その他 感想と紹介B

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捏造された聖徳太子神話
--聖徳太子は実在しなかった
佐治芳彦
日本文芸社



2020/7/31
平成16/10/25 発行
著者ーーー福島県会津若松市に生まれる。1951年、東北学院大学英文学科卒業。1954年、東北大学文学部史学科卒業。編集者を経て、小学館、講談社の百科事典プロジェクトチームに参加。歴史評論家として活躍中。
 著書に「謎の竹内文書」「謎の神代文字」「謎の東日流外三郡誌」「世界最終文明と日本」「日本超古代史の謎」「日本超古代宗教の謎」「太平洋戦争の謎」「太平洋戦争・封印された真実」「封印された『昭和史』30の真実」「石原莞爾の予言」などが有る。「蹂躙された日本史」「龍宮乙姫の謎」も。

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 聖徳太子を神格化した歴史陰謀の実像に迫る。紆余曲折を経ながら、歴史とともに時の権力者により、都合よく捏造されていった「聖徳太子神話」の実像


龍宮乙姫の謎
佐治芳彦
たま出版



2018/3/21
1995/1/15 発行
 アマテラスオオミカミはムーの女王だった。現代の「乙姫さま」としてマスコミにもしばしば登場する、藤田妃見子の知られざる全貌をルポしつつ、その背景にひそむ日本の母なる神・アマテラスオオミカミの受難と復活を浮き彫りにする。 (Bookデータベース)

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 タイトルに惹かれて読んでみたが、がっかりで、途中からは斜め読みというか飛ばし読み。


芥川賞を取らなかった
名作たち

佐伯一麦
朝日新書


2017/9/18
2009/1/30 発行
 第一回芥川賞選評で、「生活の乱れ」を指摘された太宰治。受賞の連絡を受け、到着した会場で落選を知らされた吉村昭。実名モデル小説を「興味本位で不純」と評された萩原葉子…。「私小説を生きる作家」として良質な文学を世に問い続ける著者が、芥川賞を逃した名作について、その魅力を解き明かす。

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 筆者が選んだ名作12作品を、仙台文学館の連続講座で受講者とともに読み直したもの。作品と作者についての解説や名作の所以、読みどころに加えて、当時の選評や同じ選考期の他の候補作品にも触れる。
 太宰治「逆行」
 小沼丹「村のエトランジェ」
 山川方夫「海岸公園」
 吉村昭「透明標本」   など
 
 芥川賞は賞の性格がはっきりしていなかったそうだが、基本的には将来有望な新人純文学作家に与えられるものである。選考委員は見抜く目が必要になる。

 例年と比較すれば受賞レベルには完全に到達していても今日では考えられないような稀に見る激戦区で候補に挙がったり、最終決戦でも三すくみになり「該当作なし」の憂き目に会ったり、選考委員の見る目がなかったという事態だけではなく、やはり運、不運もある。

 著者のそれぞれの作品への解説を読んでいて、あまりわからないのは、私が純文学を好きでないからだと思われる。
 


聖徳太子
本当は何がすごいのか



田中 英道


育鵬社





2017/9/6

2017/7/10 発行
 田中英道(たなか・ひでみち)
昭和17(1942)年東京生まれ。東京大学文学部仏文科、美術史学科卒。ストラスブール大学に留学しドクトラ(博士号)取得。文学博士。東北大学名誉教授。フランス、イタリア美術史研究の第一人者として活躍する一方、日本美術の世界的価値に着目し、精力的な研究を展開している。また日本独自の文化・歴史の重要性を提唱し、日本国史学会の代表を務める。著書に『日本美術全史』(講談社)、『日本の歴史 本当は何がすごいのか』『日本の文化 本当は何がすごいのか』『世界史の中の日本 本当は何がすごいのか』『世界文化遺産から読み解く世界史』『日本の宗教 本当は何がすごいのか』『日本史5つの法則』『日本の戦争 何が真実なのか』(いずれも育鵬社)などがある。

