2005年度 栞 記録

読書会 栞 Top

4/21 文学散歩  井上靖文学館 クレマチスの丘 他
5/18 新田次郎を読もう
6/15 三崎 亜記      「となり町戦争」
7/20 ヘミングウェイ    「老人と海」
8/31 東野 光生      「補陀落幻影」&「似顔絵」
9/21 池井戸 潤   「果つる底なき」がお薦め   
10/19 小川 洋子      「博士の愛した数式」
11/6 公民館祭り 活動記録展示
11/16 井上靖        「風林火山」
12/21 帚木 蓬生  「三たびの海峡」「総統の防具」がお薦め
1/18 野沢 尚  「魔笛」「恋人よ」がお薦め
2/15 姜尚中 東京大学教授  「在日」     12名出席
3/15 反省と次年度計画    山本勘助の墓へお参り&食事会

4月

文学散歩     井上靖文学館


5月                   戻る

読書会       記録                  2005年5月18日
テーマ   新田次郎の作品を読もう

(明治45年−昭和55年 旧・上諏訪町 角間新田生まれ)
ペンネーム   出身地の上諏訪角間新田出身の次男という意味
 本名は藤原寛人。藤原咲平の甥。旧制諏訪中学、無線通信講習所を卒業後、中央気象台等勤務。富士山頂への測候所建設時の担当課長。現職中から、執筆活動を開始、山を舞台に数多くの名作を残した。白馬岳山頂へ巨石を運び上げる強力の悲劇を描いた『強力伝』では、直木賞を受賞。吉川英治文学賞受賞。作品のいくつかは映画化されている。

  1932
年  中央気象台入所  富士山測候所 勤務 満州国観象測候所 勤務 など
  * 無線ロボット雨量計の発明で  運輸大臣賞を受賞。
  1966
年  退職

M・I 芙蓉の人
 今回は本を読んできませんでしたが、若い頃読んだ本を思い出しました。明治28年、冬の富士山頂で気象観測を行う夫妻のお話です。よくできた奥さんだと思いました。
M・I 孤高の人
昔、たくさん読みました。文章も骨組みがしっかりしている。まだ覚えている箇所もありました。
再度、読んでいます。若かりし頃読んだ時の新鮮さ(文章的)は変わりないのですが、内容の追求のしかたが現在の年齢のように現実的に考えてしまった気がします。さん、さんの感想を聞き、二〇代の頃は、感じなかったのですが、再度読み直してみると、二人と同じような感情が私にも・・・年とったのかなあ!
R・K 雪のチングルマ、アラスカ物語
 インターネットで出してもらった、作品名が354冊。まだ、整理途中とのこと、おどろきました。人間の一生の間に出来る仕事の多さに感心し、読んだ作品が一つ一つ現実感を持って迫ってきた事が思い返されました。山の言い伝えや山男の起きて、山での死、それぞれこういう書き方があるのかと思い面白く読みました。
M・K 神々の岩壁・蒼氷・疲労凍死
 新田次郎の本はあまり読んだことがなかったのですが、感激しました。その描写の適格さに、ついつい一気に読ませていただきました。「蒼氷」は山の描写がすごいと思いましたた。「疲労凍死」では次々男性を死なせてしまう女性の描き方が少し気になりました。一番良かったのは「神々の岩壁」で、実在の天才クライマー南博人を描いています。「なぜ山に登るのか」がくり返され、人生とは何かについて考えることに通じると思います。
T・S 銀嶺の人
 場景描写から人の内面を想像させる地の文に感心しつつ、その一方で上流の方々の日常会話の言い回しに慣れなくて、読み飛ばすというよりは、いちいち立ち止まって反芻してしまうような各駅停車の読み方をしています。情熱にかられて一生懸命な人の話を、ゆっくりゆっくり味わっています。
 ロッククライミングにのめりこむ描写、つき動かされる気持ちが好く書けています。
H・T 銀嶺の人
 私の好きな小説家、新田次郎という事で久しぶりに読みました。昔は、たくさん読みました。実在の女性登山家二人をモデルにした本ですが、私は「若林美佐子」の方がていねいに書き込まれているようで、引き込まれていきました。最後は若林さんは山で死ぬことになりますが、その場面の描写も印象深かったです。
出てくる女性の個性が強いのが印象に残っています。
H・T 火の島、怒る富士  
 鳥島の気象観測所で、頻発地震が起き、残って観測すべきか、危険だから撤退すべきか、という状況になり、男の仕事のすごさを感じました。
 孤島の中での気象観測をする男の世界をしみじみと読み、感銘をうけました。今ではテレビ、ラジオ等で天気予報を簡単に、あたり前の様に聞いているが、その裏の大変さを痛切に感じる本だった。もう少しいろいろと新田次郎の本を読んでみたいと、皆さんの書評をきいて思いました。
M・M 縦走路、弧愁
 新田次郎の作品を読んで、といってもまだ途中ですが、新田次郎さんの作品をもっと読んでみたいと思いました。山登りについてが多いですが、他の作品から読んで、言ってみたいです。皆さんの話が聞けて良かったです。

