中山 七里


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さよならドビュッシー前奏曲
要介護探偵の事件簿
中山七里
宝島社



2021/11/9
2012/5/24 発行
『さよならドビュッシー』の玄太郎おじいちゃんが主人公になって大活躍!脳梗塞で倒れ、「要介護」認定を受けたあとも車椅子で精力的に会社を切り盛りする玄太郎。ある日、彼の手掛けた物件から、死体が発見される。完全密室での殺人。警察が頼りにならないと感じた玄太郎は、介護者のみち子を巻き込んで犯人探しに乗り出す…「要介護探偵の冒険」など、5つの難事件に挑む連作短編ミステリー。(bookデータベース)

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 なんと、以前に読んだことがあったのだ。よく似たエピソードをどこかで読んだなあ・・・くらいにしか感じなかったが、文庫化にあたってタイトルを替え加筆修正したモノだった。
 面白かったのに記憶に残ってなかったとは、ショックだ。


TAS 特別師弟捜査員

中山七里

集英社




2020/12/21
2018/9/10 発行
「ねえ。慎也くん、放課後ヒマだったりする?」楓から突然声をかけられた慎也は驚いた。楓は学園のアイドルで、自分とは何の接点もないからだ。用件を言わず立ち去る楓を不審に思いながらも、声をかけられたことで慎也の胸は高鳴っていた。彼女が校舎の3階から転落死するまでは―。学校は騒然となり、さらに楓が麻薬常習者だったという噂が流れる。警察の聞き取り調査が始まった。そこに現れたのは、慎也の従兄弟で刑事の公彦。公彦は、転落死の真相を探るため、教育実習生として学園に潜入することを決める。一方の慎也も、楓が所属していた演劇部に入部し、楓の周辺人物に接触を図る。なぜ楓は、慎也を呼び出したのか―。慎也と公彦は、真相解明に挑む。“どんでん返しの帝王”が新たに仕掛けるバディ×学園ミステリ!


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 高校生が主人公で時間に沿って進んでいく、大変読みやすい。
 亡くなった楓について、慎也は少しずつわかっていく、成長していくとも言える。

 僕から見た楓、クラスメートから見た楓、担任の室田先生から見た楓、両親から見た楓、そして演劇部員から見た楓。同じ姿をしているものは一つとしてなかった。
 以前なら楓の死についても一面的な見方しかできなかったろう。一面的な見方をしていたのは楓にだけだったのか。それ以外の人間にも浅薄な決めつけをしていたのではないか。と言う思考の流れから犯人へと推理が進むのかな。

 作者のいつもほどの毒はなかったが、面白く読めた。
 音楽だけでなく、演劇に対しての知識もなかなかのモノのようだ。
    


騒がしい楽園
中山七里
朝日新聞出版



2020/8/5
2020/1/30 発行
 見えない魔の手から子どもたちを守ることができるのか?埼玉県の片田舎から都内の幼稚園に赴任してきた幼稚園教諭・神尾舞子。待機児童問題、騒音クレーマー、親同士の確執…様々な問題を抱える中、幼稚園の生き物が何者かに殺される事件が立て続けに発生する。やがて事態は最悪の方向へ―。(Bookデータベース)

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 「おやすみラフマニノフ」に神尾舞子さんは出てきていたらしい。音大生としてかな。「闘う君の唄を」で幼稚園教諭になって、今回東京に異動してきての話。
 ラフマニノフの時のことは少しも思い出せない。


能面検事
中山七里
光文社



2020/6/19
2018/7/30 発行
 巷を騒がす西成ストーカー殺人事件を担当している、大阪地検一級検事の不破俊太郎と新米検察事務官の惣領美晴。どんな圧力にも流されず、一ミリも表情筋を動かすことのない不破は、陰で能面と呼ばれている。自らの流儀に則って調べを進めるなかで、容疑者のアリバイは証明され、さらには捜査資料の一部が紛失していることが発覚。やがて事態は大阪府警全体を揺るがす一大スキャンダルへと発展し―警察内から裏切りと揶揄される不破の運命は、そしてストーカー事件の思いもよらぬ真相とは―大阪地検一級検事・不破俊太郎。孤立上等、抜き身の刀、完全無欠の司法マシンが、大阪府警の暗部を暴く! (Bookデータベース)

