りゅう けいいちろう 1923--1989
東京大学仏文科卒、東京創元社に入社。立教大学講師などを経て脚本家。
59年映画「にあんちゃん」でシナリオ作家協会賞。
84年小説家に転身し、89年「一夢庵風流記」で柴田錬三郎賞受賞。
読書会 栞 記録 2004年12月15日 | ||
テーマ 「隆 慶一郎」を読もう | ||
T・Y | 作者の膨大な史料集めと、徹底的に分析しふくらませて感動の現代小説に仕上げて、新しいタイプの作家だと思う。「捨て童子」マンガから入りたいと思う。 | |
H・T | 名を初めて知り「しおり」の会で取り上げられて読む機会を与えられた事はありがたい。まだ半分しか読んでいないが面白い文に引き込まれていくのに少し驚いている。他の本も読んでみたいと思う。お嫁さんにも勧めた。 | |
N・W | 「柳生刺客状」の最後の方に、柳生石周斎の長男新次郎厳勝が、百姓一揆に巻き込まれた多くの女・子どもを含んだ人々を殺し、精神に異常をきたす寸前までいった息子兵介(実は実父と妻の間にできた男子)を長年にわたって介護する話がある。「隆慶一郎短編全集」の中でこれが一番心打たれた内容である。自分自身戦場で地獄を見たからこそ同じ地獄を見た息子をあれほど親身になって面倒を見て兵介を立ち直らせることができたのであろうか。戦闘場面と色っぽいシーンの多いこの作品の中で、このところは、本当に子を持つ親としても教えられた。 | |
R・K | 作家名を初めて知り、Yさんがすすめるという事に興味を持ちながらつまみ食いのまま会に出席。でも、「面白い」と感じた事を忘れずきちんと読んでみようと思う。 | |
S・M | 「吉原御免状」歴史に疎い為?読んでいても苦痛になり、中途半端な読み方になった。会に参加しているおかげで、自分では選ばない本を目にすることができた。 | |
M・M | 「捨て童子」はマンガで見ていたが、原作がこの人とは知らずにいた。すごい見方をする人だと思っていたが、今度は作品を読んでみたい。 | |
M・K | 隆氏の本を初めて読んだ。まだ途中だが読み終えるつもり。いつの時代にも扱いにくい人とされる存在がある・・。資料がすごく感心した。 | |
J・Y | 初めて読んだ作家だがたいへん面白くて、もっと早く知りたかったと思ったくらい。「捨て童子 松平 忠輝」は、主人公のキャラクターも面白く、音羽に身近な地名や名前も出てきて親しみがあった。いつの時代にも、私たちにあまり知られていない所に興味深い人物やエピソードがあって、それを伝える作家があって、いつでも読んで味わえる。本っていいなあと思う。 | |
K・I | 「吉原御免状」家康の影武者・天皇の隠し子・宮本武蔵・荒木又衛門などを登場させて吉原を舞台にして、幕府と吉原の吉原御免状をめぐっての抗争をシナリオライターならではの発想で表現していて、歴史に疑問を持ちながらも気楽に読めた。 | |
T・S | 短編「柳生刺客状」だけを読んだ。おもしろいし歴史上の理解が進むような気がするし、いいことばかりなのに、観光スポットを下車せず車窓から眺めているような展開というか。今は、次を読みたいとは思わなかった。 | |
H・T | 「捨て童子」全部読んだが、読みにくい、自分の中に入ってこない?よく調べているとは思うが。 | |
M・I | 「花と火の帝」天皇の隠密が出てくる。珍しい本と思う。 | |
Y・Y | 栞のテーマとして提案はしたものの、他の人から受け入れられるか心配だったが面白かったと言われホッとした。視点のユニークさ、会話の面白さ、登場人物に魅力があるなど、が隆慶一郎の良さではないか。 |
作品
書名 | 出版社 | 年月日 | 初出 | 初出 月日 | 読了日 |
吉原御免状 | 新潮社 | 1987年 | 週刊新潮 | 1984年9月〜 | |
鬼麿斬人剣 | 新潮社 | 1987年 | 小説新潮 | 1986年3月〜 | 91/9/14 |
かくれさと苦界行 | 新潮社 | 1987年 | 週刊新潮 | 1986年7月〜 | |
柳生非情剣(短編) | 講談社 | 1988年 | オール読み物、歴史読本ほか | 1986年 | |