 「弧愁(サウダーテ)」幕末を扱った未完の作品、サウダーテはポルトガル語で「不在の愛」。 
J・Y 孤高の人、八甲田山死の彷徨、アイガー北壁
 家の本棚で20年以上見続けていた本を、今回の機会でやっと読むことができました。自然は、時には人に優しく、厳しく、人間の思い通りにはならないから、自然の中でいかに上手く生きていくべきかを再認識する機会を持てれました。登山は体力、精神力、知識、いろいろな物が必要なスポーツだなと思います。でも、身内に山好きがいても、私は山登りは好きになれません。
 新田次郎は下積みの努力する人に的を当てているので努力する人が好きなのだと思います。
T・Y 望郷
 新田次郎の作品「豆満江」を読んで何故か戦後満州から引き揚げてきた部落の人や祖母の実家の甥のことが突然思い出され、当時両親や私自身の気持ちと申しますか、心の淋しかった事も思い出しました。
N・W 富士山頂
 久々に懐かしい作家の本を読む事ができました。再読したわけですが、あまり印象に残らないものでした。(読んだ作品が悪かった?)富士山頂にレーダーを建設する時の話です。気象台をやめてから山の本を書き出しています。
Y・Y 孤高の人
 「孤高の人」を読んで山岳小説に目ざめた人、登山の世界に入った人が少なくない。影響力の大きい作品で、加藤文太郎像はこれによって決定されてしまった。一人は、ふるさとに記念館が作られる。もう一人は、将来のある天才登山家を若くして遭難にいたらしめたといわれることになる。人物をご都合主義で作っていると思う。加藤の「単独行」と読み比べて感じた。実話でなくただの小説だったら、すばらしい主人公だ、山の描写がすばらしい、という感想になったと思う。


                              6月                    戻る

読書会    記録                 2005年6月15日
となり町戦争   三崎 亜記
S・M  
何と言っていいか分からない。うまく言葉に出来ない。作者が女性だと思いながら読み始めたのでなじみにくかった。とにかく変った本だ。みえない戦争のことがどうしてもわからなかった。日常のできごとを考えられないような視点でとらえていることには脱帽しました。
H・T
となり町戦争を読み終えて私は理解出来ず本当に困った。如何に読解力の無さをしみじみ感じたが、今日の「しおりの会」で皆さんの話を聞き、本当に勉強になった。戦争を体験した者には生易しいものではないと思うが皆さんの話を聞いてしみじみと平和と言うことを考えさせる今日の半日であった。とても有意義な時を過ごした事を有難く思っています。もう一度読み返してとも思っている。
M・K
この作品を一通り読んでいきましたが、何をうったえているのか・・・・・この作品の心棒というのは何か・・・・私にはピンと来ませんでした。小説すばる新人賞を受賞し、諸先生方のお褒めの言葉のあるこの「となり町戦争」は私のように戦時の真ん中を生きてきた者にとっては「ふざけるな」と言う気持ちがありました。帯の言葉にあるように白昼夢と思って読めばいいのかと思いました。でも、若い方の話をお聞きしているうちに、なるほどなー・・・・と思う言葉がありました。私の読みが浅かったかな・・・と考えた部分も多々ありました。もう一度、ゆっくりと読んでみます。
M・M
 わからないけど「ふーん」と思う。そして、もしかするとありえるかも、と感じた。
 「となり町戦争」を読んで最後は空想の世界と考えながら進めていって、でも今の現実こんな事もあるのかと思ったり。そして、今の若い人たちは、コミックでの「最終兵器彼女」というのも人気だそうです。若い人たちが戦争に対しての気持ちがゲーム感覚なのか?とおもいました。
K・I
となり町との戦争がどんな形で行われるのか興味を持って読み始めたので、一気に読む事が出来たが、内容は充分理解出来なかった。具体的にどんな戦争になるのかとその記述を期待した。それがなかったので何を言わんとするか理解出来なかった。皆さんの意見を聞いてもう一度読み直したいと思います。
T・Y
私の最も苦手な小説でした。
M・K
 こういう本が出たということは日本の作家も成熟してきたのだと思う。わけの分からないことを分からないように伝えていて、すごい。
 最近の若い子は現実を見ない

