読書会 栞 記録       2007年度


2007年度      テーマ
4/18 島田 洋七   「がばいばあちゃん」
5/16 文学散歩  金閣寺訪問 周辺散策   若冲展    日程 
6/20 三島由紀夫   「金閣寺」
7/18 太田光 中澤新一 「憲法9条を世界遺産に」 安倍晋三 「美しい国へ」
8/29 山崎豊子  「沈まぬ太陽」「不毛地帯」「大地の子」「二つの祖国」
9/19 リリー・フランキー  「東京タワー  オカンとボクと、時々、オトン」
10/17 垣田達也 「新 買ってはいけない 4」
公民館祭りの準備
11/4 公民館祭り  活動記録展示 古本市
11/21 カズオ・イシグロ  「私を離さないで」「日のなごり」
12/19 志水辰夫   「負け犬」「行きずりの街」「行きいそぎ」 他
1/16 反省と計画
2/20 新保裕一   「栄光なき凱旋」上・下
3/19 塩野七生  「ローマ人の物語」4・5


4月

読書会 栞 記録                   2007年4月18日
島田 洋七    「佐賀のがばいばあちゃん」
M・M  島田洋七の「がばいばあちゃん」等を読んで楽しかったです。がばいばあちゃんの生き方、考え方がすごく良かったです。あのユニークさ、お金の使い方、別れの時など良かったです。何かしらの生き方の勉強になりました。

S・M

 がばいばあちゃんは、やっぱりすごいおばあちゃんだ。印象に残った言葉は、*世間に見栄を張るな *人生は死ぬまでひまつぶし *「夢は叶わなくてもええ、しょせん夢なんじゃから」ばあちゃんのやさしい言葉
 がばいばあちゃんのように物事を考え実行できたら・・・・・・と思った。

M・K  幸せはお金が決めるものじゃない。自分自身の心のあり方で決まるのだ。どんな時でも笑を忘れず楽しく生きるのだ、を「モットー」につらい戦後を生き抜いて来た「がばいばあちゃん」に八才から中学卒業まで育てられた洋七少年、貧乏ではあるが家にはいつも笑いが溢れていた。たくましく生きてきた。「死ぬまで夢を持て、叶わなくてもしょせん夢だから」「頭がいい人も頭が悪い人も、金持も貧乏も五十年たてば、みな五十才になる」この言葉が好きです。

J・Y

 今の時代、そして自分の育った時代からも想像できない生活の様子にびっくりしました。苦労を笑いでとばすような明るさは尊敬ものですね。物を大事にする事、苦労を何とも思わない所は真似しなくちゃと思います。おばあちゃんの思い出を、こんな楽しい本に仕上げた洋七さんでも涙した日々もあった事と思います。読者に希望を与える雰囲気にして読ませてもらい、話術の上手さを感じました。

M・K  とても読みやすい本でした。読み進むと、内容がとても心温まるものなので若い人達にも読まれるといいなと思います。明るくなるヒントがいっぱいあり、生活の中に取り入れると和やかなものになるのではと、ほんとに感心しました。

T・S  ユーモアのセンスは努力して身につくものなのでしょうか。柔軟思考が足りない私は、天性のものと思いたくもなりますが、逃げてはいけませんね。がばいばあちゃんにはなれなくても、楽しく生きているばあちゃんになりたいものです。

M・I “本当の優しさとは相手に気付かれずにやる事” がばいばあちゃんの生き方はすごいと思いました。こんなきれいな気持ちを持っている人は、なかなかいないと思います。運動会の弁当を交換した先生のような本当の優しさ、その時は気付かなくても後になり、その本当の優しさに感謝できる自分、又、そんな優しさを身につけたいと感じました。

N・W ばあちゃんのような「いい人生」を生きよう。「いい人生」を生きるのには、起こった出来事を楽しみ、目の前にあるものをおいしく食べ、毎日笑って暮せばいいのだ――ばあちゃんの生き方をえがくことによって読者が「いい人生」を生きるためのヒントになればいい、という作者の思いはよく伝わった。巻末の【特別付録】島田洋七を育てた!おさのばあちゃんの楽しく生きる方法語録――は、落ち込んだ時のビタミン剤になりそうだ。