文部科学省が2月に公表した中学校の次期学習指導要領改定案では、「聖徳太子」を「厩戸王」に変更する案が示された。しかし、数多くの批判が寄せられ、改定は見送られた。そもそもなぜこのような改定案が示されたのか? そこには史学界に「聖徳太子不在説」が根強く存在するとともに、聖徳太子の“抹殺"を図ろうとする勢力が存在するからである。 本書では、著者の専門である美術史上の決定的な事実を最大の論拠として、その他、史学・考古学などの様々な論拠とともに、「聖徳太子不在説」を論破する。
同時に、十七条憲法や冠位十二階を定め、中国との対等の外交を展開し、「和の精神」を唱え、神仏習合を図るなど、その後の日本人の基本形をつくり出したともいえる聖徳太子の意義について、易しく詳しく解説する。

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 いまなぜ「聖徳太子」なのか――
◎教科書表記が「厩戸王」に変えられそうになった訳
◎歴史の真実は文字史料だけではわからない
◎太子の「実在」を示す“決定的な発見"
◎法隆寺と太子の謎を読み解けばすべてがわかる
◎「和を以て貴しと為す」に込められた本当の意味
◎「国家」とは何かを示している十七条憲法
◎紙幣の肖像に使われた理由、そして消えた訳
◎日本人にとって聖徳太子とは何か

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銀座開化事件帖

松井今朝子

新潮社



2017/7/29

2005/2/20 発行
 著者(まついけさこ)−−1953年京都生まれ。早稲田大学大学院で演劇を学び、松竹株式会社で歌舞伎の企画制作に携わる。後にフリーとなって歌舞伎の脚色・演出・評論などを手がける。97年『東洲しゃらくさし』(PHP研究所)で小説デビュー、同年『仲蔵狂乱』(講談社)で第八回時代小説大賞を受賞

 三十歳。世を捨てるにはたしかに早い。しかしこの明治の世に、私の居るべき場所などあるだろうか。士族の身でありながら芝居に関わり、御一新後は蝦夷地に渡った変わり種。無為に過ごしていた士族・久保田宗八郎は、兄の求めにより、銀座煉瓦街で暮らすことに。大垣藩主の若様、薩摩っぽの巡査、耶蘇教書店を営む元与力。隣人たちはいずれ劣らぬ個性の持ち主であった。文明開化の発信地で、宗八郎の気骨がいぶし銀の輝きを放つ。
(Bookデータベース)

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 タイトルに惹かれて読んだらがっかりした、という感想をネットで見たが、わたしはかなり面白く読めた。著者の文章もリズム感があっていい。
 明治7年、江戸の名残と文明開化が混在している様子を知ることができて興味が尽きない。
 
 


忘却の生理学
外山滋比古



2017/7/27


嫌われる勇気

岸見一郎
古賀 史健

ダイヤモンド社



2017/7/23
2013/12/12 発行
世界的にはフロイト、ユングと並ぶ心理学界の三大巨匠とされながら、日本国内では無名に近い存在のアルフレッド・アドラー。
「トラウマ」の存在を否定したうえで、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言し、
対人関係を改善していくための具体的な方策を提示していくアドラー心理学

アルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)を、「青年と哲人の対話篇」という物語形式を用いてまとめた一冊(アドラーの著作も多数翻訳している岸見一郎氏と、臨場感あふれるインタビュー原稿を得意とするライターの古賀史健氏。)

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 若い人に向けたものなのだろう。
 この年になって、そこそこ幸せに暮らしているので、本書に書いてあることは既に実践済みとか経験済みのような気がして驚くことはなかった。
 生活の知恵のようなものを理論化しただけのようにも思える。
 そんなにすごい心理学なんだろうか、というのが今の感想。
 


オトナのたしなみ
柴門 ふみ
キノブックス



2017/7/15
2017/1/27 発行
柴門ふみ[サイモンフミ]
1957(昭和32)年、徳島県生まれ。お茶の水女子大学卒。1979年漫画家デビュー

女友達との付き合い方、理想の夫、怒りを逃がす方法…。イタイ経験によって学んだ、柴門ふみのオトナ流儀! 本物の「オトナ」になりたい後輩女子に贈るエッセイ。

目次ーーだって女ですもの(女が年を取るということ;オバサンとオバアサンの分かれ目 ほか)
結婚と離婚のあいだ(結婚は愛か条件か;もしも離婚を考えたら ほか)
オトナのお作法(悪口との上手な付き合い方;苦手な相手の処し方 ほか)
恋の悩みは一生続く?(焦るほど欲しいものは手に入らない;恋愛妄想をかきたてる人 ほか)
本物の「オトナ」論(勝ち負けにこだわらない女子たち;女と、仕事と、子育てと ほか)