となり町戦争を拡大図でとらえると現実として姿を見せる気がしました。これからの世界に新しい文化、価値観がしっかり構築されなければ、方向を見失う気がしました。
R・K  
 最近の若い人は、戦争の悲惨さを訴える展示物を前にして、見ても見えないのか、見ても感じないのか、もどかしい。
 こんなお役所仕事を具体的に描いて、こんなものが小説になるのかと驚いた。よく分からなかったが、不思議の国のアリスを連想して、童話みたいに読めばいいのかなと思ったり、白昼夢だと思って読めばいいのかとも思った。
 「戦争とは」と考える自分は、感情的に「反対」と言えるつもりでいるが、「となり町戦争」を読んで、恐さを感じるまでいたらなかったという事で、皆と話し合う事の良さを再確認!!感謝。
N・W  
 お役所仕事に皮肉と風刺を感じた。戦争はいけない、と言えますか、と問題提起しているのではないか。特殊な中での恋愛小説でもある。
 読書会で皆さんの意見を聞いていく中で、この本の内容を再吟味し、考えを深めることができました。やはり、一人で読んでいるだけでは読みは浅くなるなあと実感しました。知らない間に為政者達の都合の良いように社会が動かされていく恐さを私達はしっかり感じ、そして一人一人が自分の考えを持っていかなくてはいけないと思いました。
J・Y
「となり町戦争」は、私にはちょっと不思議な疑問の残る内容の物でした。
 戦争というのは、自国の利益の為に外国とするものという認識をもっていた私は、いったい何のために戦争するのか、また、武器などの調達はいかなる方法、予算でやったのか。法治国家であるのに国や都道府県は、この町どうしの戦争≠ネるものをどう見ていたのか、深く考えると納得いかないところがあります。
 本当に戦争とまでは行かないまでも、ケンカにしてもとなり町どうし国の中は仲良く団結していかないと、外国からもいつ危険な目に合わされるか不安なこの時代、少しは考える所がありましたが、何か現実感が湧かないのが残念な読後感です。
 この本と前後して数冊戦争に関したものをいろいろ読みました。これらの本では現実感があり、例えば、全てが事実でなく創作の部分があったとしても、私には学ぶことが多くあった内容でした。「戦争」とは、悲しく痛ましいものであり、決して軽はずみで始めてしまうものではなく、これを次の世代にも伝えていかなければという、作家の気持ちが伝わったような気がします。
 「となり町戦争」には、そこまで私の気持ちを動かすものはありませんでした。作者が何を伝えようとしているのか今ひとつ私には受け入れる器がなかったようです。
T・S
ほんとうに奇妙な展開です。なぜ???と疑問に思うことが次々でてきます。最後まで読んでもそれらの?は解消されないのでかなり消化不良の気分です。そのわけのわからない気分こそ主人公が味わっている「戦争」に対する感覚に近いのではないでしょうか。
「まぁいいや」と言うノリで過ごしているうちに、自分が加害者になり被害者になる。合法的に殺人ができるのは戦争と刑罰であり、形として民主的に参戦が決められたらもはや既定のこととして世の中が進むのは、まさに今現在の状況です。
私には荒唐無稽な話だとは思えないのです。
他国に出向いてしかける戦争とテロ、一方が支持され他方が糾弾される理由が私にはわかりません。しかし、見方を変えれば、ともに戦う理由をもち周到な準備の上になされていることです。
「となり町戦争」はこのままでは戦争不感症人間が増産され、その結果が「広報」だ、と予告しています。作品として完成されていないけれど、自分で咀嚼し何とか栄養にしなくてはという気持ちで読みました。
Y・Y
はじめの設定(発想)が面白かったので、どのようにまとめていくのかを期待して読みました。
 戦争についての説明会場の様子は、あまりにも平和ボケしていて戦争していても認識できない様子を皮肉たっぷり逆説的に描いていて上手いと思いました。
 こんなのは戦争じゃないよ、と言われる他の方の感想から連想したのですが、「戦争とは建物が破壊されたり、目の前で人が、或いは自分が血を流すものである」そう思い込んでいる人に対しては、政府は気づかれずにいくらでも戦争を起こし、その費用を他の名目で集めた税金で賄えるでしょう。
 戦争は何の為か、軍事ビジネスがある以上理由はいくらでも作れます。現にアメリカはそうです。
 生活に忍び込む、実感のない戦争の真の恐さを教えてくれたと思います

となり町戦争


7月                    戻る


ロシアのアニメ作家 アレクサンドル・ペドロフ
http://www.imagica.co.jp/VW/LF/oldmansea/
読書会 栞 記録                   2005年7月20日
    テーマ            「老人と海」   ヘミングウェイ
 キューバの老漁夫サンチャゴは、長い不漁にもめげず、小舟に乗り、たった一人で出漁する。残りわずかな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかった。四日にわたる死闘ののち老人は勝ったが、帰途サメに襲われ、舟にくくりつけた獲物はみるみる食いちぎられてゆく・・・・。徹底した外面描写を用い、大魚を相手に雄々しく闘う老人の姿を通して自然の厳粛さと人間の勇気を謳う名作(裏表紙紹介)
M・K
 老人となっても老人と呼べない程、力強く生きる姿は驚くべき生命力です。孤独な人が死を目前に生き抜く姿は現在に置き換えると多くの困難を感じてしまいますが、孤独の在り方の違いでしょうか。
J・Y
 老人と少年の心の交流を通して、老人のプライドと孤独をよく表現していると思いました。アメリカ社会へのブルジョワジーへの反発心も、老人の忍耐強い姿に見ることができたようにおもいます。学生時代にも読みましたが、暗いような老人の話だなと思っただけのように思います。自分の年齢が重なり、少し年寄りの気持ちがわかってきたのかな、と思いました。
M・I