T・Y 読まずに参加しました。皆さんの楽しく満足された話を私も充分に楽しませて頂きました。必ず今月中に私も読みます。

H・T  読んで、何か暖かいものが心に残る本です。貧乏なんか気にしない、そんな人に育てられたんだ、島田洋七は。でも、振り返ってみれば私も同世代に近く、やはり昔は貧乏だった様な気がします。貧乏が恥ずかしいという様な気はしなかったな。とにかく昔を思い出させる懐かしい本です。

R・K  以前TV番組で洋七さんが語ってみえるのを見たり、他にも多少の知識を得て、しおりに参加しました。生きる上での知恵を今の世に生きる人間がいかに必要としているかという事。貧しい時代に生き抜いた人のたくましさを笑いの中に知る事等々。改めて味わって、今日お借りした本を読ませてもらいたいと思います。

M・I 皆さんの話を聞いて、ぜひ本を読んでみたいと思います。どんな事でも明るく前向きに心を切り替えることで毎日が楽しくなりそうです。

H・T

早くに一冊だけ読むことが出来て面白く又感心することが多い本だった。読んでいて遠い昔、家族皆が苦労した日の事が思い出される本だったが、今、若い人が読んだら何とおもって読むだろう。苦労を苦労と思わず暮した祖母と著者に感服して読み終えた。もう一、二冊読んでみたいと思うが・・・・・・・。

おりひめ

洋七さんのおばあちゃんへの感謝と愛情を感じます。だから「僕のばあちゃんはね・・・・・・」と言って様々な場所でいろんな人に語っていたのでしょう。ただその間に出来上がっていったエピソードのように感じるのは穿ちすぎでしょうか。物事は考え方一つで辛くも楽しくもなると教えられました。

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6月

読書会 栞 記録                      2007年6月20日
三島由紀夫  「金閣寺」
N・W  先月の「がばいばあちゃん」と真反対の観念的な作品で、大変骨が折れました。とにかくボキャブラリーの豊かな優れた作家であるとは思うが、難解で難解で私には歯が立たなかったです。皆さんの話を聞き、解説を読んでも「溝口」がなぜ金閣寺に火をつけたのかが、いまいち100%理解できないままです。最後まで感情移入できず字面を追うだけで終りました。一番良かった事は最後までとにかく読めたことです。

T・Y

 何度か読みましたが、金閣寺に放火する流れが理解できません。大変淋しい思いをしています。

R・K  「小説を読む」というより、事実にあった金閣寺を燃やしたという事への興味を追いかけて読み続けてみたが、人物の動きよりも言葉や表現のむずかしさにつまずいて、作者三島由紀夫について強く思ってしまい、やはり栞に出席して良かった、ずいぶん整理できたと思いました。

S・M  どもりに生まれついた宿命の児、孤独な青年の生き様、美に対する反感が金閣寺を焼いたのか?むつかしい本だ。二度とは読みたくないな。

J・Y  人物、特に主人公の感情表現が、いろいろな事を通して伝わってきて、密度の高い内容だなと感じました。主人公の金閣寺に対するイメージのふくらませ方が非常にゆるやかで上手だなと思いましたが、ほとんどの部分が三島の創作という事で、頭の中にはいつもいろいろなプロットが組み合わされる様に考えていたのかな、それとも短時間で出来上がったのならサッサーとできてしまったのかなと興味を持ちました。

H・T  読み出してしばらくはページが進まず難しい気がしましたが、後半になるにつれて一気に読んでしまいました。主人公の告白という形にしての敗戦前後の変わり行く時代の中での一人の青年の鬱積した気持ち、その感情の爆発としての放火でクライマックスをむかえるが、  後の部分が印象深いです。放火後に自殺するつもりだった青年が生きなければならぬと思い直しているが、作者はなぜ、こんな形にしたのだろう?と思います。