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 東の岬、西の榊
 岬とは岬恭平次席検事であり、岬洋介の父だな。


ワルツを踊ろう
中山七里
幻冬舎




2019/9/15
2017/9/5 発行
20年ぶりに帰郷した了衛を迎えたのは、閉鎖的な村人たちの好奇の目だった。
愛するワルツの名曲〈美しく青きドナウ〉を通じ、荒廃した村を立て直そうとするが……。
 金も仕事も住処も失った“元エリート"溝端了衛が帰った故郷は、7世帯9人の限界集落に成り果てていた。
携帯の電波は圏外。住民は曲者ぞろい。地域に溶け込もうと奮闘する了衛の身辺で、不審な出来事が起こりはじめ……。

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 タイトルにつられて、後味の悪い、しょうもないものを読んでしまった。


もういちど
ベートーベン


中山七里
宝島社



2019/7/11
2019/4/3 発行
 ピアニストの道を挫折した高校生の岬は、司法試験をトップの成績で合格して司法修生となった。
彼は、ベートーヴェンを深く愛する検事志望の同期生・天生高春と出会う。
天生は岬の才能に羨望を抱き嫉妬しつつも、その魅力に引き込まれていき……。
いっぽう、世間では絵本画家の妻が絵本作家の夫を殺害したとして、
妻を殺害容疑で逮捕したというニュースをはじめ、3件の殺人事件を取り上げる――。

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 岬がなぜ一度はピアノを諦めたのか。
 なぜ、またピアノに戻ってきたのか。
 そのことがよくわかるエピソードの回だった。

 音楽を言葉で表現するのが、相変わらず凄い。


恩讐の鎮魂曲
レクイエム
中山七里
講談社



2018/8/14
2016/3/15 発行
 韓国船が沈没し、251名が亡くなった。その事故で、女性から救命胴衣を奪った日本人男性が暴行罪で裁判となったが、刑法の「緊急避難」が適用され無罪となった。一方、医療少年院時代の恩師・稲見が殺人容疑で逮捕されたため、御子柴は弁護人に名乗り出る。稲見は本当に殺人を犯したのか?(Bookデータベース)

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 御子柴のシリーズ3作目。
 特養の中の介護者による老人虐待、緊急避難、罪を償うということについてなど。


要介護探偵の事件簿
中山七里
宝島社



2018/7/15
2011/10/20 発行
反骨精神をモットーとする香月玄太郎は、不動産会社を興し一代で成功を収めた社長。下半身が不自由で「要介護」認定を受けている老人だが、頭の回転が早く、口が達者。ある日、彼の分譲した土地で建築中の家の中から、死体が発見された。完全密室での殺人。お上や権威が大嫌いな玄太郎は、警察が頼りにならないと感じ、介護者のみち子を巻き込んで犯人捜しに乗り出す。完全密室の殺人、リハビリ施設での怪事件、老人ばかりを狙う連続通り魔、銀行強盗犯との攻防、国会議員の毒殺事件など、5つの難事件に挑む連作短編ミステリー。

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 『さよならドビュッシー』の前段の時間のモノ
 玄太郎おじいちゃんの魅力につきる。
 最初の「要介護探偵の冒険」では、入居希望者が若年のピアノ弾きだという。・・・・ん?もしや・・・。
 二作目で脳梗塞になり下半身不随になるので、時間的には先ではないのかな。


追憶の夜想曲
ノクターン
中山七里
講談社文庫



2018/7/14
2016/3/15 発行
少年時代に凶悪事件を犯し、弁護は素性の悪い金持ち専門、懲戒請求が後を絶たない不良弁護士・御子柴。彼は誰も見向きもしない、身勝手な主婦の夫殺し控訴審の弁護を奪い取る。御子柴が金目のない事件に関わる目的とは?因縁の検事・岬恭平との対決は逆転に次ぐ逆転。法廷ミステリーの最先端を行く衝撃作。(Bookデータベース)

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 なぜ、こんな得にもならない事件の弁護をするのか・・・・・・・が、最大の謎。
 最後にわかる・・・・・・あ〜〜なるほど・・・・と。