 老人と海という題名でも、老人と言うイメージが無く、海へ出てからも魚との戦いの中で
「家のベッドの中で寝ていたほうがよかった」と思い、後悔しながらも、がんばっている所に、分かる、分かると共感しました。

N・W

 世界の名作「老人と海」を読むことができて、まずそれを感謝。なかなか一人では手にしない作品である。漁師として誇りを持って与えられた状況の中でベストを尽くす貧しく孤独な老人。四日間のサメとの死闘を通して作者ヘミングウェイの理想とする男性像を描いた――という事を皆さんのお話を聞く中でわかった。だから読書会は素晴らしい。これも感謝。

M・M
 老人が海に出て漁をする少年への思いが伝わってきて良かったです。でも老人が一人で漁に出てマグロをつることが出来、またサメに次々におそわれるけど、そのすごさなど、ヘミングウェイならではのタッチだと思いました。
S・M 

長年見つづけてきたライオンの夢が、いつのまにか見れなくなった。四日間のカジキマグロやサメなど自然の厳しさを自ら受けとめたサンチャゴ、再びライオンの夢を見る。老人のことを思いやる少年が又いい・・・・。日本文学にないアメリカ文学の良さを知りました。

R・K
 海の事もつりの事も良くわからない人間が読む事の理解の貧しさを実感しつつ、心に残ったのは、最後まで闘う老人の強さと老人と少年の心のつながりでした。老人が生きて陸に帰った事を嬉しく思い涙を流す少年をとてもいとおしく抱きしめたい様に感じました。
T・S
サンチャゴがこの漁でめざしたのは魚をとって金にすることではなく魚を打ち負かすこと、それ自体だったのだろう。漁に関してすべて合理的に最善の方法をとる彼が舟に乗せられないほど大きい魚を倒しても、持ち帰れないことは予想のうちだろうと思うけれど、彼はつぶやきもしない。そこにサンチャゴの誇りと孤独が偲ばれる。
H・T

数十年ぶりに読んで硬質な文体をまず感じました。それと、老人と少年の交流、海の描写、すごく良いと思いました。老人の生き方等、かっこ良いと思いました。でも自分自身が年をとってこれほど強い生き方が出来るかと思うと疑問です。

T・Y


今回小説を読み、かつて映画を観て大変感動したことを鮮明に思い出しました。老漁夫サンチャゴのマーリンとの格闘は死力を振り絞り港に帰り着いた時には肉は鮫に食いちぎられ跡形も無く精根尽き果てて小屋に戻り、こんこんと眠りに落ち、少年のやさしい心根の見守りが全てにやりつくした満足感と、私は思います。

Y・Y
 釣りが好きな父をずっと見てきたので、釣り糸を通して水の中の魚との駆け引きが面白いものらしいとわかるので、巨大なカジキマグロとの闘いの描写は魅力あるものだと思います。
 老人と少年の交流では心が和み、魚との闘いでは強さと賢さを感じ、サメとの死闘では老人の生命力を感じ、海の描写から自然のきびしさを感じさせてくれたように思います。
 いつまでも強い男でありたいが、避けられない老いと、孤独をヘミングウェイ自身が感じていて、それを表現したのだと思います。
老人と海


8月                      戻る

読書会  栞  記録          2005831

補陀落幻影(ふだらくげんえい)」    東野 光生
S・M

登場人物がいい。男同士の友情がいい。主人公(佑作)と小料理屋の瑤子との関係が又いい。2回読みましたが、何度読んでも感動する本だと思いました。

H・T

最近、こんなに心打たれた本を読んだことは久し振りの様に思う。深い、厚い、男の友情を静かな中に読み取ることが出来、心に残る本でした。戦争のむごいこと等を又改めて知りつつ、最後の文に心ほっと救われる本でした。良い本を紹介していただいた事を感謝し、他の作品も読みたいと思っております。

T・Y
久しぶりに納得の一冊でした。戦争という不条理に将来のある二人の若者が翻弄されてゆき盲目になった旧友、上官の命令に逆らえず少年兵三人の命を奪った主人公の佐原との男の友情、笙を軸にしての知足の人生感、共鳴致しました。
M・K  
 大東亜戦争の深い爪跡を残す1人の老人と爆風のため盲目になった旧友が紡いだ、ほかにくらべるもののないような物語。一管の笙を軸に生かし生かされてある人間の絆に感動いたしました。自殺をしようとした主人公を助けた不思議な老人、まるで観音の応現のようだ。ここの所は本当に幻想的な思いで読みました。南海より遺骨を散骨してUターンして帰路についたこと、よかったとほっとため息をつきました。
N・W

「作家、東野光生」で検索したら52件出てきた。結構名前を知られているんだな、と思った。さて、良い映画、良い本、良い音楽に出会う事は人生の至福の刻。この「補陀落幻影」に出会えた事も、私の人生の幸せの一つ!といえる。人は人によって生かされ、又生きていく存在なのだ、という事をこの本を通してあらためて思い知らされた。

