荷鬼王神社、鎧神社、さらには成田山新勝寺へ
。お花見に出かけたはずの棚旗姉妹と桑原崇だったが、いつしか将門ゆかりの地を巡る小旅行に。日本を代表する大怨霊、将門の真の姿とは、朝廷からの理不尽な要求をはね除けた救世主だった!?

 そして成田山の近くの病院に勤めるようになった神山禮子の動静がどうかかわってくるのか、と思っていたら、意外な展開で遭遇。
 
 いつも通り、崇の解説は膨大なデータなので、頭には入ってこないが、この1冊を手にして現場の神社や史跡を巡ってみたいなとも思った。
 
 将門は怨霊じゃない・・・・・・・と崇が言う。成田山は将門調伏の大元ではなかったのか‥‥。
タタラとかんだ(片目)、製鉄、稲荷などがつながっていく理論は、かなり偏った気もするが、神様の世界はこんなにも複雑で面白いと思わせてくれる。
 将門は、いい人で、懐の大きな大親分だったのではないかとの沙織の感想はわかり易い。
 
 神山禮子の勤める病院の事件に巻き込まれるそうな。今後はどうなるのかな?
 


QED
神器封殺


高田崇史
講談社NOVELS




2014/10/4
2006/1/11 発行
 毒草師を名乗る男・御名形史紋と熊野で出会った薬剤師・桑原崇。病院のオーナーが何者かに日本刀で斬殺されるという事件に端を発し、謎は古代日本へと広が る。崇と史紋が突き当たった重大な謎を解く鍵は、三種の神器と、古(いにしえ)の神々を祀るべく日本全国に散らばる神社にあった。美しき解。これぞQED の真骨頂。

    ****************

 変人同士の御名形史紋と桑原崇が出会って会話をしたら、こんなになるのかとおかしく読んだ。他の人にはついていけない二人だけで通じる簡潔な会話だった。

 殺人事件の犯人はあっけなくわかってしまうが、熊野についてはいつもに増して解説が多く、また新説の披露でもあった。三種の神器は、蛇だ・・・・・少しばかり強引な説ではあるが、面白かった。剣を祀る神社にはあるラインがあり、鏡を祀る神社にもラインがあり、勾玉にも。
 たくさんの神様の名と神社の数と立地場所、それらは見事な意味があった。地図で見ると驚きの事実が示されていたのだ。

  かつて「ムー」という雑誌を読んでいた時に、見かけたことがあった「レイライン」
日本の神社は、奥深い。
 

 


QED
熊野の残照


高田崇史
講談社NOVELS




2014/9/26
2005/8/4 発行
 紀伊・熊野に位置する、古来からの信仰深い土地”熊野”。浄不浄を嫌わず、黄泉の国との謂れもある熊野三山(熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社)ーーーの神々には意外な逸話が隠されていた・・・・・・・・。
 伝承にまつわる一寸の{?」から歴史を辿る桑原崇と棚旗奈々の旅路は・・・・?
人には言えないある理由から、故郷・熊野を捨てた26歳の薬剤師・神山禮子。何かに衝き動かされるように参加した熊野旅行で、彼女は…。
 後鳥羽上皇たち は、なぜ苦行の熊野詣でを繰り返したのか?牛王宝印にかけられた呪と、八咫烏の正体とは?崇が神話の本質を暴くとき、禮子の真実が溶け出していく。

    ********************

 熊野古道が世界遺産に認定される前に描かれた作品。
 本筋から外れるが、「食いしん坊」というのは「鬼神坊」からきている言葉だとか…へえ!
 
 今回は目の前で殺人事件を解決するというのは無かった。旅の連れの謎が、少しずつ分かっていくのがそれにあたるのか?――次回に繋がるらしい。
 いつにもまして、たくさんの神様の名と、出来事が多く、覚えられないが・・・・・・・。
 「初夜権」などというおぞましいものがあるとは!


鬼神伝 鬼の巻

高田 崇史

講談社 ミステリーランド




2014/9/21

2004/1/30 発行
 京都の中学に転校してきて三ヵ月、天童純に友だちはいない。純の胸には生まれた時から赤紫色のふしぎな形をしたあざがあった。ある日、いじめっ子に追いか けられるうち、純は東山の麓ふかくに建つ古びた寺に迷い込み、密教僧・源雲によって時空を超え平安の都に飛ばされてしまう。胸に勾玉の形をしたあざがある 純こそ封印された龍・オロチを解きはなち、鬼を退治するべく選ばれた者だという。桃太郎、一寸法師…。彼らはなぜ鬼を退治するのか。鬼とはいったい何者な のか。

     ******************

 少年少女のために書かれたもので、活字が大きく漢字にはルビがふってある。
 鬼の話を通して今まで聞いてきたのとは違う角度から歴史を考えるきっかけになる。

P262−−どうして節分には鬼に豆をぶつけるのか? どうして河童はキュウリばかりを食べるのか? どうしててるてる坊主は軒下に吊るされるのか? どうして雛祭りで人形を飾るのか? どうして天邪鬼やおとろしの指は三本しかないのか?