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弘兼流
60歳からの手ぶら人生

弘兼 憲史

海竜社




2017/7/14
2016/11/15 発行
弘兼憲史(ヒロカネケンシ)
1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、松下電器産業(現パナソニック)に入社。73年、漫画家を目指して退職し、74年、『風薫る』で漫画家デビュー。その後『人間交差点』で小学館漫画賞、『課長島耕作』で講談社漫画賞、『黄昏流星群』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、日本漫画家協会賞大賞を受賞し、2007年、紫綬褒章を受章

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 弘兼憲史、身辺整理始めました。「常識」という棚にしまったすべてのものを一度おろして、ひとつひとつ吟味してみませんか。そうすれば、きっとこれからの人生に必要なものと必要でないものが見えてくるはずです。

 【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 持ちものを捨てる(60歳とは起承転結の「結」/つまらない「見栄」や「こだわり」があるから捨てられない ほか)/第2章 友人を減らす(本当に信頼できる友が一人いればいい/年賀状、中元・歳暮はやめる ほか)/第3章 お金に振り回されない(老後不安とは、すなわちお金の不安である/お金に振り回されず、生活をサイズダウンする ほか)/第4章 家族から自立する(「家族はひとつ」という幻想を捨てる/家族は理解してくれる、この思い込みが悲劇を生む ほか)/第5章 身辺整理をしたその先に(何はなくとも料理せよ!/60を過ぎたら共働きが当たり前 ほか)

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本当はすごい!
東京の歴史


田中 英道

ビジネス社



2017/7/4
2014/6/1 発行
田中英道(タナカヒデミチ)
昭和17(1942)年東京生まれ。東京大学文学部仏文科、同美術史学科卒業。ストラスブール大学に留学しドクトラ(博士号)取得。文学博士。現在、東北大学名誉教授。フランス、イタリア美術史研究の第一人者として活躍するかたわら、日本美術の世界的価値に着目し、精力的な研究を展開している。また、日本独自の文化・歴史の重要性を提唱し、日本国史学会(平成24年設立)の創設に尽力、代表を務める

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 日本再発見!神話から未来へ富士山が見守る都市・東京の記憶。
第1章 世界が期待する日本人の自然観/第2章 縄文と弥生の融合地点/第3章 神話につづく古墳の時代と東国/第4章 神と仏の時代の豊かな東国/第5章 東国を舞台に台頭する武士/第6章 変遷する江戸の支配者/第7章 大火のあとの新しい江戸/第8章 建国の歴史に立ち戻る幕末/第9章 江戸から東京へ/第10章 二度の惨禍を経た「現代」東京

 江戸以降、関東は栄えてきたと思われがちです。しかし歴史を紐解けば関東、とくにいまの東京のポジションは大変ユニークです。どうやら日本建国の謎は関東にあったとしか思えないのです。 決して九州や関西地域ではなく、関東の地にこそ日本建国の秘密があったことの歴史を検証していきます。

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消された「西郷写真」の謎
斎藤 充功
Gakken



2017/7/1
2014/4/8 発行
さいとうみちのり 1941(昭和16)年東京生まれ。ノンフィクション作家。東北大学工学部中退後、民間の機械研究所に勤務。その後、フリーライターに。主に、歴史、国家、情報といったテーマを中心にルポを執筆している。『昭和史発掘 幻の特務機関「ヤマ」』『刑務所を往く』など著書多数。

       *    写真がとらえた禁断の歴史

 西郷隆盛は写真嫌いで写真を一枚も撮らなかった…「西郷の写真は存在しない」というのが定説である。だが、過去に「これぞ西郷の真正写真!」と喧伝された写真が数多く存在するのはなぜか?それらの写真をつぶさに検証した筆者は、法人類学の権威である東京歯科大学・橋本正次教授に鑑定を依頼した。はたして、西郷の真正写真は存在するのか…そして、西郷の写真は、なぜ“消された”のか…写真をめぐる歴史ミステリー―(Bookデータベース)

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将軍慶喜と幕末の風雲
古川 薫
文芸春秋


2017/4/9
平成10/5/10 発行


幕末三舟伝

頭山 満 述
 武 劉生 筆

国書刊行会



2017/3/14

平成19/11/30再編集 
(昭和5/5/1発行)
頭山 満ーーー1885〜1944.アジア主義の立場でナショナリズム運動を行った思想家・政治家・実業家・篤志家。