J・Y
読み初めから、読み終わりまで常に静かな雰囲気で心落ち着く本でした。男の友情と笙の音色の混ざり合った幻想的な感じがあり、日本画の風景が目に浮かぶ様な気がしました。
H・T
読む前は補陀落渡海にまつわる仏教的要素の強い本と思っていましたが、二人の人の友情がメインに据えられたしっとりとした話でとても良かったです。これ程の信頼、友情を持った人はそんなにはいないと思います。私自身もそうあればいいと思いますが、現実はそうなっておりません。又、最終章で主人公が友の手紙で思い返して戻って行く様になっていて、何かほっとした思いがしました。久し振りに静かな思いの残る本に会いました。
R・K
「人という字は支えあって生きる姿だ」と、今まで何度も耳にしたが、でも頭の中での理解はとてもおぼつかないままで生かされていないが、この本を読むと、笙の音を背景に、静かにしずかに見せてもらった気がしました。読者としてだけでなく、学びとりたいと思いました。いい本でした。
T・S

抑えた筆致で、表面は鏡のように風景を写しこんでいる大正池のよう。(旅行案内で上高地の素敵な写真をみたばかりなので・・・)水底にずっとよどんでいる魂の苦しみが、重くせつなく、こちらも静かに深く心がふるえます。久しぶりに読書会メンバー全員一致の感動作ですね。ぐっと来るのですが、でも、煩悩いっぱいの私から見ると綺麗過ぎるかなぁと、あえて水をさします。「似顔絵」では、日常の生活で起こった取り返しのつかない事実を背負い、救いようがないのではと思う心の傷を持った草一郎が癒されていく過程が見事で、わたしはこちらが好きです。両方とも人間賛歌の作品ですが、つらい話ですね。

Y・M
印象は静かだということ。筆も静かに進み、登場人物が控えめで思慮深く、思い出の中の悲惨なはずの現場すら静かに感じた。殺人事件がなくてもこれだけ人を惹きつける小説もあるんだと認識を新たにした。読んでいる間中、微かな波の音が聞こえ続けているようだった。
補陀落幻影似顔絵


9月                      戻る

読書会 栞 記録                   2005年9月21日
池井戸 潤 作品を読もう   「果つる底なき」ほか
1963年岐阜県生まれ。慶応義塾大学文学部、法学部卒業。三菱銀行勤務などを経て、
98年、「果つる底なき」で、第44回江戸川乱歩賞を受賞。
 著書に
「M1](文庫版で『架空通貨』に改題、「銀行狐」「銀行総務特命」「BT63」
「ミスト」「仇敵」「最終退行」「株価暴落」「不祥事」など。

池井戸潤の銀行の歩き方
M・I
現代社会の持っている問題点を取り上げている本で社会の働きが見えた作品で読みやすかったです。
S・M
「果つる底なき」を読んで。私に縁のない中小企業向け融資問題、銀行社会のみにくい面を知りました。どうしてこの題名にしたのか読み終えても分かりませんでした。読み方が悪かった・・・・反省。読書会でなかったら読まなかったでしょう。今日も、皆さんの話が聞けて良かったです。
M・K
大変面白く読ませていただきました。銀行の腐敗を内部から描いた現代ミステリーだと思います。銀行内幕情報小説としても面白さ、人間関係、企業との取引関係等々、今まで知らなかった銀行の内幕が少し分かったような気持ちになりました。主人公の銀行員としての立場よりも、人間としての行き方を優先させ、困難な状況の中で、最後まで男の誇りを捨てなかったことに感動いたしました。
H・T
初めて読む作家だったが、「果つる底なき」始めは興味がなかったが読み続けてゆくうちに面白くなり読みふけってしまった。銀行の内部事情、権力社会、どこの社会にもある事の様にも思うが、小説を読み、知らない事を少しでも分かったことは良かったと思う。いろいろの本を読む事はありがたいと思って知識を少しでも広めていきたいと思う此の頃です。
R・K


「MIST」ミスト――今回は参加も出来ないと思っていた(私用で)が、さんのおかげでこの一冊をともかく読み終える事が出来ました。現代社会のどんな田舎にも事件が起きる事、商業、教師、警察、そしてお金の関係や、夫婦、親子、男女の人間関係まで、仕事の苦労と多くの問題をからめて、殺人事件を多くあつかっている文をこわいこわいと思いつつ、何とか最終のページにたどりついて、皆の話を聞き、「果つる底なき」を読みたいと思いました。