 もともとこの国に住んでいた神とそれをうやまっていた民人を皆殺しにしようとしているのが、大仏信仰を利用して国を支配しようとしている貴族たちだ、貴族に挑んでくる神が邪魔なのだ、それらを鬼として鬼封じをしようとしているーーーーということを物語で示そうとしている。これは被征服者たちからみた歴史である。面白いし、目からうろこが取れたように感じるが、子供がこれを歴史だと思い込んでしまうのは、どうなんだろう?

 貴族たちが仕掛けていた大きな陰謀。
 源頼光に乗り移った帝釈天。
 


QED
鬼の城伝説


高田崇史
講談社NOVELS



2014/9/12
2005/1/10 発行
 岡山・吉備津神社に今も伝わる、占卜(せんぼく)「鳴釜神事(なるかましんじ)」。大和朝廷によって退治され、土中深く埋められた鬼神ーーー温羅(うら)の首が、釜を唸らせて人の吉凶を告げるという。
 一方、これとは逆に、総社市の外れ、鬼野辺(きのべ)家に先祖代々伝わる大きな釜には、鳴ると凶ーーー主が死ぬという言い伝えがあった。そして・・・・・・・。
 不吉の釜が鳴り、土蔵に長男・健璽の生首が!?
 旅の途中、事件に遭遇した崇は、事件の核心”桃太郎伝説”の騙りを衝く!

   *********************

 桃太郎のお話は、こんなに奥深く意味があったとは。



QED
鎌倉の闇


高田崇史

講談社NOVELS



2014/8/30
2004/8/5 発行
「”神”は三種類に分類される・・・・・・・まず第一が、大自然。次は祖霊。最後は、時の朝廷に対して闘い、恨みを呑んで亡くなっていった人々」。
 銭洗弁天、鶴岡八幡宮、御霊神社・・・・・・・・鎌倉をそぞろ歩く奈々、沙織の棚旗姉妹に桑原崇が説く「鎌倉=屍倉(かばねくら)」の真実!
 源三代にまつわる謎の答えが、闇の中に白く浮かび立つ!!(裏表紙より)

    ******************

 今まで描いていた鎌倉時代という歴史のイメージが覆されたけど、妙に納得してしまう。
P176−−頼朝は、義経たちを次々に惨殺していった冷酷無比な男だと思っていた。
 でも次に、時政たち北条氏にいいように操られていた軽薄な男だと思った。
 しかし実際は・・・・源氏の頭領という血を引いていただけのために、利用されるだけ利用されて、最後は殺害された。しかも、子供たちまで。
 北条氏は初めから奥州藤原氏を狙っていた。金が目当てで。

 今まで思い込んでいた歴史も、少し角度を変えて眺めてみたら面白い。


QED
龍馬暗殺


高田崇史
講談社NOVELS



2014/7/21
2004/1/10 発行
 人の住んでいる家は、四軒しかない、高知の山奥にある蝶ヶ谷(ちょうがやつ)村。嵐による土砂崩れで、麓への一本道が塞がれる中、殺人と自殺の連鎖が十人の村人たちを襲う。
 村を訪れていた崇(タタル)、奈々たちは否応なく事件に巻き込まれるが、その最中、龍馬暗殺の黒幕を決定づける手紙の存在を知り・・・・・・・。
 博覧強記・崇の推理は、悲劇の輪廻と、龍馬殺害に纏(まつ)わる最大の謎を時空へ解き放つ!