悪徳の輪舞曲
中山七里
講談社



2018/6/5
2018/3/13 発行
御子柴のシリーズ4作目。
14歳で殺人を犯した悪辣弁護士・御子柴礼司を妹・梓が30年ぶりに訪れ、母・郁美の弁護を依頼する。郁美は、再婚した夫を自殺に見せかけて殺害した容疑で逮捕されたという。接見した御子柴に対し、郁美は容疑を否認。名を変え、過去を捨てた御子柴は、肉親とどう向き合うのか、そして母も殺人者なのか? (Bookデータベース)

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 間に2作品あるので、作中の話でわからない部分があった。

 母が自殺に見せかけて殺人をするところから話が始まっているのに、どうやって弁護ができるのだろうと不思議に思いつつ読み進む。
 それにしても、よくこんなもの凄い設定を考えるものだ。面白い思考実験なのかも。
 驚愕のどんでん返し・・・・・想像できなかった。


贖罪の奏鳴曲
中山七里
講談社



2018/5/26
2011/12/21 発行
 弁護士・御子柴礼司は、ある晩、記者の死体を遺棄した。死体を調べた警察は、御子柴に辿りつき事情を聴く。だが、彼には死亡推定時刻は法廷にいたという「鉄壁のアリバイ」があった―。
封印された過去が、新たな「罪」へ。「正義」と「贖罪」の意味を問う驚愕のミステリー。(Bookデータベース)

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 班長渡瀬と埼玉県警捜査一課古手川和也のシリーズ、と思ったら御子柴のシリーズの始まり。
殺されたのは、加賀谷竜次、フリーランスの記者。強請は誰がターゲットか?
 弁護士御子柴は、かつて一四歳の時少女を殺し、「死体配達人」と言われた園部信一郎だった。今は関東医療少年院で五年過ごしたあと弁護士となっていた。

 医療少年院時代の園部の様子、御子柴が依頼された材木加工工場の夫殺しの弁護とその裁判の情景、左手しか使えない障害者である材木工場の息子。

 誰が材木工場の事故を仕組んだか、人工呼吸器を止めたのは誰か、誰もが怪しい。
そして、かつて殺人を犯した者はホントに更生できるのか?

 フィクションではあるけど少年Aを想定して書かれているようだ。この作品の中では更生できたが、現実の少年Aは、更生できているのか、気になるところだ。、


このミステリーがすごい!
四つの謎

宝島社

麻生正 乾緑郎 
海堂尊 中山七里



2018/2/23
2014/12/19 発行
「このミステリーがすごい!」の大賞をを取った作家4人の作品。

 中山七里 第8回 「さよならドビュッシー」でーーー「残されたセンリツ」

 乾緑郎 第9回 「完全なる首長竜の日」でーーー「黒いパンテル」

 安生正 第11回 「生存者ゼロ」でーーー「ダイヤモンドダスト

 海堂尊 第4回 「チーム・バチスタの栄光」でーーー「カシオペアのエンドロール」


アポロンの嘲笑
中山七里
集英社



2018/1/19
2014/9/10 発行
 <管内に殺人事件発生>の報が飛び込んできたのは、東日本大震災から五日目のことだった。
被害者は原発作業員の金城純一。被疑者の加瀬邦彦は口論の末、純一を刺したのだという。
福島県石川警察署刑事課の仁科係長は移送を担うが、余震が起きた混乱に乗じて邦彦に逃げられてしまう。邦彦は、危険極まりない“ある場所"に向かっていた。仁科は、純一と邦彦の過去を探るうちに驚愕の真実にたどり着く。一体何が邦彦を動かしているのか。自らの命を懸けても守り抜きたいものとは何なのか。そして殺人事件の真相は――。

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 東日本大震災と福島原発を題材に物語が展開
 東電関係の下請け作業員の話は良く調べてあるように思うが、とってつけたような殺人事件はリアリティがない。
 義憤≠描き出すためのストーリー。