J・Y
私達のわからない金融界の裏側や社会の複雑なしくみを教えてもらいながら、ストーリーのおもしろさに魅かれたと思います。いつも正義感あふれる心優しい主人公達の行動や世界を見る目に、作家の性格の良さを感じました。こんな心温かいひとだから、企業戦士は嫌になったんだろうな、とも思います。
M・K
銀行という世界はわかりづらいところだと思っていましたが、この中でうごめく人間模様はきびしくも虚しいもの、この現実をうつす鏡のようで面白かった。
T・Y
今月は欠席の予定でしたので池井戸作品は読んでおりません。本日皆さんのお話を聞き、大変興味を持ちました。是非読んでみます。
T・S
「果つる底なき」を読んだだけなので、今度は紹介のあった「MIST」や「オレたちバブル入行組」を読んでみようと思います。読み易く、社会問題も取り上げたエンタテイメントのようです。まだ若い作家だし、楽しみです。
Y・Y
「果つる底なき」「オレたちバブル入行組」「不祥事」を読みました。どれも気取らない、くだけた表現で銀行業務の説明がわかりやすく、ユーモアもあって楽しく読みました。謝罪する時は丸くおさめる、丸い「まんじゅう」で、四角い「せんべい」ではダメだ、という具体的な内容なども興味深く読みました。ストーリーは上司に問題のあるパターンが多く、銀行員時代にはずいぶん怒りを覚えたのでしょう。だから小説では、下のものが上司をやっつける痛快な場面を作ったのかもしれないと推測しました。
果つる底なき」「不祥事」「オレたちバブル入行組


10月                     戻る

                     
読書会 栞 記録                    2005年10月19日
「博士の愛した数式」   小川洋子
1962年、岡山県生まれ。早稲田大学文芸科卒。
1991年、「妊娠カレンダー」で第104回芥川賞受賞。
2004年、「博士の愛した数式」で読売文学賞・本屋大賞受賞。
「ブラフマンの埋葬」で第32回泉鏡花賞受賞。
J・Y
「博士の愛した数式」で小川洋子さんと出会え嬉しく思いました。それぞれの独特な状況が入り混じった、個性あふれる話でした。他の本も読みましたが、この本がいちばん親しみが持てました。自分が主人公だったら・・・・とか、博士のような人が傍らにいたら・・・・と想像すると、たいへん重い内容かな、と思います。
T・Y
一言、見事に惨敗です。
K・M
読後に全体を通して人のやさしさが感じられ、おだやかな気持ちになりました。本の中で描かれている博士の心を受け止めるには現実としては困難を伴うと思います。現実の社会はこのようなやさしさを受け容れる環境に乏しくなっているのかな、それとも逆の方向がすすんでいるのか考えさせられました。
M・K
今までに読んだことのない形式でつづられている。ついつい引き込まれて読んでしまいました。交通事故で脳に回復不能のダメージを受けた博士、以前のことはおぼえていても、昨日食べた夕食のメニューは忘れてしまう。八十分のビデオテープが一本しかセット出来ない状態である。また、以前の記憶はどんどん崩れていく。そういう博士と、家政婦と、その息子「ルート」√の友情、とても面白く読ませていただきました。
M・M
“記憶が80分しかもたない博士”と家政婦と子供との話を中心にとても楽しく読ませていただきました。でも、この中での義理のお姉さんとの関係も気になりました。皆さんのお話を聞いて、野球の事やいろいろと面白かったです。
R・K
今月の本もさんに昨夕お借り出来たおかげで、半分読む事が出来た。“数式”という題名の字だけで拒否していたのに、内容に出てくる人物がすっと目の前に動き出して、一人一人が生き生きと動き出して、とても人間の心を大切に描き出され、楽しくよみすすむことが出来ました。出席してさらに興味深くなり、ぜひ、終わりまで読み続けたいと思います。
H・T
小川洋子の小説は初めて読んだ本だったが読みごたえのある面白い一冊でした。八十分しかもたない記憶に直面する数学博士と、それを優しく見守る家政婦親子、特にルートと呼ばれる家政婦の息子に心動かされた。野球好きだった博士に対する態度等を興味深く読み終えた。与えることよりも与えられた時の博士の素晴らしい感謝の喜び様が心に残った。今回も又、素晴らしい本に出逢った事を感謝しています。
H・T
変った内容の本だと思いましたが、読んでみると野球や数学の話、家政婦と博士の交流、暖かさが感じられて良かったです。
K・I
読み始めて、自分の40数年前の学生の頃の数学で、素数、自然数、対数(自然常用)等を思い出しながら、タイガースのファンだという障害を持つ数学一筋の主人公(博士)とお手伝いさん母子の生活からほのかな友情を感じ興味を持って読む事が出来た。
T・S
摩訶不思議な小川ワールドにはついていけませんが、この作品は好きです。何人もの家政婦が続けられなかった博士のお世話。博士から善なるものがほとばしり、それをキャッチできた「私」と息子ルートだけが心楽しく博士と付き合い、人生に影響を受けます。まだ若い(20代)「私」に感心します。人づき合いの極意が語られているように思います。私の中にも少しはある温かい部分が広がっていくようで、気持ちよく読めました。
Y・Y
新聞で「数の神秘と謎を追求した本で、数学の根幹に関わる問題が誰にでも分かるように描かれている」と紹介されていたので、読みたくなった。読んでみると、博士は数学の天才ではあるが温かみのある人物で、家政婦母子への数学授業が面白い。著者は「完全数28」が江夏の背番号だ、と気付いた瞬間、「完全数を背負った、完全なる投手」の記憶にまつわる物語にしようとストーリーが一気に浮かんだそうだ。数学、記憶、野球と全く異なる要素の物をうまくからませてほのぼのとした読後感の良い物語が出来上がったと思う。
博士の愛した数式」「凍りついた香り」「世にも美しい数学入門

