三浦 しをん
1976(昭和51)年、東京生れ。早稲田大学第一文学部卒業。
2000(平成12)年、書下ろし長篇小説『格闘する者に○』でデビュー。
以後、『月魚』『白蛇島』『秘密の花園』『ロマンス小説の七日間』などの小説を発表。
ウェブマガジンBoi1edEggsOn1ine(http://www.boi1edeggs.com)の連載をまとめた、
『しをんのしおり』『夢のような幸福』『乙女なげやり』など、エッセイ集も注目を集める。
他に小説『私が語りはじめた彼は』、エッセイ『人生激場』などがある。
愛なき世界 三浦しをん 中央公論新社 2022/7/31 2018/9/10 発行 |
恋のライバルが、人類だとは限らない――!? 洋食屋の見習い・藤丸陽太は、植物学研究者をめざす本村紗英に恋をした。しかし本村は、三度の飯よりシロイヌナズナ(葉っぱ)の研究が好き。見た目が殺し屋のような教授、イモに惚れ込む老教授、サボテンを巨大化させる後輩男子など、愛おしい変わり者たちと地道な研究に情熱を燃やす日々……人生のすべてを植物に捧げる本村に、藤丸は恋の光合成を起こせるのか!? 道端の草も人間も、必死に生きている。世界の隅っこが輝きだす傑作長篇。 ****************************** |
あの家に暮らす四人の女 三浦しをん 中公文庫 2019/7/28 2018/6/25 発行 2015/7/ 中央公論 |
謎の老人の活躍としくじり。ストーカー男の闖入。いつしか重なりあう、生者と死者の声―古びた洋館に住む女四人の日常は、今日も豊かでかしましい。谷崎潤一郎メモリアル特別小説作品。ざんねんな女たちの、現代版『細雪』。(Bookデータベース) ここは杉並の古びた洋館。父の行方を知らない刺繍作家の佐知と気ままな母・鶴代、佐知の友人の雪乃(毒舌)と多恵美(ダメ男に甘い)の四人が暮らす。ストーカー男の闖入に謎の老人 山田も馳せ参じ、今日も笑いと珍事に事欠かない牧田家。ゆるやかに流れる日々が、心に巣くった孤独をほぐす同居物語。織田作之助賞受賞作。 *************************** |
皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。 三浦しをん 原武史 角川書店 2019/7/2 2019/2/27 発行 |
まえがき 三浦しをん 第一回対談 通学の沿線風景―女官の世界―『源氏物語』は不敬か 第二回対談 「生前退位」のご意向―女系天皇と「国体」―天皇の代替わり 第三回対談 「おことば」の衝撃―蕎麦屋にふらっと入る自由―三島由紀夫、幻の計画 第四回遠足 コンパートメント車両―鬼怒川温泉―東武ワールドスクウェア 第五回対談 「作詞:昭和天皇」―宮内庁詰めになる―平成の終わりに おわりに 原武史 鉄学者と作家、平成の終わりに皇室、小説をアツーく語り合う。 ***************************** |
神去なあなあ夜話 三浦 しをん 徳間書店 2015/5/6 2012/11/30 発行 |
神去なあなあ日常 の続編 100年先を見据えて作業をしている、神去村の林業の現場。そこへ放り込まれた平野勇気も、村で暮らして1年が過ぎ、20歳になった。山仕事にも慣れ、憧れの直紀さんとドライブに出かけたりもするようになったけれど……。 ******************** |
舟を編む 三浦 しをん 光文社 2013/10/27 2011/9/20 発行 |
玄武書房に勤める馬締光也は営業部では変人として持て余されていたが、新しい辞書『大渡海』編纂メンバーとして辞書編集部に迎えられる。個性的な面々の中
で、馬締は辞書の世界に没頭する。言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく。しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は
完成するのか──。言葉への敬意、不完全な人間たちへの愛おしさを謳いあげる **************** 言葉に非常に関心とこだわりのある人がいるものだと驚かされる。 辞書作りは、今まで考えたこともなかっただけに、ゼロから作るのではないから大変ではないのだろうくらいに思っていた。とんでもなく細かい作業の積み重ねらしい。使用する紙も専用の紙を研究して漉くのだという。凄いの一語だ。 2012年度本屋大賞第1位を獲得し、映画化された作品。 辞書作りに情熱を注ぐ主人公の話しを軸に人間ドラマが繰り広げられる。登場する人物も味があり、営業の西岡も協力態勢になり、十数年もかけた大辞書が出来上がっていく様は素晴らしい。 せっかくの辞書も最近はパソコンの広辞苑や大辞林を利用することの方が多くなり、苦労の末出来上がった辞書を利用しないのがもったいない気もするなあ。 「辞書は、言葉の海を渡る舟だ」――人は辞書という舟に乗り、暗い海面に浮かび上がる小さな光を集める。最もふさわしい言葉で、正確に、思いをだれかに届けるために。もし辞書が無かったら、茫漠とした大海原を前にたたずむほかはないだろう。(本文より) |