T・S

 国宝を燃やしてしまうに至る青年僧の心の内はどんなだったか。
 最大の関心はこれですよね。でも、三島作品は事実を明らかにするためのものではなかった。三島が金閣を焼くとしたらこんな状況だ、という彼の事情であって、三島の創作した「私」が金閣にのめり込み、幻影さえも自分が金閣の真の美を理解する選ばれたものゆえ立ち現れる、と思ってしまう異常性が怖いです。荒れた日本海に向かい寒風にさらされて突然「焼かねばならぬ」と想念が湧くところが印象的でした。舞台を作りすぎと思いながらも寒々しさにぞっとしました。
 水上勉の「金閣炎上」こそが疑問に答えてくれました。

おりひめ  簡潔な言葉による表現が現代の主流だから、難しい漢字、使ったことの無い言い回しなどがあると戸惑いもあったが、日本語はこんなに表現力が豊かだったと改めて感じた。さすがは文学者。ただ、僧がなぜ金閣寺を焼いたかの方に興味があり、三島の構築した僧の心理の動きは、作為的で素直に入っていけない気がした。

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7月

読書会 栞 記録            2007年7月18日
太田光 中澤新一 「憲法9条を世界遺産に」 安倍晋三 「美しい国へ」
S・M 戦争の放棄を基にした憲法九条を世界遺産には良い考えだと思うが、憲法九条見直しは必要では?安倍首相の「美しい国」を定着させたい気持ちは美しい未来を描いて見せているだけ・・・・実のある目標、政策をかかげてほしい。今日は皆さんの話に感心させられました。

J・Y 憲法九条は、非常に理想的に望むものであって戦争放棄は大切な事だと思います。戦争後60年以上たって、政治家の人達、法律を考える人、改憲の際には是非よく考えて良いものにしてくれなくては困るなと思います。とにかく日本の将来、子ども達のことを考えると、ずっと争いのない日本であって欲しいと思っています。

M・I 安倍さんは拉致問題ではよくしていると共感しましたが本の中味は一般論的な内容で、具体的なものがないような気がしました。憲法九条を世界遺産という言葉がとてもいいですね。九条について一人一人がもっとよく考える問題で、読んでとても良かったです。

H・T 「憲法九条を世界遺産に」「美しい国へ」を読んで、今日ほど護憲か改憲かと話し合えたことはとても勉強になり、充実した2時間を過ごせたことを有難く思った。難しいことはわからないが、只々平和が続き皆が幸せな生活が出来る事を願うばかりである。そして、これからも国の事、政治のこと、憲法の事など勉強をしていかなければと、皆さんの討論をきいていてしみじみ思った。

R・K 自分が犠牲になっても、理想論を貫けられるのか?自衛隊とはいいながら軍隊と同じと外国から見られている現実をどう考えるのか、話し合いでは簡単に決まらない事ではあるが、栞の仲間のずいぶん多くの話を聞くことが出来て良かったと思う。

N・W 「憲法九条」前文や九条の一項、二項を、たか子さんに朗読して頂いて良かったです。「憲法九条を世界遺産に」は、以前から関心があったのでこの機会に読めて良かった。ただ、論点が深まらず、くり返し浅い所を述べている感じを受け、やや期待はずれではあった。

T・Y 二つはまさに対極的立場で憲法を論じているが、私は太田光、中沢新一の考え方に共鳴できる。

H・T

 本を読んでみて思ったのは、大田光がすごく勉強をしていることに対する、驚きまた、自分自身の憲法問題に対する知識のなさ、・・・・そういったことを感じさせられながら読みました。それでも読んでいて我が意をえたりと思ったのは、78ページ冒頭で太田君が言っている言葉です。
 「憲法9条は、夢であり、理想である。これを守るためには他国から、弱気、弱腰とののしられても、2度と戦争は起こさない。という部分に誇りをもとう」というところです。戦後、50数年にわたって、先人たちが理想憲法と現実のギャップに悩みながらも守ってきた9条を私はかえるべきではないと思います。とにかく読んで面白い(興味深い)本でした。

H・T ディベートをするのは初めてだけれど、立場を守って意見を述べるには異なる立場を理解できないと浅い意見になってしまう気がしました。立場の違いを理解し自分の意見との違いをきちんと把握しなければ弱い意見になると感じました。