11月                      戻る

公民館祭り
活動展示    古本バザー


11月                     戻る


読書会  記録                   2005年11月16日
テーマ   「風林火山」

旭川市生まれ。京都大学文学部哲学科卒業後、毎日新聞社に入社。
戦後になって多くの小説を手掛け、1949年「闘牛」で芥川賞を受賞。
1951年に退社して以降は、次々と名作を生み出す。

M・K


 この時代の領主は自分の領分を一歩出れば敵国である。信玄の軍師である山本勘助と信玄とは敵が同じであることが二人を固く結んでいる。普通の友情よりも深く結ばれていたと思う。勘助は参州、牛久保の出であるとのこと、「五体不満足」の体で、よくもこの様な仕事をと思うと・・・・・。三月には牛久保に墓参りに行くとのこと、その時を楽しみにしています。

R・K  
 頭脳は秀でているが、外見はそうでない人物が、50代を、美しい武士のトップと側室の姫に自分の夢をかけて、戦いを通して生きる姿をたどりながら、複雑な思いをめぐらしました。
T・Y
 「風林火山」(甲斐源氏武田信玄)をこの様な作品とは思っても見ませんでした。戦国時代前期、小国との戦いを軍師勘助を重用し、征して大国への足掛りをつかむまでのこと、私の全く知らないことばかりで大変興味深く読みました。
N・W
 とうとう読めずに読書会に出席しました。音羽の図書館にも豊川に行ってもなく、本屋さんに注文しようとしたら時間がかかりすぎ困りました。一読もできなかったけれど、皆様の話を聞いて大体の内容がわかったつもりになりました。ただ、話し合いの仲間に入れなかったようで多少淋しかったです。次回は必ず読んで出席するぞ!
M・K
 なつかしく読みました。忘れてしまったことも多く改めて読んで成程と思うこともありよかった。想った事が実現される世界、想わなければなにも生まれないというのが今でも変わらない現実感をもっていると思います。
J・Y


 実在したかどうかわからない山本勘助という人物、私のイメージでは賢く、見ばえのしない人物なのだけれど、由布姫との心の交流のような筋書きの中で心温まる感じを受けました。由布姫の性格や美しさも、作者の好きなイメージで、勘助と姫の対照的なところもおもしろいと思います。戦乱の時代、本来の主人ではない立場の人間にスポットを当てているところが全体の感じを柔らかくしているようなところがあると思います。

K・I
 父親である武田信虎にうとまれて育った晴信が、信玄と改名の間に、諏訪、信濃地方に出陣した様子が主で、川中島での上杉景虎(謙信)との戦いも中途で終っていて、信玄の一部が語られているだけで、何故か山本勘助が主人公であるかの印象を受け、物足りなさを感じた。
T・S


 登場したときは得体の知れない、いや〜な雰囲気の人物だった勘助が、最後にはずいぶん大きな存在になっていて、いわゆる「立派な武士の死」を迎えたところに、作者の思い入れと愛情を感じます。
しか〜し、気に入らない。読書会でも話題になっていたことだけど実在の人物を登場させるのならば、記録の残っている事実は曲げないで欲しいというのが私の願いです。創造の事物や人物が登場するのは全くかまわないけれど、史実は曲げないで辻褄を合わせ展開して欲しい。だから解説を読んで、史実と違う点があるという指摘には正直、がっかりしました。

H・T
 個人的に好きなジャンルの小説なので、すごく楽しくよめました。ずいぶん昔に読んだ本ですが、あらためて井上靖の作家としての力量を感じたような気がします。内容としては、先日みなさんが言ってたように虚実とりまぜて仕上げていると、おもいますが、特に勘助と由布姫の交流がメインとなっていて題名から受ける印象とはちがった、感じをうけました。
Y・Y
 タイトルから想像した内容とは異なり、由布姫への勘助の慕情が中心で、信玄の武将ぶりや勘助の軍師としてのすごさの印象が薄かった。井上靖らしい物語の作り方だったかと思う。淀君、額田女王、楊貴妃などの物語を書いたことに通じる、美しく毅然とした女性像を好んで書いていると思う。