影武者 徳川家康 | 新潮社 | 1989年 | 静岡新聞 | 1986年1月〜 | 04/9/28 |
一夢庵風流記 | 読売新聞社 | 1989年 | 週刊読売 | 1989年1月〜 | 92/3/1 |
時代小説の愉しみ(エッセイ) | 講談社 | 1989年 | 93/7/26 | ||
捨て童子 松平忠輝 | 講談社 | 1989年 | 05/8/12 | ||
風の呪殺陣 | 徳間書房 | 1990年 | 問題小説 | 1986年10月〜 | |
死ぬことと見つけたり | 新潮社 | 1990年 | 小説新潮 | 1987年8月〜 | |
花と火の帝 | 日本経済新聞社 | 1990年 | 日本経済新聞社 | 1988年2月〜未完 | 91/7/4 |
かぶいて候 | 実業の日本社 | 1990年 | 週刊小説、歴史読本ほか | 1989年5月〜 | ? |
駆込寺蔭始末 | 光文社 | 1990年 | 別冊 小説宝石 | 1986年 | |
柳生刺客状 | 講談社 | 1990年 | |||
見知らぬ海へ | 講談社 | 1990年 | 小説現代 | 1987年7月〜未完 | |
捨て童子・松平忠輝 隆 慶一郎 講談社文庫 2005/8/12 |
捨て童子とは、この世ならぬ途方もないエネルギーを持ち、人を戦慄せしめる人物!徳川家康の第六子でありながら、容貌怪異なため、生まれ落ちてすぐ家康に「捨てよ」といわれた“鬼っ子”松平忠輝の異形の生涯を描く。 読み始めると止まらないほど面白い。それは、生まれながらの剣の達人にして馬術・水練にも長じ、西洋の語学・医術にも通じた当代きっての知識人という忠輝の怪物ぶりにある。人並みはずれて神がかり的なスーパーヒーローなのだが、このことに関してのみ、史実がどうであったかは考えてはいけないらしい。 凛々しく成長した忠輝は、越後福嶋藩の大名となる。福嶋藩のキリシタン化を企てる大久保長安には、忠輝を将軍とする新体制を作り上げる野望があった。忠輝を狙う、兄の将軍秀忠と柳生宗矩。権力者たちの暗闘に巻き込まれていく。 大阪夏の陣、忠輝のもとに出陣命令が下る。大阪城中のキリシタン牢人に、キリシタンに理解が深い忠輝の軍勢をぶつけようという、兄秀忠の底意地の悪い計画。そして、父家康と兄秀忠の暗闘、宿敵柳生一族との確執。波乱の生涯を送る忠輝を描く、史実と伝奇が渾然一体となった伝奇ロマン。 歴史小説とは歴史上の事件や人物を史実に即して描いたものであり、時代小説(伝奇小説)とは、歴史の衣装を借りて作者の自由奔放な夢を展開するロマンであり、荒唐無稽な絵空事に過ぎない、と以前は私も思ったことがあった。だが、隆氏の登場で伝奇小説の価値があがったらしい。事実の羅列の情報歴史小説より、とにかく面白い。 |
影武者 徳川家康 隆 慶一郎 著 新潮社 2004/12/14 |
家康が関が原で暗殺されたので、そこからは影武者だった世良田二郎三郎を家康に仕立てて徳川家の安泰を図る・・・という設定に疑問を感じて読むのをためらっていた。だけど、読み始めればさすがに隆氏の代表作といわれるだけあって大長編なのにも関わらず読み切れてしまう。関が原で死んだはずの島左近が生きていたり、左近の命で家康を暗殺したはずの六郎が左近と共に家康(影武者)を助けたり、そこへ風魔一族も加わってワクワクする展開だ。戦乱のない平和な世を作ろうとする彼らが秀忠を相手に心理を読み布石を打っていく。登場人物の魅力や思考の緻密さが面白い。 荒唐無稽な設定だったはずなのに歴史の事実や既存の文書ともピッタリ合わせて見事なストーリーだ。 |
一夢庵風流記 隆 慶一郎 著 読売新聞社 ¥1545 2004/11/4 |
きっかけは少年ジャンプ「花の慶次−雲のかなたに−」。子どものマンガ本でありながら面白いと思っていたらこの本が原作だった。前田利家の甥で前田慶次郎は一流の風流家にして、無敵の浪人。負け戦に出陣して、名を残し、朝鮮へ行き、ケンカや恋をしたり、秀吉と対決したりする傾奇者(かぶき者、バサラ)、実在の人だ。慶次郎旅日記が残っており隆慶一郎がわずかな資料から生涯を書いた。『漢(おとこ)』の生き様がカッコイイと、前田慶次郎のサイトもにぎわっている。 |