江戸無血開城の立役者・海舟の智、泥舟の意、鉄舟の情。武道と禅の修養が江戸百万の市民を救う。明治元年春、百万の江戸市民を戦火の危機から救い出した三人の幕臣、勝海舟高橋泥舟山岡鉄舟(三舟)の、維新前夜の死を賭した活躍を生き生きと活写。(Bookデータベース)

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 頭山満というのは右翼の大物でヤバい人…というイメージだったが、本書を読むとそんなことはない。
 頭山はまるで講釈師のように三舟の人物と生き方を闊達に喋っている。本当にこのようにしゃべったのか書いた人が上手いのかはわからないけれど。

 江戸が無血開城されるまでに関わった者たちの思いや緊迫感、これが成し遂げられたのは奇跡としか思えない。彼らのような肝の据わった者なればこそだ。薩長史観の中で隠れてしまった多くの真実を言い残しておかねばと思ったのだろうか頭山氏は。

 現代向きに編集してくれたのでかろうじて読めるが、難しいけれど名文でリズムがあって非常に面白かった。海舟のことが多いが、地味だが働きの大きかった泥舟や鉄舟の凄さも語られている。
 勝海舟には西郷がいたが、河合継之助には西郷がいなかった・・・・・だから徳川家と違って悲劇に進んだというのもよく分かった。三舟だけでなく南洲も含めて江戸を守った人たち。


迷宮

中村文則

新潮社




2017/2/26

2012/6/30 発行

著者ーーー1977年愛知県生まれ。福島大学卒業。2002年、『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。2004年、『遮光』で野間文芸新人賞、2005年、『土の中の子供』で芥川賞、2010年、『掏摸<スリ>』で大江健三郎賞を受賞。2012年、『掏摸<スリ>』の英訳が米紙ウォールストリートジャーナルの年間ベスト10小説に選ばれる。2014年、アメリカでDavid L. Goodis賞を受賞。
 その他の著者に『悪意の手記』『最後の命』『何もかも憂鬱な夜に』『世界の果て』『悪と仮面のルール』『王国』『迷宮』『惑いの森〜50ストーリーズ』『去年の冬、きみと別れ』がある。

 胎児のように手足を丸め横たわる全裸の女。周囲には赤、白、黄、色鮮やかな無数の折鶴が螺旋を描く――。都内で発生した一家惨殺事件。現場は密室。唯一生き残った少女は、睡眠薬で昏睡状態だった。事件は迷宮入りし「折鶴事件」と呼ばれるようになる。時を経て成長した遺児が深層を口にするとき、深く沈められていたはずの狂気が人を闇に引き摺り込む。善悪が混濁する衝撃の長編。 (Bookデータベース)

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 純文学って何だろう。いろんな賞を受賞している。そんなに凄いか?
 純文学って自分探し・・・・かつて自分探しをしていた若かった作家が今度は審査員になって同じような若者に賞を与えている。類は友を呼ぶ、同じような作家を再生産しているようなイメージだ。

 この作品は、多少ミステリーもどきになっていたので最後まで読んでみた。終わり近くになって、謎の部分の示し方は面白みに欠けるし、つまらない。
 影響を受けたり、好きな作家は、太宰治、大江健三郎、村上春樹だというから、私とは合わないはずだ。
 心の中に、悪を持った人間を書き続けているらしい。だから内容が暗い、好きになれない。


明治維新という幻想

暴虐の限りを尽くした
新政府軍の実像

森田 健司

洋泉社



2017/2/23

2016/12/20 発行


 封建的な江戸時代! 開明的な明治時代! 教科書で学んだ進歩する歴史像≠ヘ、本当に正しいのか?幕末・明治維新150年を迎えるにあたり、歴史を再検証する!