     *********************

 龍馬暗殺の真相に迫るだけで十分読みごたえもあり、楽しめるので、いつものように殺人事件やもろもろの出来事は、あってもなくてもいいような‥‥‥‥。

 幕末から明治にかけての出来事の数々が、よく整理されているのでよく頭に入ってくる。もっと若い時にこれを読んでいたら、崇ほどではなくとも歴史を覚えることができたのになあ。
 幕末は好きだからこれまでも本を読んできたのだけれど、まだまだ知らなかったエピソードもあったし、西郷隆盛に対して、ちがった印象を感じた。隆盛についての本を読みなおしてみたくなった。
 


カンナ
 京都の霊前

高田 崇史
講談社NOVELS



2014/6/13
2012/7/4 発行
盗まれた社伝を求めて、京都へ向かった甲斐と貴湖。そこで待っていたのは、日本の歴史を修正しようとする組織と、忍者一族の暗闘だった。相克する二者に追 い詰められ、ついに甲斐の秘められた能力が覚醒する…。歴史の真実を求める旅の果てに辿り着いた、聖徳太子と存在を消された天皇の正体は!?カンナシリー ズ最終巻。

    *******************

 


QED
式の密室


高田 崇史
講談社NOVELS




2014/6/7
2002/1/10 発行
密室で、遺体となって見つかった「陰陽師の末裔」。”式神”を信じる孫の弓削和哉は他殺説を唱えるが‥‥‥‥。
 果たして、崇の推理は事件を謎解くばかりか、時空を超えて”安倍清明伝説”の闇(くらやみ)を照らし、”式神”の真を射貫き、さらには”鬼の起源”までをも炙り出す。(20周年特別書下ろし)

    **********************

 「通りゃんせ」の唄の謎……そういえば不思議だなあ。天神様の細道、行きはよいよい帰りはこわい・・・・・どういうことだ?「かごめ歌」も不思議だったが。
 相変わらず、歴史的知識の洪水に圧倒される。

 当時の貴族においては、五位以上の人だけが「人」であって、それ以下は百姓雑色人、その下の賤民に至っては藤原氏から鬼、蜘蛛、天狗、河童と呼ばれていた。人であって人でないモノ。
 清明の館では目に見えない力(式神)が戸を動かしたりしていたと言うが、見えないことになっている身分の低いヒトが立ち働いていたのだと言う。なるほどね、見えないはずのモノだったのか。
 
 ミステリの部分はどうでも良くて、安倍清明に関する薀蓄が楽しみな作品だった。


QED
ベイカー街の問題


高田崇史
講談社NOVELS




2014/5/6
2000/1/5 発行
次々と惨殺されるシャーロキアン。「ホームズ譚」の解釈を巡る諍いが動機なのか?
ダイイング・メッセージを読み解き犯人像に迫る、桑原崇の推理は?
 ホームズに隠された驚くべき秘密を発見した時、連続殺人犯が浮かび上がった!
 文献を駆使し、大胆な発想でミステリの新たな地平を開く。

    *******************

 古文書だけでなく、ホームズにもこんなに詳しいのかと驚く。すみずみまで文章を把握しているのかと。
 ホームズは二人いた!初めのホームズはコカインの副作用で人格が分裂し・・・・敵のはずのモリアーティーが実はシャーロックだった、そして彼を抹殺するために自殺した・・・・・という仮説を崇が述べる。

 殺人者もドラッグで人格が破綻して、死んだはずの妹が脳の中に甦ると・・・・・だが、それは失神していただけかも・・・・・・後始末をしていた人物・・・・・ペンネームを持つ人物は・・・・・
 
 シャーロキアンとは驚く人たちだ。ホームズを書いたのがコナン・ドイルのはずだが、ホームズを書いたのはワトスン博士で、ドイルという人物は、医療の傍ら「ロスト・ワールド」や「毒ガス帯」やら「マラコット海淵」やらの、到底現実にありもしないような話を書き綴った心霊学者だとのたまう。

 現実にいた人のように語り合うので、あれ、そうだったかしらと思いそうになる。
 不思議なホームズ譚のあれこれだった。
 


カンナ
出雲の顕在


高田 崇史

講談社NOVELS




2014/5/3

2011/7/6 発行
 理由も告げぬまま逃亡を続ける諒司は、竜之介を密かに出雲へ呼び出す。日本史を揺るがすような社伝を巡る事件の全貌を明かすというが、その真意は・・・・・・・・・?
 一方、甲斐は竜之介を捜すため、聡美と島根へ向かう。さらに出雲大社と素戔嗚尊の関係を調べる甲斐たちを残酷な運命が待ち受ける ! 裏切り者は誰なのか!?