T・S

「戦争は悪だ、しかし必要悪だ」というのが現在の捉え方といえるでしょう。
何年か前は、「戦争は必要」だったことを思えばずいぶんうれしい状況にはなっているわけです。進むべき方向は確実に、問題解決手段に武力は使わない道しか認められません。9条1項は変える必要の無い素晴らしい理念だと思います。いかし2項は、現実にあまりに捻じ曲げられて痛々しい限りです。
もっと自信を持って憲法を守れる方がいいと思うのです。
島国ですから、空軍海軍を持ち迎撃ミサイルと空・海の警備を徹底する一方陸上交戦部隊は撤廃して、戦車やライフルの訓練ではなく災害救助隊としての訓練と実働にしてほしい。上陸してまで攻め入ってくるようなら、国民は覚悟を決めて丸腰徹底抗戦しかありません。夢物語? 何年か後には戦争が「必要」だった時代があるなんて信じられないような時代がきっときます。

おりひめ 「憲法九条を世界遺産に」という言葉の魅力に惑わされ、憲法は触れてはいけない、変えてはいけない、守るべきだ、となっていくのは恐い。今のままでは戦争放棄が生存放棄につながりかねない。矛盾を抱えているが、理想と現実のギャップを埋め、改悪にならないようにすることが大切なのではないかと思う。

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8月

読書会 栞 記録           2007829

山崎 豊子 「二つの祖国」「沈まぬ太陽」「不毛地帯」「女系家族」など

M・I  「二つの祖国」を読み、アメリカと日本の間にたって二世の人達の苦しい立場がよく書かれていたと思います。東京裁判は、むつかしい内容でしたが、初めて読んで、知らない事がいっぱいでしたが良かったです。

S・M  シベリア帰りの元軍人が主人公の「不毛地帯」を何年か前、友達にすすめられて読んでからやみつきになり山崎豊子の本はほとんど二回ほど読みました。どの本も悲惨で主人公の最後が知りたくて一気に読み終えていました。どうしてあれだけ夢中になれたのか?今思うと・・・・・・・若かったからかな。

J・Y  この人の印象は、取材魔、丁寧で世間の皆様に、社会の裏を解体して知らしめる使命感を持って書いているんじゃないのかと思えるくらい詳しく世の中を書いていますが、いつも頑張り屋でたいへんな人生を歩む主人公なので、完了した時には満足感と共に疲労感があります。題材はあっても、あくまでもフィクションなので、全てを鵜呑みにしてはいけないけれども、この先も読みたい作家のひとりです。

R・K  一人の作家が自分の生まれた世界を描く事から始まって、世の中を多くの小説に書いていくすごさに圧倒される。“しおり”の仲間の一人一人が読んだ同作家の本の感想から「沈まぬ太陽」第三編(御巣鷹山篇)とか、自分の人生をふりかえり、TVドラマで感激した「大地の子」も読んでみたいと思いました。

T・S  9月4日「沈まぬ太陽」を読み終えました。翌日瀬島龍三氏永眠(95歳)のニュースを紙上で見て、「龍崎一清」として登場した人物が昨日まで存命だったことに驚きました。ネットで少し調べてみると 「不毛地帯」について山崎氏は「大本営参謀、シベリア抑留、商社マンという原型だけをいただきました。モデルではなく、私が作ったものです」と、壱岐正=瀬島氏ではないことを言明しているようです。(じゃぁモデルって何?とつっこみたいところです)
 一方「沈まぬ太陽」では前書に「事実に基き、小説的に再構築したもの」とわざわざ断っていながらYさんも指摘していたように事実とはずいぶん違うようです。同様に「作ったもの」としてくれればいいものを。後進の地での開拓者のご苦労や飛行機事故の悲惨さを描き出している点は力作と思うけれど、だまされた気分をもってしまっては台無しです。「大地の子」をWさんに薦めましたが撤回します。
M・M  「沈まぬ太陽」アフリカ篇を読んで良かったです。山崎さんのは皆さんが言っていた様に、主人公「恩地」がいろんな苦難に会いながらの人生、すごいと思いました。皆さんの読まれたものも読んでみたいと思いました。