◎世の中の常識
 幕末、国内では一揆や騒乱が頻発し、海外からは列強が開国を求めてやってくるなど、幕府はその対応に苦慮した。もはや幕藩体制は限界を迎え、明治新政府の登場は必然であった。

◎本書の核心
 平和で豊かな江戸文化・道徳を否定した明治新政府軍は、非道な方法で戊辰戦争を勝ち抜いた。開明的で希望あふれる明治の世≠目指したという彼らの正体を、民衆が作った「諷刺錦絵」や旧幕府軍側の視点を通して検証する。(Bookデータベース)

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 西郷隆盛の人物像に疑問を感じて、この時代のものを読んでいる。西郷隆盛は数々のテロ行為などが語られている何故違和感があるのかをこの著者は示していた。私の探していたものを。
 西郷隆盛が西南戦争で「錦の御旗」に反した朝敵であり、また、数々のテロ行為などが語られているのに、なぜ銅像になったり、大赦を受けて官位まで授与され、現代では「人懐っこい西郷どん」という「イメージ」が作られたか…反政府の象徴としての英雄のイメージをそぐために軍服姿ではなく着流しにしたり、犬を連れたりさせた。イメージ戦略は大成功だ。
 


最後の秘境
東京藝大
天災たちのカオスな日常

二宮 敦人

新潮社



2017/2/21
2016/9/15 発行
入試倍率は東大の3倍!卒業後は行方不明者多数?「芸術界の東大」の型破りな日常。

才能勝負の難関入試を突破した天才たちは、やはり只者ではなかった。
口笛で合格した世界チャンプがいると思えば、
ブラジャーを仮面に、ハートのニップレス姿で究極の美を追究する者あり。
お隣の上野動物園からペンギンを釣り上げたという伝説の猛者は実在するのか?
「芸術家の卵」たちの楽園に潜入、全学科を完全踏破した前人未到の探訪記。

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 著者の奥さんが現役の藝大生。一緒に暮らしていく中での、あまりに不思議な暮らしぶりに興味を持ち、妻を案内役としてキャンパスへ足を踏み入れた。
 それぞれの学科で3名ずつくらいを紹介している。皆さんが気持ち良く取材に応じているようだが、妻の案内、というのが効いているのかな。

 おしゃれとハイヒールの音校とジャージの上下の美校のあまりの違い、ステージに立つことが前提と汚れながら制作する者との相違が面白い。
 どこの科も誰のエピソードも面白い。
 
 まんざら知らない世界でもなかったので、納得しつつ読んだ。


エウレカの確率
経済学捜査員 伏見真守

石川 智健

講談社



2017/1/31
2014/3/13 発行
 川崎市高津区で連続殺人事件が発生した。所轄署に県警その他の応援を加えた総勢100名を超える特捜本部は、次の犯行を防ぐべく捜査を開始した。現場に残された証拠品や犯行手口からして、捜査本部は同一人物の犯行と断定していた。だが、ひと月が経っても殺人犯は捕まらず、それどころか解決の糸口さえ見つからない低調ぶりだった。
 そんな折、疲労感漂う捜査本部に新たな捜査員が加わることになった。一人は科学警察研究所から来たプロファイラーの盛崎。そしてもう一人は、捜査員としては本邦初と思われる行動経済学者・伏見真守だった。伏見は経済学を駆使して独自の捜査を開始する。盛崎のプロファイリングによって捜査は進展を見せ始めるが、同一犯人説が大勢を占める中、伏見は独り、3件の殺人のうち1件は別の人物の犯行であることを主張する。
 経済学者VSプロファイラー。真犯人にたどり着くのはどっちだ! (Bookデータベース)

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 アルキメデスが浴場で浮力についての原理を発見し 、裸のまま飛び出して「エウレカ!」と叫んだ とされる「発見した」とか「発見する」という意味

  警察物としては新しい試みか?経済学捜査員、なじみのない用語を使っているが、事件で一番得をした人がまず疑われるのは経済学で考えなくても常識じゃないか・・・・と思ってしまう。
 キャラクター設定も推理の進め方も、犯人の予想がついてしまったし、いまいちかな。
 
 


坊ちゃんのそれから
芳川 泰久
河出書房新社



2016/12/31
2016/10/20 発行
 愛媛の中学教師を辞めた坊っちゃんは東京に戻り、不動産会社、印刷工、街鉄(今の都電)の運転手を経て、保安関係の刑事になる。一方、山嵐は群馬の牧場勤めから富岡製糸場の寮の監督になるが、ストライキに関わったとしてクビになると、東京に出てスリで生計を立てつつ、片山潜や幸徳秋水と出会い、社会主義に惹(ひ)かれていく。追う者、追われる者という対立関係の中で、二人は大逆事件に巻き込まれ、意想外な形で支え合うことになる。