     ********************

 初めて名前が出てきた敵の名は「玉兎(ぎょくと)」竜太郎の祖母の三好が関係者だと知らされる。
諒司の妻・志乃芙の父の波多野村雲流と社伝を奪おうと争っている。
表の天皇家に対し、裏の存在。

 甲斐が聡美に話すという形で、出雲についての薀蓄が語られるのだが、そこで感じるのは、次の様な甲斐の言葉
 「伝説上の多くの人々や神々に関してきちんと調べれば調べるほど、分からなくなる。与えられた話だけを鵜呑みにしていたおかげで、誤った印象を持つてしまっていた人々や神々の何と多いことか。 一体いつから、これほどまでに真実が隠蔽され、歪んで伝えられるようになったのか。事実や事件の真相が、どんどん彼方に追いやられ、捏造された物語が表を覆い尽くす歴史。まるで、誰かが意図的に隠し、あるいはねじ曲げて伝えようとしているようではないか。」そう思える。

 出雲の帰り、玉兎の仲間に襲われるが、狙われた甲斐ではなく聡美が毒矢で死んでしまう。そして竜太郎が玉兎に加わったと知らされるが、本当に裏切ったのかどうか〜〜〜次回作が読みたい。

 出雲といえば誰しもが出雲大社を思い浮かべるが、数百年前までは名前も存在していなかった。ただの「杵築の大社」だ.そのために出雲の国は多くの学者たちから「神話の中の国」や「単なる夢物語」と言われ続けてきた。銅剣や銅矛や銅鐸が出土するまでは。
 知らないことが多すぎる.。
 素戔嗚尊ー――蘇我氏 なのか?


 QED  
竹取伝説





高田 崇史



講談社NOVELS







2014/4/29

2003/1/10 発行
 『鷹群山の笹姫様は・・・・・・・・滑って転んで裏庭の、竹の林で右目を突いて、橋のたもとに捨てられた』。不吉な『手鞠唄』が残る、奥多摩は織部村。この村で、まるで唄をなぞったような殺人事件が発生。
 崇は、事件の本質を解き明かすべく、「竹取物語」の真実から「かぐや姫」の正体にまで迫る。

     *******************

 前作の式の密室から話は微妙に続いているので式の密室を読んでから本書を読むほうがより楽しめるかもしれない。ーーーということを読後に知ったが後の祭りだった。

 今回は有名な竹取物語を取り上げ、定番の鬼やら出雲を絡めた裏解釈が繰り広げられる。知識の披瀝が凄くて、竹取物語とどうつながるのか疑問を感じるほど、遠かった。

 村どうしの背負ってきたある歴史的文脈・そして「竹」の文化史的意味、「たたら」の民と蜘蛛、小野小町、出雲王朝・・・・何が何やら
 
 竹がかつては忌まわしい植物だったこと、松竹梅は、決しておめでたいことではない・・・・む?
かぐや姫は衣通姫で、それは小野小町、棚機津姫(織姫星)、これは帝の一夜妻、・・・・ますます不可思議。伝言ゲームのように言葉が繋がって説明が続くことと、ダジャレのように説明されても、論旨が飛躍するのでついていけない。


「鬼」=「まつろわぬものたち」=「被差別民」。
かぐや姫だけが鬼を退治しない。他の桃太郎、一寸法師、瓜子姫,力太郎などは鬼を退治する。桃太郎も鬼だった、犬、猿、雉らは、貴族に仕えていた者たちの蔑称だった。

 膨大な史料と独自の視点を駆使した理論に圧倒されてしまう。
まさしく「隠されてきた日本史の真実」かもしれないなあ。
 
 そして竹取物語は何を描いているのか。
 竹野神社がかぐや姫の故郷、この神社に代々仕えていた姫君たちがかぐや姫のモデルだったという話がある。作者は、紀貫之だったのではないか……とか?。
 竹取物語は笹取物語であり、砂砂取り物語だから出雲の国を中心とした大タタラ場の話。

すさのおう―― 「朱砂の王」を祭神とした、「八重垣神社」には素戔嗚尊と結婚した奇稲田姫も祀られている。その出雲の国の一大産業が、かぐや姫だったというわけだ。
 つまり、光り輝く、砂鉄だ。
「光り……輝く…… 」・・・かぐや・・・  ちょっとこじつけがしんどかったかな。


カンナ
天満の葬列



高田崇史


講談社NOVELS







2014/4/29


2011/3/7 発行
 取材のため太宰府を訪れた竜之介と時を同じくして湯島天神を参拝した貴湖。二人は、菅原道真公がなぜ大怨霊と恐れられるようになったか疑問に思う。そんな 折、出賀茂神社社伝を盗もうとした賊に丹波が襲われ、甲斐もまた何者かにつけ狙われる。黒幕を調べるうちに社伝と道真に深い繋がりがあると分かり…。