風が強く吹いている 三浦 しをん 新潮社 2010/8/17 2006/9/20 発行 |
君だったのか、俺が探していたのは。走るために生まれながら、走ることから見放されかけていた清瀬と蔵原。二人は無謀にも陸上とは無縁だった八人と「箱根」に挑む。走ることの意味と真の“強さ”を求めて……。新直木賞作家の本領全開、超ストレートな大型青春小説。 ************************** こんなことはありえないよ、と思いながらも、イヤイヤ、あるかもしれないぞ、と思わせられながら読み進んだ。 陸上をやっていたわけじゃない人間も集めてちょうど10人になったからといって、箱根駅伝を走ろうというのだから。 陸上部の寮「竹青荘」に偶然集まった住人たちはいろいろと面白いキャラクターだ。 清瀬灰二(ハイジ)―ー駅伝を呼びかけた張本人。食事や掃除、その他の雑用 をはじめ、陸上部員の健康管理やトレーニングメニューなどを仕切っている。 蔵原走(カケル)―−走る為に生まれてきたような美しい走り、監督とそりが合わず、問題を起こし、ハイジと出会うまでは一人で走っていた。 キング―ークイズ番組が大好き ニコチャン―ー常に寮の自室を煙草 の煙で充満させているようなヘビースモーカーなのであだ名がニコチンにちなんだもの。もと陸上経験者。 ユキ―ー3年の時、司法試験に合格した秀才。理詰めなら納得する。母親は再婚した。 神童―ー地方出身で山を2つ越えて学校に通っていた。人口の少ない田舎では何をやっても一番だったことから「神童」というあだ名がついた。 双子のジョータとジョージ ムサ―ー理工学部2年生、黒人留学生。ただし普通の留学生(国費留学生)であり陸上経験はない。 王子―ー漫画オタクで、部屋は漫画で埋め尽くされている。端整な顔立ちをしていることから「王子」というあだ名がついた。足が遅 く、運動神経も鈍い。 こんなメンバーだが、清瀬が性格や身体の特性などを把握し、適材適所でそれなりにこなし、箱根駅伝を走る予選会にも出場し、とうとう正月の駅伝に臨むことになる。 町内の人達の応援や、味のある大家の存在などもあり、メンバーの過去も明らかにされながら、ワクワクする駅伝の世界が展開される。 走ることって、こんなに素晴らしかったのかなあ。自分が長距離が苦手だったので、私の知らない、素晴らしい世界を見せてくれた。泣かされる場面もある。 読み終わってから、映画や漫画になったことを知る。納得できるな。 |
まほろ駅前 多田便利軒 三浦 しをん 文芸春秋 2010/5/29 2006/3/25 発行 |
星間商事株式会社社史編纂室 三浦 しをん 筑摩書房 2010/1/22 2009/7/10 発行 |
神去なあなあ日常 三浦しをん 徳間書店 2009/9/19 2009/5/31 発行 |
高校を卒業したら、適当にフリーターをやるつもりが、担任と母の陰謀と「緑の雇用」(林業に就業することを前提に国が助成金を出す)制度によって林業の世界に放り込まれることになった俺、平野勇気。流されやすいが素直で適応力がある。 何の経験もない都会育ちの若者が、神去村という山奥に来て、林業の世界を知り、小さな村のしきたりや行事を経験しながら逞しくなっていく姿を、明るくユーモラスに描いている。 |
格闘する者に○ 三浦 しをん 新潮文庫 2007/1/26 |
新聞のコラムで見かけたとき「楽しい雰囲気を表現できる人だなあ」と要チェック。その時は知らなかったが、直木賞も受賞している。「格闘する青春の日々を妄想力全開で描く」 著者の書く就職活動は、氷河期といわれる時期に就職活動をしていた娘の苦労とダブる。 主人公可南子はマンガ好きで、マンガ雑誌の編集者になりたいと思い、数社を受けに行く。他の同窓生達と違い、仲のいい砂子と仁木君は、のんきで就職活動は遅れがち。エントリーシート書きに苦労し、SPI試験をスパイ試験と茶化し、丸川書店、K談社、集A社の筆記試験と面接の模様を描写した所は鋭くてしかも面白い。面目が潰れた出版社もあるのでは? 24歳のときに書いたデビュー作だというが、単に就職活動をした体験談だけなら作文に過ぎないが、親子関係、旧家のしがらみ、若者の仕事への姿勢、年配者についてなど24歳って、こんなに世の中のことを知っていたっけ?と感心し、観察眼、分析力、批評力に優れた作家だと思う。言葉の選び方や使い方がユーモラスで軽い印象がするけれど、たいしたものだと思う。弟がいるらしい。小説にもコラムにも出てきて、きょうだいの関係もほのぼのといい印象を受ける。自分の娘と息子を見ているようでおかしかった。 就活中に文章力を見出されたらしい。 解説の重松清氏は読んだとき 「我輩は女子大生である。内定先はまだない」 という言葉を想起したそうだ。これも面白い。 |