 明治後期が現代に感じられるほどの臨場感を読者に与えてくれる。例えば、日比谷焼き討(う)ち事件のくだり。日露戦争でナショナリズムを極限まで高揚させた民衆は、勝利したのにロシアが賠償金も払わなければ大幅な領土割譲もないことに激怒。実際には、膨大な戦費が捻出できなくなり、長引けば戦力に勝るロシアが有利という状況で、日本政府はその講和条件を呑(の)むしかなかったのだが、勝利に酔い痴(し)れる世間は許さない。日比谷公園に集まった大群衆は暴徒と化し、交番や内務大臣邸、街鉄を焼き討ち。街鉄運転手の坊っちゃんも被害にあい、見物していた山嵐が行き合わせる。
 評者:星野智幸(小説家)による
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 坊ちゃんのそれまで  として漱石の坊ちゃんを要領よく簡潔にまとめているのはさすが!
 ではあるが、その後、というにしては違和感があった。この時代はよく描かれていたが・・・・。
 マドンナが吉原に?  おかしいでしょう。
 中学教師をしていた人が掏摸になるっていうのも、不可解。
 坊ちゃんの登場人物を利用した、全く別の物語に過ぎない、続編ではない。
 


西郷隆盛と明治維新

坂野 潤治

講談社現代新書



2011/11/22
2013/4/20 発行
日本近代史の第一人者が、日本を近代国家に導いた人物を描き出す!
征韓論、西南戦争……、「軍部独裁と侵略戦争の元祖」はつくられた虚像だった!幕末期に「議会制」を構想し、封建制の打破に尽力し、江華島事件を卑劣と非難した、幕末維新の巨人の実像に迫る一冊。

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 西郷といえば「征韓論」だが、実際は違うという。西郷が主張したのは、自分が使者として朝鮮に行って開国を説得しようとしていたのだ。
 一度は使者になることが決まっていたが、取り潰された。新政府に愛想をつかし、薩摩に帰った。
 どうしてもっと新政府の中に留まれなかったのか。

 薩摩に帰って「私学校」を作り兵士を育てる。それは内乱のためではなく、北からのロシアや南からの台湾の圧力に備えるためだった。

 西郷が近衛兵を自由にできることを恐れた新政府の誰かが、西郷を陥れたのではないか。
 政府に挑発され暴発した若い軍隊を西郷は引き受けざるを得なかった。西郷にとっては不本意な大義のない戦い・・・・。

 なんという人材の損失か?
 西郷だけでなくこのせいで大久保が暗殺されてしまったのかもしれない。


午後の刺客
西郷隆盛と延岡戦争

早瀬 利之
光文社



2016/10/19
2006/1/23 発行
 著者ーーー昭和15年、長崎県生まれ。昭和38年、鹿児島大卒業後に上京。雑誌記者、編集長を経て昭和55年に文筆業へ。「三田文学」「オール読物」に小説発表。「タイガーモリと呼ばれた男」で第二回ミズノスポーツライター賞受賞

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 薩軍同士が骨肉をわけて戦った明治10年夏の西南戦争・延岡戦の実相―大久保利通と西郷隆盛の決裂に懊悩し、和睦の糸口を探る政商・五代友厚と西郷軍に助成すべく奔走する大阪の船主・吉井英介を主軸に繰りひろげられる

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 明治元年、上野の彰義隊を強行突破して崩滅させた大村に対し、西郷は江戸城無血明け渡しに応した幕府側、及び江戸市中の治安に協力した彰義隊を、これ以上攻撃することには反対だった。----
 大村が陸軍の実権をにぎれた要因は、西郷が国政を投げ出して、二年六月五日、浦賀港
から鹿児島に帰ってしまったことにある。ーーー

 大阪に「西郷死す」の報せが入ると、吉井はその日の夕方、五代に
 「才助よ、なんで大久保に、殺すなと言えんかったのだ?」
「言いもした。何度も言いもした。しゃっどん、大久保どんは、手おくれちゅうて、間きもうさん。山県にまかせとるちゅうて‥‥」ーーー

 小説では、吉井が大久保の暗殺を依頼したかのように書いていたが・・・・・・・・。大久保は勘違いで殺された?