H・T  とてつもない筆力で色々な世界が描かれ、関心しながら読みました。「華麗なる一族」は、私の住んでいた所に関わる地名が沢山でてきてとても読みやすかったのですが、人間が関わることの想像力でこのような作品がうまれるのかと思いながら読みました。
T・Y  途中からの出席なのにほっとした気分にさせて頂き有難うございます。今回は一冊も読んでいません。皆さんのお話を楽しく聞かせてもらい、楽しい時を過ごしました。

H・T  「沈まぬ太陽」以前に読んだ為、うろ覚えですが大変面白く読んだ覚えがあります。しかし、山崎豊子さんの小説は黒白はっきりした人間像という形で描いていて、小説の題材は事実に基づいているけれども小説の中での人間関係って本当にそうかな?という思いもあります。沈まぬ太陽については、強烈な反論もあるという事を何かで見たことがあります。

N・W  毎日新聞大阪本社に入社した頃は、全く作家になる気はなかったという。職場の上司にいた井上靖氏との出会いが山崎豊子氏を小説の世界に導いた――と「全集T」のエッセーにあった。人と人との出会いの摩訶不思議さを改めて知らされる。以前から知っていたが、山崎豊子氏の作品を初めて読んだ。「栞」に入っていたからこそ読めた本であった。感謝!!

おりひめ  「どろどろした人間関係を描いている作家」という先入観から手を出さないできたが、「沈まぬ太陽」を読んでみると、ストーリーのテンポが早く、読みやすかった。取材のすごさと圧倒的な筆力が作品に重みを加えている。ただ、主人公を良く描き、相対する人物を不当に貶めて書くことがモデル小説にありがちなので気をつけて読みたい。皆さんの感想を聞きながら、「不毛地帯」を読んでみようと思い始めた。

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9月

読書会 栞 記録               2007年9月19日
リリー・フランキー  「東京タワー」  オカンとボクと、時々、オトン

1963年福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒業。
文章家、小説家、コラムニスト、
絵本作家、イラストレーター、アートディレクター、
デザイナー、作詞・作曲家、構成・演出宗、ラジオナビゲータ」、フォトグラファー…など
多彩な顔を持ち、ジャンルの壁を自由に往来しつつ活動
『東京タワーオカンとボクと、時々、オトン」は著者初めての長篇。

M・I  私も母が早く亡くなっているので、よくわかりますが、どんなお母さんでも子どもにとっては大事な人で永遠の恋人のようなものだと思います。冷静な目で親のことをよく書けていると思います。

R・K

 今月の本も、会員の方のおかげで読むことができ、しかも深める事が出来ました。結婚して、子どもが生まれる自然界の当たり前の事ともいえるが、一人一人の生き方を知る事が出来るのが本であり、また、今月も多くの人生を知り、笑い、泣き、読んで良かった本でした。

H・T

 早くに読んだ為、少し内容を忘れたこともあるが、読み始めはとっつき難いものがあったが、読むほどに興味深く、少し涙を流す処もあって、思わず引きこまれる本でした。親子の愛情の深さをしみじみ味わう本でした。もう一度読み返し、皆さんの読書感をお聞きしたことを、じっくりともう一度味わってみたい本です。

N・W  リリー・フランキーのお母さんが生きていたらこの世に出なかった作品。リリーさんのお母さんへの鎮魂作で、お母さんへの想いの深さがしみじみ伝わってくる。親殺し、子殺しの頻発する現代だからこそ、この母親の愛情の深さや子の母親を想う気持ちは読む私達の心をあたたかいもので満たす。読後感の心地よい作品であった。

S・M  1年程前に読み、テレビドラマも見たが、今回再度読み、色々な良い言葉に出合えていたことが分かった。この本を読んで本当に良かったです。

J・Y  作者の母親への強い温かい思いが込められている本だな〜と想いました。オトンの存在は別として、こんなに信頼し合っている母子の存在は、読んだ後に感動を覚えました。こんな本になるお母さん、きっと天国で喜んでいるだろうな、と思うし、ぜひ形にして残したかったという作者の気持ちもよく理解できます。

T・Y  久しぶりに素直に最後まで読み切ることができました。あったか〜い気持ちが今も続いております。リリー・フランキー有難う。

H・T  リリー・フランキーという名前からお笑い系の人が書いた本かと想像していましたが、違っていました。中身は近頃希薄になっている親子関係に一石を投じるような作品で、温かな親を思う心がにじみ出ていました。とても温かい気持ちになりました。