ドクター・デスの遺産
中山七里
角川書店



2017/12/25
2017/5/31 発行
 警視庁にひとりの少年から「悪いお医者さんがうちに来てお父さんを殺した」との通報が入る。当初はいたずら電話かと思われたが、捜査一課の高千穂明日香は少年の声からその真剣さを感じ取り、犬養隼人刑事とともに少年の自宅を訪ねる。すると、少年の父親の通夜が行われていた。少年に事情を聞くと、見知らぬ医者と思われる男がやってきて父親に注射を打ったという。日本では認められていない安楽死を請け負う医師の存在が浮上するが、少年の母親はそれを断固否定した。次第に少年と母親の発言の食い違いが明らかになる。そんななか、同じような第二の事件が起こる――。
 安らかな死をもたらす白衣の訪問者は、聖人か、悪魔か。警視庁vs闇の医師=極限の頭脳戦

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魔女は甦る
中山七里
幻冬舎



2017/11/21
2011/5/10 発行
 埼玉県の長閑な田園地帯で、肉片と骨の屑のようなバラバラ死体が発見された。被害者は現場近くにある製薬会社・スタンバーグ製薬に勤めていた桐生隆。仕事ぶりも勤勉で質素な暮らしを送っていた青年は、なぜ殺されなければならなかったのか?
 埼玉県警捜査一課・槙畑啓介は捜査を続ける過程で、桐生が開発研究に携わっていた“ヒート”と呼ばれる薬物の存在を知る。それは数ヶ月前、少年達が次々に凶悪事件を起こす原因となった麻薬だった。
 会社は2ヶ月前に閉鎖され、社員も行方が知れない。同時に嬰児誘拐と、繁華街での日本刀による無差別殺人が起こった。
 事件の真相に迫るほど、押し隠してきた槙畑の心の傷がえぐり出されていく。過去の忌まわしい記憶を克服し、槙畑は桐生を葬った犯人に辿り着けるのか。 (Bookデータベース)

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 槙畑の上司は渡瀬。新米刑事に古手川がいる。ピアニストの洋介の父親の検事も出てくる。

 場面はあまり想像したくないほど、凄惨な感じで、一気に読んだけれど、面白いといえるのかなあ。洞窟に入っていくときは、そこから先が読めてしまうようで無理な設定ではないかな。
 ホラー
 この「魔女は甦る」 は作者の中山七里が「さよならドビュッシー」 (宝島社文庫)で第8回このミステリーがすごい! 大賞を受賞する前に、第6回このミステリーがすごい! 大賞に応募した作品を改稿したもの。


ネメシスの使者
中山七里
文藝春秋



2017/11/5
2017/7/20 発行
 ギリシア神話に登場する、義憤の女神「ネメシス」。重大事件を起こした懲役囚の家族が相次いで殺され、犯行現場には「ネメシス」の血文字が残されていた。その正体は、被害者遺族の代弁者か、享楽殺人者か、あるいは…。『テミスの剣』や『贖罪の奏鳴曲』などの渡瀬警部が、犯人を追う。 (Bookデータベース)

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 死刑制度がテーマのミステリー。
 渡瀬警部や古手川刑事に岬検事(ピアニスト岬洋介の父)登場の上に光崎教授も名前が出てくる。
 


ヒポクラテスの憂鬱

中山七里

祥伝社




2017/10/6

2016/9/20 発行
 “コレクター(修正者)”と名乗る人物から、埼玉県警のホームページに犯行声明ともとれる謎の書き込みがあった。直後、アイドルが転落死、事故として処理されかけたとき、再び死因に疑問を呈するコレクターの書き込みが。関係者しか知りえない情報が含まれていたことから、捜査一課の刑事・古手川は浦和医大法医学教室に協力を依頼。偏屈だが世界的権威でもある老教授・光崎藤次郎と新米助教の栂野真琴は、司法解剖の末、驚愕の真実を発見する。その後もコレクターの示唆どおり、病死や自殺の中から犯罪死が発見され、県警と法医学教室は大混乱。やがて司法解剖制度自体が揺さぶられ始めるが…。(Bookデータベース)より
   1 墜(お)ちる  ーー アイドルがステージから転落死
   2 熱中(のぼ)せる  ーー 車中の熱中症か否か(子どもの虐待)
   3 焼ける ーー 新興宗教教祖の焼死
   4 停まる  ーー 高圧線とペースメーカー 
   5 吊るす ーー  自殺? 
   6 暴く  ーー  女性警察官の飛び降り自殺と・・・・解剖予算がない