    ****************

 若いころ、加藤丹波は波多野村雲流の忍びと闘い、左目を失った。その時相手は右足の自由を失ったという。丹波は、伊勢服部流の忍び。出賀茂神社の職員。

 敵が宝物殿を襲った時、闘った丹波が誘拐され海に投げ込まれたが、かろうじて生き延びた。 
敵は三本の棒、三雲流かーーー昔は山内氏に仕えていた。

 菅原道真について、竜之介も貴湖も、調べ始める。
 道真は配流であるし、怨念の籠った歌は詠んでいないし、大怨霊とは理屈に合わないのではないか――――。だが、道真公の怨霊は、社伝が原因だというーーー
 
 道真が主宰した学問所『菅家廊下』があり、多くの文人を輩出した、だから学問の神様としてあがめられているのか。
 道真の後ろには、大勢の優秀な門下生がいた。後世の歴史に道真の名前を残したかった人々が大勢いた。大怨霊として語り継がれるのは、道真の功績が、乙巳の変の蘇我氏のように、すべて藤原氏に持って行かれることを危惧したからだ。道真を大怨霊とすれば聖人君子より民衆の記憶に残りやすいーーーー怨霊と位置づければ、左遷は冤罪だったと主張することができる。ーーー面白い理論だ。つじつまが合う気がする。

 忍びのルーツは、飛鳥時代,役小角までさかのぼる。具体的活動は、大伴細人(さびと)が嚆矢だという。「志能便(しのび)と名付けられた。そのほか、各流派やら忍びの歴史の説明があって興味深い。朝廷側の忍びや幕府側の忍びがあった。

 志乃芙の妹の冴子が生きている?−−澪の身体の中に――――?

 大きく展開し始めた。今までは各巻がどのようにつながっているのかがわからなかったが。
 


QED
六歌仙の暗号


高田 崇史

講談社NOVELS




2014/3/23
1999/5/5 発行
「明邦大学・七福神の呪い」−−−大学関係者を怯えさせる連続怪死事件は、歴史の闇に隠されていた「呪い」を暴こうとする報いか!?
桑原崇が膨大な知識を駆使し、誰も辿り着けなかった「七福神」と「六歌仙」の謎を解き明かす。そして浮かび上がった事件の真相・・・・・・・・・・・。(裏表紙より)

      **********************
 ほんとにそうなの?
 ちょっとこじつけすぎじゃない? とは思ったけど、やはり面白い。

 タイトルは六歌仙なのに、七福神の話ばかりだ。さんざんその薀蓄を披露されてから、
「七福神」は「六歌仙」だったのだ、という桑原崇(タタル)の言葉に、そうなのか、と思ったが、そこからの説明も長かったので、頭に入りきらなかった。
 
 七福神のこともよく知らないので、この機会に少し知っておいてもいいかなと思う。


カンナ
戸隠の殺皆


高田崇史
講談社NOVELS




2014/3/21
2010/2/4 発行
 諒司が残した言葉をたよりに甲斐は貴湖らと長野・戸隠(とがくし)にある隠岩戸宮(かくれいわとみや)を訪れ、宮司たちの世話になる。
 片や甲斐の婚約者・聡美の祖父である鍬次郎(くわじろう)も密かに社伝の行方を追わせていた。
 甲斐は何者かに襲われて突然姿を消した宮司らを捜すうち、天照大神の天岩戸伝説にかかわる重大な瑕疵に思い至り、虚実を暴く !

     *********************


カンナ
奥州の覇者



高田 崇史


講談社NOVELS






2014/2/18

2009/7/6 発行
失踪していた諒司に助けを請われ、甲斐は岩手・水沢へ向かった。無事の再開を喜ぶ間もなく、甲斐たちは敵の手に落ちた「出賀茂神社社伝」奪還計画を練る。
 一方、蝦夷の指導者・アテルイの降伏に疑念を抱いた甲斐は、信じがたい歴史的捏造と自らに関わる衝撃的な共通点に気づいた。傷ついた甲斐を救うのは‥‥。

    *******************

 常陸の国一の宮、鹿島神宮ーーー「悪路王の首」―‐表紙ーーアテルイの顔ともいわれる

 天皇の御代栄えむと(すめらみことの みよ)
 東なる(あずま)
 陸奥山に(みちのく)
 金花咲く(くがね)−−−−大伴家持「萬葉集 巻大十八」

 東の夷のなかに(あずま ひな)
 日高見国有り(ひたかみのくに)
 ・・・・・・・
 亦土地沃壌えて曠し(また くに こえて ひろし)
 撃ちて取りつべしーーーーーー「日本書紀」景行天皇二十七年――――残酷だ