H・T

父親との微妙な関係、それに対しての母への哀憐の思い、育った生活環境(炭鉱とか、高校入学時に親元を離れるとか)も私は似ている気がして作者の気持ちがすごく分かる気がして切ない思いで、読みました。特に、後半の闘病生活、病院での臨終場面は、3年前私も同じような経験をしているので、涙、涙の読書になりました。作者の親に対する暖かい気持ちが感じられてとても優しい気持ちになれる本です。

M・M

発行になって書店に出回るころ(2年前くらい)司書さんが図書館に入れるべきか悩んでいたので、入れていただく様にお願いした本で、私自身も思い入れのある本でした。
 幼少の頃の親との関わりは何か寂びしいが、大人になっても親子の絆の強さを感じました。親子の愛の強さとは素晴らしいと感じました。

T・S 「よく笑い、楽しいことが好きな人」 で 「周囲の人をいつも気に掛け家事が好きで几帳面」 な人ときたら私も慕ってしまいます。実際にそういう方は周囲にいらっしゃるので、家族さんがうらやましい限りです。そして私以上にもっとも〜っとうらやましがっているのは私の家族でしょうね。お生憎様。子どもから青年になったらいつまでも一緒に暮らさず親から離れた方がいいというのが私の思いですが、やっぱりねと納得するリリーさん親子の来し方です。母上が永眠して本人の気持ちが不動のものになったからこそ書けた作品ですね。生きていればいろいろあるから・・・。こんなにも直球で人を慕うということが素敵です。
おりひめ  読んでみるまでは、ミステリーでもSFでもハードボイルドでもないのであまり気が進まなかった。読書会で取り上げるから読んでみただけ。でも、読み進むうち、これは予想に反して面白いかもと思えてきて、最後にはほろっとする場面もあり、2006年本屋大賞を受賞したのが納得できた。オトンや祖母に対しては感情を抑え気味に、オカンに対する想いは切々として読む人自身の母への想起につながり、なかなかの書き手だと思った。
 「東京タワー」

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10月

11月

読書会 栞 記録                  2007年11月21日
カズオ・イシグロ
M・M
S・M 「日の名残り」と「わたしたちが孤児だった頃」の2冊を読みました。どちらも苦手な分野だった。後の方がサスペンス調で日本の推理小説とは違ったおもしろみがあっタカナ。カズオ・イシグロの本は、読み疲れになってしまうから・・・・・・・・もう読まない。
M・K この物語は今までに読んだ種々の作品とくらべ、稀有な小説であると思う。主人公(キャシー)はクローン人間である。臓器提供のために作られた存在で提供が使命である。ただ一つの目的のために此の世に産み出され、その将来は決定されている。何と味気ないこと・・・・・・自分自身がこの立場であれば耐えられない気持ちであろう。少女時代を過ごした施設(ヘールシャム)について回想する形で静かに語り進められているが・・・・・・・此の作品の奇怪さが見えて、鬼気迫る凄みを感じた。
J・Y 「わたしを離さないで」はたいへんショッキングでセンセーショナルな内容の本でした。ほんとうにこんな施設こんな子どもたちが必要でしょうか。人間の存在、感情など考えさせられた作品でした。文章の展開の仕方も工夫してあったと思います。「わたしたちが孤児だった頃」はアヘン戦争などのテーマが折り込まれた作品で展開も謎解きがあって楽しく読めました。イギリスにとっては、痛い内容であると思いました。翻訳物は、訳者によって左右されるなと思いました。
M・K 「日の名残り」「浮世の画家」「わたしを離さないで」3冊読みました。どの本も今迄になく印象深くそれぞれ読む人によって感じるものが違いますが、私は、感想を述べるより読んで感じたものを自分なりに消化したほうがいい本だな――と思いました。
T・S 「日の名残り」をずいぶん時間をかけて読みました。執事としての品格を身に付け、主人の成功こそが自分の成功であると思い、人生を捧げようと奮闘するスティーブンスは、時にこっけいですらあります。執事の活躍で支えられた英国の時代が確かに在ったのだと納得します。イギリス人は大陸人より沈着冷静でいられる人種と主張しているあたりはおもしろかったです。時間のあるときゆっくり味わって読むにはいい作品かなあと思ってしまう私は、夕日の美しさに気付かなくなっているのかも。気をつけようっと。
M・I
N・W 映画は洋画、本は日本のもの!というのをますます実感した作品。臓器提供のために創られたクローン人間の若者たちを主人公とした「わたしを離さないで」は、1年前に読んだものだが、読み直すのが辛くやめてしまった。近未来、実際にこんな事が起こったら恐ろしい。生命は人間が左右するものではないと強く思う。
T・Y
H・T
R・K 美しい言葉遣いと執事という本人が職人の様に主人に全身の神経をそそいで生きていく姿に久しぶりに親しい気持ちを抱きながら読みました。歴史がわからずに本をより深く読むことの難しさをかみしめました。
M・I
H・T
おりひめ 日の名残り」は、全体にとても静かで上品な雰囲気だけど、どうも言い訳がましさを感じてしまい、人生のたそがれ時で、今までの人生の間違いに気付いたら・・・・・・せつないだろうなと思った。背景にイギリス貴族とその豪壮な邸宅を見せ、イギリスの偉大な国土を語らせているのが作品に深みを与えている。映画にもなったので見てみたい。「わたしを離さないで」は、不思議な世界。クローンや臓器提供を扱った小説はいくつもあるが、このような描き方は他にはなかった。今はまだないが、いつか存在するかもしれない怖さを描いたSF作品。