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 ヒポクラテスのシリーズ2作目。
 埼玉県警の古手川和也刑事について「素っ気なさと向こう気の強さがネクタイをして歩いているような男」という紹介が面白い。

 大学の予算がすくないや、警察の解剖予算が少ないなどの事情がくどいくらい繰り返される。事件かもしれないものも解剖しないとわからないままで終わるのだろうなあと思える。

 どのエピソードも、証明は無理ではないかと思えるところから、明らかにしていくので面白かった。
 古手川の上司も登場。
 登場人物のキャラがどの人も面白い。

 


ヒポクラテスの誓い
中山七里
祥伝社



2017/9/22
2015/5/20 発行
 栂野(つがの)真琴は浦和医大の研修医。単位不足のため、法医学教室に入ることになった。真琴を出迎えたのは法医学の権威・光崎藤次郎教授と「死体好き」な外国人准教授キャシー。傲岸不遜な光崎だが、解剖の腕と死因を突き止めることにかけては超一流。光崎の信念に触れた真琴は次第に法医学にのめりこんでいく。彼が関心を抱く遺体には敗血症や気管支炎、肺炎といった既往症が必ずあった。「管轄内で既往症のある遺体が出たら教えろ」という。なぜ光崎はそこにこだわるのか―。解剖医の矜持と新人研修医の情熱が、隠された真実を導き出す―

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 面白くて一気読み。
 ミュンヒハウゼン症候群ーー


静おばあちゃんにおまかせ
中山七里
文芸春秋





2017/5/17
2012/7/15 発行
 元裁判官の祖母と孫娘が難事件を次々解決!
 警視庁の新米刑事・葛城は女子大生・円に難事件解決のヒントをもらう。円のブレーンは元裁判官の静おばあちゃん。

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どこかでベートーヴェン
中山 七里
宝島社





2017/3/31
2016/6/8 発行
 ニュースでかつての級友・岬洋介の名を聞いた鷹村亮は、高校時代に起きた殺人事件のことを思い出す。岐阜県立加茂北高校音楽科の面々は、九月に行われる発表会に向け、夏休みも校内での練習に励んでいた。しかし、豪雨によって土砂崩れが発生し、一同は校内に閉じ込められてしまう。そんななか、校舎を抜け出したクラスの問題児・岩倉が何者かに殺害された。警察に疑いをかけられた岬は、素人探偵さながら、自らの嫌疑を晴らすため独自に調査を開始する。(Bookデータベース)

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 ニュースというのは、前作のショパンコンクールの時に戦場に流れた岬のピアノのこと。
 


いつまでもショパン

中山 七里

宝島社





2017/3/18

2013/1/24 発行
ピアニストの岬洋介が、周りで起きる音楽関連の事件を解決する推理小説のシリーズ

 ポーランドで行なわれるショパン・コンクールの会場で、殺人事件が発生した。遺体は、手の指10本が全て切り取られるという奇怪なものだった。コンクールに出場するため会場に居合わせたピアニスト・岬洋介は、取り調べを受けながらも鋭い洞察力で殺害現場を密かに検証していた。さらには世界的テロリスト・通称“ピアニスト”がワルシャワに潜伏しているという情報を得る。そんな折、会場周辺でテロが多発し…。 (Bookデータベース)

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 ショパンコンクールは別格、ショパンが特別な理由は、彼の曲がポーランド国民の持つ不屈たる精神の礎になっている、故国は迫害されていた。

 演奏の描写は作品を増すごとに凄くなっているので、ついていけない。迫力は感じる、実際にショパンの曲を聴きながら演奏描写を読んだらよくわかるのか、どうか。

 戦場にいて、弟のショパンコンクールの様子をノートパソコンで見ている兵士の兄、そして岬洋介のノクターン第二番変ホ長調を戦場に流した効果。まさかこんな場面を作るとは思わなかったし、そのあとで殺人事件の解決をしっかり岬がするとは。