 大和朝廷に侵略され、資源を取られ奴隷とされていった様がわかる。

 ここでも、征服した側の都合のいい歴史が残っている。
 坂上田村麻呂は英雄とされているが、征服された側からすれば、残虐な将軍だったということ。
 田村麻呂とヤマトタケルの英雄伝説は似ているという説がある。

 今回は、諒司の妻が、あちら側の人、志乃芙の父親が雲井良源、波多野村雲流と分かる。
 修験でも村雲でも黒脛木(くろはばき)でも風魔でも出雲神流でも何でもかかってこいって、甲斐が思うところがある。いろいろあって面白い。


カンナ
天草の神兵


高田崇史

講談社NOVELS





2014/2/8

2009/1/8 発行
 伊賀忍者の末裔で出賀茂神社の跡取りである甲斐は、日本史の常識を覆す重要な社伝を持ち去った諒司を捜して、東大生巫女の貴湖たちと九州・天草へ向かう。
 だが鍵を握るシスターは、何者かに殺されてしまった。事件の真相を追うなか、命の危機に直面した甲斐は、一揆軍を率いた”神の子”天草四郎の謎解きに挑む  !!

   ********************
島原の乱ーーーよく考えたことのなかったこの出来事を、貴湖、甲斐、竜之介たちが、資料を読み合って勉強するという形で、読者も勉強させてもらえる。
 事件は、付け足しみたいなもの。
 天草四郎はなぜ、四郎なのか?
 原城殲滅―――内通者一人を残し、全員殺戮し、完全に破壊して埋め尽くしたのは何故か?
 
 歴史は覚えるものではなく、考えるものーーー貴湖の言葉―――そうだなあと納得した。
 天草本ローマ字というのも、あったらしく、ローマ字は一通りではなかった。ポルトガル人たちが使っていた文字もあったのだということ、なるほどと思った。


QED
百人一首の呪


高田 崇史QED

講談社NOVELS




2014/2/6
1998/12/5 発行
QEDとはーーqued erat demonstrandum---証明終わり のこと

希代の天才・藤原定家が残した百人一首。その一枚を握りしめて、会社社長は惨殺された。残された札はダイイング・メッセージなのか ?
関係者のアリバイは証明され、事件は不可能犯罪の様相を呈す。だが、百人一首に封印された華麗なる謎が解けた時、事件は、戦慄の真相を地上に現す !メフィスト賞受賞作。

   ******************

 百人一首には、謎があるらしい、しかもかなり有名な。
 何らかの形に配列し得るというもので、有名なのは10×10 列に。
 この作品では、仏教の曼荼羅のように配列できるというのだ。
胎蔵界曼荼羅と金剛界曼荼羅で、鎮魂?怨霊の封じ込めなどと、百人一首が関わっているという。
凄いとしか言いようがない。
百人一首を知らなければ、チンプンカンプンなんだけど、面白い !!


カンナ
鎌倉の血陣



高田崇史

講談社NOVELS




2013/12/28

2010/6/7 発行
 甲斐は婚約者の聡美とお茶会に出席するため、鎌倉へ。貴湖と竜之介も現れて、聡美の胸中は複雑。そんな折、甲斐を挑発していた主催者の加賀美宗朝が殺害された ! 
 さらに甲斐たちも襲撃を受け、忍びの影がちらつく。
 宗朝が調べていた鎌倉幕府の源氏三代と関連が・・・・・・・・?
 天下の将軍を操り、死へと追い詰めた人物は誰なのか。

    *********************

 鎌倉時代って、今までほとんどなじみがなくて、よく考えもしなかったけれど、源氏はたった三代で終わったのだ。あとは北条氏が実権を握った。それがどういうことだったのかをすこしばかり考えることになった。
 頼朝の息子、頼家、その弟の実朝、ふたりとも若くして殺されているし、頼朝も殺されたとみるのが自然のようだ。政子の子どもであるはずなのに冷たくされ、死んでしまう息子たちは、政子の子どもではなかったのか・・・・・・・という可能性と、現代の殺人事件が繋がっていく。
 現代のミステリーよりも、裏の歴史の謎解きの方が魅力の本である。