12月

読書会 栞                                 200712月19日

志水 辰夫
J・Y  センチメンタル・ハードボイルドの世界、格調高い文体で深い味わいの“志水節”と説明の紹介文にありましたが、ほのぼのとした人情味あふれる内容やいろいろな情報、スリルあふれるストーリーに、時間を忘れて読みたい作家のひとりです。「約束の地」は特に印象強い作品です。全部で今まで1416冊くらい読んだかな‥‥。内容を忘れちゃったのもあるけれど、読んでいる時は、満足して有意義な時間にしてもらえました。
H・T 「きのうの空」  「生き方」が特別ではないのに戦後の生活観がよく表され、残したい情景、人情があるような気がする。ハードボイルドの世界の一端を読みながら感じさせるものも読んだ他の本にもあり、気楽に読める楽しみな作家だと思いました。
H・T  初めて読んだ作家だった。「生きいそぎ」1冊のみの読みでしたが皆さんの感想をお聞きし後何冊かも読んでみたい気持です。入りやすい本でしたがあまり頭に残っていなく残念。優しい中にミステリーがあり少しハラハラしながら読み終えた。文庫本をさがして読もうと思っています。皆さんの読みの深さに又々感激しています。

T・Y 登場人物の境涯や時代背景が自然に理解させられ、特に 里の秋 短夜 かげろう はこれからも忘れないと思います。
N・W  「きのうの空」 「青に候」 「行きずりの街」の3冊を読みました。読んでいる間は、その作品の世界に入り込んで楽しめるものでした。ただ、最近の私の脳は働きが悪く読んでも読んでも忘れていってしまいます。それでも読む機会を与えて下さる「栞」に感謝です。

R・K  「約束の地」  時間があり図書館に行ってから、松井さんを頼って今月の課題図書を教えてもらい13日にこの本を借りる事が出来ました。上下に別れている細かい字しかも厚い本で、どうなるかと思ったが、目が疲れない限り内容の変化についてゆくためノートに記録しつつ、手に汗し、ドキドキしつつひきこまれて私にしてはずい分読み進めた。世界にまたがる地名、世の中の動き等本当に知らない事を教えてもらい感謝しあと1/4読破します。

T・S 予約状態だった「負け犬」が届き1ページ眺めてすでに読んだことに気が付きました。会の中で「アウトローの話・短編集」など話されたにもかかわらず思い出さないのですから大したものです(あぁ恥ずかしい)。心に棘をもち懐に刃を持って生きている人たちがいる現実。タイミングよくチャンスに出合えば更生し別の人生を生きる可能性がある。作家志水はその出合いを願いつつアウトローを描いているのかも。「切なさを感じた」と読後メモがありました。「約束の地」をぜひ読みたいと思っています。