 西郷は直接会えばとりこになってしまうほどの魅力のある人物だったそうだ。
 大久保と西郷の意見の相違がこれほど大きな隔たりになっていくとは。大久保も西郷もいなくなったら長州がますます傲慢になったのだろう。


器量と人望
西郷隆盛という磁力

立元 幸治

PHP新書




2016/10/17
2010/1/29 発行
 著者(たちもと こうじ)ーーー1935年、鹿児島生まれ。九州大学卒業後、NHK入局。主に教養系番組の制作に携わり、チーフプロデューサー、部長、局長などを務める。主な制作番組に「特集・大学の未来像」「イメージの時代」「情報と現代」「近世日本の私塾」「明治精神の構造」「日本の政治文化」など。NHK退職後、大学・短大で「メディア論」や「現代社会論」などの研究と講義を担当する。
 著書に「転換期のメディア環境」「『こころ』の出家」「『こころ』の養生訓「誰がテレビをつまらなくしたのか」など。

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 幕末維新の立役者と讃えられ、多くの信望を集める西郷隆盛。しかし、その実像には、無謬の英傑あるいは完璧な人格者とは言い難い一面もある。「無私と野心」「勁(つよ)さと弱さ」「度量と狭量」「忠心と逆心」など、一見矛盾とも思われるその内面や行動の二元性、相対性に着目。平板な英雄像を超えた人間西郷をあぶり出す。特に、主役として活躍し、脚光を浴びた時期ではなく、「野」にあった時期、つまり、長きにわたる南島での潜居、流島の時期、明治六年政変後の下野の時期にも焦点をあて、この時期の重要性と意味を探っていく。さらには、西郷が残した二百首に及ぶ詩を手がかりに、これまで語られることのなかった素顔に迫る。武断派、政略家、英傑、巨人というイメージとは違う、西郷のもう一つの顔が見えてくるはずだ。それは、心優しき詩人としての一面である。かつて政権交代を遂げた男が本当に語りたかったこととは。無視と野心の狭間で生きる指導者の苦悩を活写した渾身作!

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 有名で人気の高い西郷さんは、本当に偉大だったのか?どうしても不可解で信じられなかったので読んでみたが、詩をてがかりに西郷さんに迫っていくので、詩のわからない私にはやや難しかった。
 私の知りたかった部分は、あまり触れてはいなかったようだ。

 維新という大事業の達成の背景には、さまざまな要因と人材の活躍があるが 原口泉氏(日本近世 近代史)は、その中核を担つた薩摩藩勢をサツカーのティームに譬え、島津久光というオーナーのもと 西郷隆盛というスタープレイヤーと、大久保利通という司令塔、そして家老小松帯力という監督らの いわば総合力が発揮されたーーーといい例えは面白く分かりやすい。


村に火をつけ、白痴になれ

伊藤野枝伝

栗原 康

岩波書店





2016/9/17

2016/3/23 発行

 栗原 康 (クリハラ ヤスシ)  ーーー1979年、埼玉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科・博士後期課程満期退学。東北芸術工科大学非常勤講師。専門はアナキズム研究。著書に、『大杉栄 伝―永遠のアナキズム』(夜光社)(第5回「いける本大賞」受賞、紀伊國屋じんぶん大賞2015第6位)、『はたらかないで、たらふく食べたい―「生の負 債」からの解放宣言』(タバブックス)(紀伊國屋じんぶん大賞2016第6位)などがある

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 ほとばしる情熱、躍動する文体で迫る、人間・野枝。筆一本を武器に、結婚制度や社会道徳と対決した伊藤野枝。彼女が生涯をかけて燃やそうとしたものは何な のか。恋も、仕事も、わがまま上等。お金がなくても、なんとかなる。100年前を疾走した彼女が、現代の閉塞を打ち破る。