 甲斐は伊賀・服部流
 貴湖は伊勢・服部流。
 竜之介は甲賀。油日神社の氏子。

 舞台は鎌倉だから、風魔か?それとも波多野村雲流、鎌倉党 か?
 そして聡美も海棠家、ただの家ではないので、ふつうでないことが起こる。

 大海の磯もとどろに  寄する波
 破れて(われて)砕けて  裂けて散るかもー――源実朝

 此の里に 悲しきものの二つあり
 範頼の墓と 頼家の墓と  ―‐―正岡子規

http://bookclub.kodansha.co.jp/kodansha-novels/1006/special/


パンドラの鳥籠
毒草師

高田 崇史
朝日新聞出版




2013/12/23
2012/12/30 発行
 「魔女の鳥籠」と呼ばれ、鬱蒼とした森の中に佇む洋館。
 その周辺では、過去に3体の首なし死体が発見され、現地では、館に住む齢300歳の魔女の仕業だと噂されていた。
 雑誌編集者の西田は、事件関係者の依頼により、隣室に住む自称〈毒草師〉の御名形と事件を調べることになる。御名形は、現地に伝わる「浦島太郎」伝説が関係していると見て、「浦島太郎」の物語を調べ始めるが、それは、「記紀」にも記されている、日本で最も古い物語だった。
 しかも、そこには、天皇家にまつわる、禁断の事実が隠されており……。
 猟奇殺人の真相を「浦島伝説」を紐解きながら解明する、シリーズ第3弾!

    ************************

 今回は一段とすごい.
 古事記、日本書紀、御伽草子、土佐日記〜更級日記、ギリシャ神話などの話がふんだんに出てくる。それらと、天皇家の禁断の事実ーーとの関連が――。
 オデュッセウスとキルケ―、プロメテウス、八咫烏、猿田彦の命、丹後七姫−―丹後は興味深い場所だーー、タタラ、羽衣伝説、出雲大社の不思議ーーなどなど、もうお腹いっぱいというほどの不思議な仮説が出てくる。なかなか頭には入ってこないが、非常に面白い。
 浦島の話が、こんなに奥が深いものだったとは。


カンナ
吉野の暗闘


高田崇史
講談社NOVELS



2013/12/19
2009/3/5 発行
 社伝を持ち去り失踪中の諒司が、奈良・吉野山に現れたという。捜しに行った甲斐らは、思わぬ事故に遭遇 ! その縁で山岳ガイドの光昭と親しくなるが、黄金伝説を追いかけ、修験道の開祖・役小角を信奉する彼は、殺人事件の容疑者だった。呪術で人々を苦しめ流罪になった役小角の実体は ? 歪められた真実が明らかに・・・・・なるのかな。

    *****************

 甲斐の高校時代の同級生・柏竜之介も同行する。甲斐は伊賀だが竜之介は甲賀に属する。
 弘法大師・空海・日本真言宗の開祖。吉野の山は、空海たちに乗っ取られた・・・・?
 役小角が追放されて以降、空海の実弟に従って出家した聖宝に牛耳られた。なぜか、黄金がとれる・・・・・・水銀も。
 『青丹よし 奈良の都は咲く花の
    匂うがごとく 今盛りなり』   青は『砂鉄』丹は丹砂(たんしゃ)これから水銀を採取していた。『奈良には砂鉄も水銀もあって、ほんまに良い都ですなあ』という歌なんだって―――ホント?
 吉野の桜は、道に迷わないための目印。山伏の修験は、鉱脈の探査、鉱脈の警備のパトロールだった。
 山の「女人禁制」は、昔はなかった、ある時、作られた?神社に女性の巫女さんがいるじゃないか‥‥と。
 いろんな説が出てきて面白い。古文書も、百人一首も、知っていればもっと理解できる。
 


白蛇の洗礼
毒草師

高田崇史
朝日新聞出版



2013/11/18
2008/4/30 発行

 濃茶の稽古中に起きた殺人事件で、遺体から検出されたのは蛇毒だった。その後、関係者が相次いで殺害されていく。真相を追う編集者の西田の前で、第二の被害者は自らの吐血で十字を描いた。同席者が次々と殺害される中、彼は千利休の奇妙な経歴に辿り着く。傲岸不遜にして博学の“毒草師”御名形史紋の推理が冴えるシリーズ第2弾。

   *************************

  千利休は、キリシタンだったのか?
  