風林火山


12月                     戻る

読書会 栞     帚木 蓬生 1回目       2005年12月21日

  三たびの海峡、総統の防具   戦前のことなのによく調べて書いている。人から薦められて読  み始めたけれど、とてもいい本で、何冊も続けて読むことになった。自分としては珍しい、読書会  に参加していることでたくさん読むことができたと思う。
  三たびの海峡、閉鎖病棟  三たび〜 は、のめりこんで、自分が朝鮮人の立場になってしまい、 日本人を憎いと思ってしまった。これを読めば朝鮮の人は日本人を憎いと思うのではないか。
  週刊ブックレビューで、帚木氏が創作するときの心構えや方法を述べたことを紹介ーー風景のき  れいな所を見ると、画家がスケッチをするように、言葉で風景のスケッチをして、そこからたくさ  んの資料を集め、時代や人物を肉付けしていく。人との出逢いが大事、1年に一冊のペースで丁寧  に書いていく、ハッピーエンドで終るようにしているーーーなど。
  閉鎖病棟  医者でも看護婦でもなく患者の眼を通して書いてある。
  閉鎖病棟 
  閉鎖病棟
  三たびの海峡  面白かった。ドイツでの戦争の描写、というよりは、主人公の兄が精神病院で  勤めていて、そこで弱者が切り捨てられる様を見せながら訴えることが主流ではないかと感じた。
  逃亡、空夜  特に空夜が愛を描いてよかった。
        から「えーっ、不倫のススメですか?」という声あり。純愛です、と。
  三たびの海峡  
  三たびの海峡、空夜、総統の防具  特に総統の防具がよかった。戦争中、ドイツに日本人がい  たことが驚きで、今まで考えたことがなかった。主人公の香田は理想的ですばらしい。
  逃亡、空山、アフリカの蹄、総統の防具、臓器農場、カシスの舞、千日紅の恋人、白い夏の墓標  精神科のお医者さんなので読後感が気持ち悪くならないようにハッピーエンドにするのかしら。  

今回は一言コメントを書いてもらわなかったので、皆さんの話されたことを簡単にメモしただけなので、不完全でごめんなさい


2006年1月                戻る

読書会    記録                       2006年1月18日
野沢 尚 を読む
K・I

 「魔笛」  物語の内容からみて、教団の洗脳教育が、いとも簡単に通用することが、オーム真理教の行動とだぶって見えた。

R・K  「破線のマリス」  のビデオを昨年見せていただいて、本は何も読まずに、皆さんのお話を聞いて、マスコミを切り離す事が出来ない現実の日々の中で、少しでも本当の事を求めて、流されない生き方をしたいと思いました。
M・K

「恋人よ」  男女二組が同じホテルで結婚式をあげる、というシンプルな設定から始まる物語である。劇的で緻密、素晴らしい描写、シーン、そしてすばらしい手紙の文面、人と人の心のやりとりが詰まっている。嵐の夜に、糸のもつれあった四人の男女が力を合わせて赤ん坊を取り上げるシーン。著者は、そのシーンを淡々と描いている。吸い込まれるように読んでゆきました。(家族愛)

T・S

 「破線のマリス」は、「誰のために、何のために」を大切にしていたはずなのに、マリスたっぷりの映像編集をしてしまう瑤子が悲しい。読ませる小説だけど、ミステリーとしては当初の弁護士の死や、にせ官僚の死の真相が手つかずのままなのが不満です。他の23を読んで野沢尚の描く世界の暗さ、心の闇を、これでもかとほじり出す姿勢は好きになれない。

H・T

 初めて知る作家で 「破線のマリス」 を求めて、3分の2程読み終えたところだが、読み進むほど、興味が出てきて早く読み終えたいと思っている。たくさんの小説を書いている事を知り、皆さんの書評を聞いていて次に何か、一冊を読みたいと思っている。今年もまた、『しおりの会』で学べる事を楽しみにし、出席したいと願ってやまない。

H・T  「魔笛」を読んで  読んでいて場面がとぶ感じがして読みにくい思いがしたんですが、皆さんの説明を聞いてTVドラマの手法だと思い至った気がします。私にはちょっと読みにくい気がしました。

S・M

 「魔笛」を読んで  犯人側からの文の運びで、作風が脚本家らしい・・・・。私には苦手でやっと読み終えた思い、少し苦痛でした。「破線のマリス」は読もうと思っています。

J・Y  野沢尚さんは、初め 「深紅」 を読み、おもしろくて、次々と読んだ作家です。男の人なのに女性の心理描写が細かく、一人ひとりの人間をいろいろな角度で細かく見ているな、と思いました。報道のあり方、家族のあり方、考え方を教えられたように思います。長生きして、もっといっぱい作品を残して欲しかったな、と思います。
T・Y

 「烈火の月」 のあとがきを読み、野沢尚の脚本家としての悩みが切々と書かれており、志半ばで亡くなったことは誠に残念。

Y・Y 「眠れぬ夜を抱いて」いかにも脚本家らしい本だ。このままの構成と会話と、そして盛り上がりの部分からエンディングまで出来上がっているようだ。「リミット」では、文書専門だった婦人警官が、誘拐された息子を助けたい一心で、車を爆走させ、犯人相手に銃撃戦だ。荒唐無稽でありえない話だが、気楽に楽しむエンターテイメントなら、これくらい派手な見せ場を作りたくなるのだろうなと思う。
 ドラマを作る職人として、泣かせどころ、盛り上げどころをしっかり作り、面白いけれど、読み終わるとそれだけでしかない。一定のレベルを維持した作品を書けるけれど、もっと上のレベルで書こうとした時、書けなかったのではないだろうかと自殺の原因を考えてみたりした。
破線のマリス」「リミット」「眠れぬ夜を抱いて」「反乱のボヤージュ


2月                  戻る

姜尚中 東京大学教授  「在日」     12名出席


3月

今年の反省と次年度の計画      山本勘助の墓へお参り&食事会


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