 伊藤野枝……いとう・のえ[1895-1923] ◎ 大正時代のアナキスト.ウーマンリブの元祖ともいわれる.   ◎ 福岡県に生まれ,14歳で一念発起し,上京.上野高等女学校に進学.卒業後,決められた縁組により地元で結婚するが,婚家を出奔し,女学校の恩師であった 辻潤と暮らしはじめる.雑誌『青鞜』編集部で働き,平塚らいてうについで20歳で編集長に.セックス,中絶,売買春といったテーマから,人間の尊厳や生き 方を問いなおす記事を書く(「貞操論争」「堕胎論争」「廃娼論争」).辻とのあいだに2人の子どもをもうける.   ◎ 大杉栄と出会い,21歳で大杉・妻・恋人との四角関係に身を投じる.大杉の気持ちが野枝に大きく傾くなか,恋人・神近市子が大杉を刺す(葉山日蔭茶屋事 件).事件後,大杉との絆を深めた野枝は,5人の子を産み育てながら,『青鞜』休刊後も評論や翻訳など旺盛な執筆活動を繰り広げる.関東大震災の混乱に乗 じた甘粕正彦ひきいる憲兵隊に,大杉・甥とともに虐殺される(甘粕事件).享年28歳.

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 事実だけを述べる伝記と違って、著者の思い入れの濃い、読みやすい文体の評伝。
 野枝のような人が身近にいたら、振り回され迷惑をかけられ嫌だろうと思う。でも、そういう人だったからこそ古い因習を破る力があったのだろう。


覚悟の人
小栗上野介忠順伝
佐藤 雅美
岩波書店


2016/8/27
2007/3/20 発行
 黒船の来航以来、高まる外圧と倒幕勢力の伸長により瓦解寸前の徳川幕府を支えた男がいた。その名は小栗上野介忠順。小栗は対ドル為替レートの不均衡や、相 次ぐ賠償問題を含む外交ばかりでなく、財政再建や軍隊の近代化にも獅子奮迅の働きをみせた。しかし、その小栗をも飲み込む時代の大きなうねりが押し寄せて いた―。自らの信念と使命に殉じ、日本近代化の礎を築いた幕臣の姿を鮮烈に描く歴史ドキュメント小説。「Bookデータベースより」

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 幕臣には随分と優秀な人たちがいたことがわかる。でも、幕府の中心に近い人に、無能な人がいるとせっかくの忠言も生きてこず、むしろ疎まれて罷免される。ところが、困ったことが起きると思い出されて任命され、苦労した挙句、また苦言を呈したあたりで罷免され・・・・・・それを繰り返されたのが小栗上野介だった。
 読みながら上司の老中などに腹が立ってくる。
そして、それの最たるものが徳川慶喜だったとは!
 「慶喜は自己を飾ることと責任を回避することに終始した卑怯者である。世にこれほどの卑怯者は珍しい」と手厳しい。
 幕府の中心人物たちは平和ボケだったのかなあ。

 
 



吉田松陰と松下村塾の秘密と謎
中見 利男
宝島社




2016/1/28
2015/1/29 発行
 中見利男 : 1959年、岡山県生まれ。作家、ジャーナリスト。該博な知識と徹底した取材力、そして斬新な視点を駆使し、ドキュメンタリー、評論、解説 書など数多く手がける。伝奇時代小説『太閤の復活祭―関ヶ原秘密指令』が「2001年度の本の雑誌が選ぶ総合ベスト10」で第7位にランクイン

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 本当は、とても恐い!松陰とその門下生たち。密航、殺人教唆、海外への侵略思想、天皇への脅迫、要人暗殺などのテロ計画…過激な革命家・松陰の実像と、薩長連合、明治維新に隠された松下村塾の南朝革命計画!!その裏で暗躍した伊藤博文の正体は暗殺者だった!?

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明治維新〜太平洋戦争まで
蹂躙された日本史
日本はいかに西欧列強の脅威を克服したか


佐治 芳彦




2016/1/26
平成10/10/25 発行
 著者ーーー会津若松市生まれ。北海道小樽市にて幼少時を過ごす。1951年東北学院英文科卒業、54年東北大学文学部史学科(日本史)卒業。商社マン、編集者を経て、小学館、講談社の百科事典チームに参加。後にフリーライター。現在は古代史から現代史まで幅広い分野で活躍中。
 著書に、『謎の竹内文書』『東日流外三郡誌の原風景』など古史古伝関係、『石原莞爾――天才戦略家の肖像』『日米百年戦争』『太平洋戦争の真実』など現代史関係など多数。翻訳に『人工人間――生物学革命の驚異』がある。 

 明治維新から太平洋戦争にいたる日本近代史を見直し、数々の外圧の危機を克服した先人達の手腕と決断をつぶさに検証する。今の日本の現状を立て直す知恵はあるか。(データベースより)

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