  お茶の歴史も作法も知らないけれど、少し知識を得ることもできたかな。
  茶室の広さは、もともと4畳半で「維摩経」の一説に因んで定められたらしい。
  エジプトのミイラは、オシリスの〜〜
 千利休の居士号についての説ーー「聖ルカーーサン・ルカ」からきているのではないか〜〜

 思いがけない説がいろいろ出てきて、楽しめた。


カンナ
飛鳥の降臨

高田 崇史
講談社NOVELS



2013/11/17
2008/11/6 発行

 伊賀忍者の末裔である鴨志田甲斐は、出賀茂神社の跡取りとして気楽に暮らしていた。が、日本史を根幹から揺るがしかねない社伝を盗まれた上、兄と慕っていた諒司が失踪。さらに不可解な密室殺人事件に巻き込まれ、現役東大生巫女の貴湖とともに事件の真相を追う

      ***************************

 お気楽で楽しいし、それだけでなく詳しくは知らなかった歴史を見直すこともできる。
 聖徳太子は実在していなかった〜〜
 蘇我蝦夷は天皇だった〜〜??
 大化の改新は、クーデター、中大兄の王子は嫌われ者〜〜? ふ〜〜ん
 聖徳太子は、馬子、蝦夷、入鹿の3人のことだったんじゃないか〜〜?

 いろいろ、面白い意外な説が出てきて楽しめた。

 こういう歴史を交えたミステリーは、大好きだ。
 
薀蓄の色々
 ☆飛鳥はひどい湿地帯だったー「スカー洲処」水辺の地域の名称ーー「春日」「「横須賀」などの「スカ」も同様
 ☆聖徳太子には、八つの名前がある。大国主の命も八つの名前がある
 ☆大化の改新――今は乙巳の変という――ええ、ホント?


毒草師
高田 崇史
幻冬舎




2013/11/1
2007/4/25 発行

 「恐ろしいのは毒草ではなく人間です」。名家・鬼田山家で、「一つ目の鬼を見た」と言い残し、施錠された離れから家人が次々と失踪する事件が発生。さらに 長男・柊也が何者かに毒殺され…。関係者全員を前に、古今東西の薬と毒に精通した“毒草師”を名乗る男・御名形史紋が、『伊勢物語』になぞらえて忌まわしき秘密を暴く。

        *****************

 「伊勢物語」「古今和歌集」そして在原業平・・・一つ目小僧そしてギリシャ神話までが出てくる。和歌がよくわからないものの、二つの書物の和歌に関連があるという説明の中で、歌の解釈や、奥に含まれる意味の説明などがあり、面白く読めた。
 伊勢物語を読んでみようかという気になったり、在原業平にも関心が湧いたり、日本の妖怪一つ目小僧とギリシャ神話キュクロプスの一つ目や、たたらの片目や片足のことも、たくさんの薀蓄が楽しい。
 もちろん、密室の謎や、殺人の犯人さがしもあり、ユーモラスな会話もあり、楽しく読めた。

 わたし好みの作品だ。


軍神の血脈
楠木正成秘伝

高田 崇史

講談社





2013/10/28
2024/4/21 再読

2013/4/19 発行
 南朝に殉じ命を落とした勇将・楠木正成。太平洋戦争中、彼はその生き様から軍神として崇められた。―そして現代。特攻隊の生き残りで歴史研究家の修吉は、 正成の死に纏わる恐るべき真実を発見する。だが直後、何者かに毒を射たれ、瀕死の重体に。背後に見え隠れする秘密結社“南木の会”…。修吉の孫・瑠璃は高 校の同級生で作家の京一郎とともに、祖父の命を助けるため、正成の秘密を追う。南北朝時代から現代、そして東京の史跡と愛媛県を繋ぎ、葬られた歴史の真実 が、明らかとなる。
 真相究明のため奔走する孫娘がたどり着いたのは、正成の首を取り、褒美として愛媛の砥部に所領を与えられた、大森彦七盛長の存在だったーーーー地元でも、よっぽどの歴史好きにしか知られていない謎多き武将・大森彦七が、7百年近い時を経た今、脚光を浴びる端緒となるかもしれない歴史ミステリー。
 

     *************************

 楠木正成なんて、今まで全く興味もなく何の知識もなく、ただ名前を知っていただけだった。それなのに故郷にかかわりがあるやら、死にも謎があるというので、がぜん興味が湧いてきた。

 日本版「ダヴィンチ・コードだ」というのを見かけたが、ほんとにそうだ、この歴史ミステリーは面白い。
 日本の歴史は、とっても奥深い。

        ************************

 高田氏の本を何十冊も読むことになったきっかけの本。再読してみたが少しも覚えていなかった。やはり面白い。
 

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