 前作の人物が岬の生徒として、時間と出来事の流れの中で登場するのも楽しいかな。


おやすみラフマニノフ

中山 七里
宝島社
 





2017/3/2
2010/10/26 発行
『さよならドビュッシー』の続編。
 秋の演奏会を控え、第一ヴァイオリンの主席奏者である音大生の初音とともに、プロへの切符をつかむために練習に励む。しかし完全密室で保管される、時価2億円のチェロ、ストラディバリウスが盗まれた。彼らの身にも不可解な事件が次々と起こり……。
 ラフマニノフの名曲とともに明かされる驚愕の真実! 美しい音楽描写と緻密なトリックが奇跡的に融合した人気の音楽ミステリー。

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 音楽描写はやっぱり凄い。前回よりももっとだ。
 「楽器をプレイできない音楽鑑賞者にとって奏者の気持ちに寄り添える体験」という感想を書いていた人がいたが、読んでいくと演奏できそうに錯覚する。
 「読んでいる間は周囲の音が消え、ヴァイオリンやピアノ、オーケストラの音がごうごうとうなるのを体感」という感想にも共感できる。台風で非難した体育館での、岬と晶の演奏の描写。
 音楽をここまで言葉で表現できるのか・・・・。
 
 ミステリーは付け足し、自信のなかった晶が、岬に導かれ、成長していく様も見事だ。音大生たちの恋愛と友情、悩みと葛藤、反発と承認、青春群像劇の要素あり。

 (自分の言葉で感想をまとめられなかったので、他の人の言葉を拝借しました。)


さよならドビュッシー

中山 七里
宝島社





2017/2/25
2010/1/22 発行
第8回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。行間から立ち上るドビュッシー「月の光」や、ショパン「エチュード 10-1」の美しい旋律。ピアニストを目指す少女、殺人、そして驚愕のラスト!

ピアニストを目指す遥、16歳。両親や祖父、帰国子女の従姉妹などに囲まれた幸福な彼女の人生は、ある日突然終わりを迎える。祖父と従姉妹とともに火事に巻き込まれ、ただ一人生き残ったものの、全身火傷の大怪我を負ってしまったのだ。それでも彼女は逆境に負けずピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、やがて殺人事件まで発生する――。

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 ピアニストの岬洋介が、周りで起きる音楽関連の事件を解決する推理小説のシリーズ

 著者の中山が横溝正史の金田一耕助というキャラクターが好きだったため、自分が書くシリーズの主人公は「ピアノを弾くイケメンの金田一にしよう!」という思いつきから生み出され、名前は中山が大学時代に初めて書いた「謝罪」というタイトルの安田講堂落城の話に登場した主人公の名前を気に入っていたために再度使用したという。

 音楽描写がすごい。ピアノってこんなふうにひくの?クラシックってこういうものだったの?と新鮮な驚きがあった。演奏を聴いているときやピアノを弾いているときの描写を、私は凄いと思ったが、飛ばしたりななめ読みする人もあるらしい。私は音楽シリーズを読んでいこうと思った。
ミステリーとしてよりも、ピアノ演奏に関する描写を味わい、主人公の音楽を通しての成長物語として捉えるべき作品のようだ。


作家刑事毒島

中山 七里

幻冬舎




2017/1/7

2016/8/10 発行
 殺人事件解決のアドバイスを仰ごうと神保町の書斎を訪れた刑事・明日香を迎えたのは、流行作家の毒島(ぶすじま)。虫も殺さぬような温和な笑顔の持ち主は、性格の歪んだ皮肉屋だった。捜査過程で浮かび上がってきたのは、巨匠病にかかった新人作家、手段を選ばずヒット作を連発する編集者、ストーカーまがいの熱狂的な読者。ついには毒島本人が容疑者に! ? 新・爆笑小説!(Bookデータベース)

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 文芸という特殊な世界で起きた犯罪を、技能研修員の刑事兼作家の毒島が解決していくミステリ短編集。
 小説の世界や出版界の実態がよく分かったが、こんな性格の悪い主人公は、読んでいて気持ちがよくないなあ。

 一  ワナビの心理試験
 二  編集者は偏執者
 三  賞を獲ってはみたものの
 四  愛涜者
 五  原作とドラマの間には深くて暗い川がある

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