おりひめ デビュー作「飢えて狼」は、事件に巻き込まれ身近な者の死に遭う第一部、北の海の島へ行き上陸しソ連兵に追われ何日も隠れて過ごすサバイバル(ここがすごい)の第二部、事件の背景を探り謎を解明していく第三部。しっかりとした構成で社会問題を扱い、魅力的な人物を造形した作品だと思います。他の皆さんが紹介された作品も読んでみたいと思います。

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2月

            読書会 栞                                   2008年2月20日

「栄光なき凱旋」  真保 裕一
T・Y

真保裕一は、色々なテーマを作品に仕上げており、大変感心致しました。

M・K 日系2世の複雑な感覚をよく描いたと感心しました。人をよく観察し心理を読んだ人だと思う。正義を受け止める人の違いをきちんと表わし、違いを認め合う難しさを感じました。
N・W  「追いつめられた人間の心理を見事に描き出す作家」と、どこかで読んだことがあります。私の読んだ2冊の本「ボーダーライン」「黒部の(ひぐま)」でも、この事がよくわかる内容の作品でした。ぐいぐい引き込まれていきますが、残念ながらスースー忘れていくのは年のせいでしょうか。
M・I 日系2世の人達の、祖国は日本なのかアメリカなのかという選択をしなければいけない、苦しい心理がよく書かれていて、「二つの祖国」の山崎豊子の本とはまた違っていて、グングンと引き込まれて読みました。

J・Y 真保裕一は、好きな作家です。十分な下調べと、丁寧な筆致でいろいろな雰囲気を書いていて、いつも感心させられています。「栄光なき凱旋」は、今まで私の思いもよらない角度から戦争を見ていて、戦争を知らない世代の筆者の、前向きな考えが窺えます。今までもたくさん読ませてもらいましたが、今後の活躍が期待される作家だと思います。
S・M  「追伸」と「灰色の北壁」を読んだが今日皆の読書感をきいて広い深い資料の元、いろいろの話を書いている事に感心した。「追伸」は夫婦の手紙の交換がだんだん複雑となり、母を通して祖父と祖母の手紙の交換によってそれぞれの人生のあり方を興味深く読む事が出来た。

H・T  「追伸」と「灰色の北壁」を読んだが今日皆の読書感をきいて広い深い資料の元、いろいろの話を書いている事に感心した。「追伸」は夫婦の手紙の交換がだんだん複雑となり、母を通して祖父と祖母の手紙の交換によってそれぞれの人生のあり方を興味深く読む事が出来た。

H・T 以前、すこし読んだときも重い内容の本だと思い、途中までしか読めませんでしたが、今回読んでも同じですね。重いし、つらい。何故人間は差別をするのか、国家は戦争をするのか(私は人間の差別感覚が戦争につながる要因だと、思っています。)国家があっての人民なのか、人民あってこその国家なのか考えさせられます。それから、人を差別したがる感覚。「決して私はそんなことはしない。」と言い切れないところが恐ろしい。とにかく読んでいてつらいし、悲しい思いがしました。
T・S 今またチベットで悲しい戦いが繰り返されています。それぞれが正義をかざして。いかなる時もごく一部の人は優しい気持ちで暮らせることでしょう。マット藤原はその一部の人です。どんな境遇になっても相手の身になって考え自分に不利なことを受け入れられるか。私は自信がないことを認めざるを得ません。時代・環境という大きな流れの中でいかに生きるか。ヘンリーはかっこ悪いけれど、多くの人間の持つ業だと思います。読み応えのある1冊でした。

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3月

読書会 栞 記録                       2008年3月19日
「ローマ人の物語」    塩野 七生
M・M
S・M
M・K
J・Y 図書館の書棚にあるのは知っていましたが、なかなか手が出せないシリーズでした。読み始める良い機会でした。「すべての道はローマに通ず」では、紀元前3〜400年頃から最盛期まで、ローマ人のレベルの高さにびっくりの連続でした。歴史というのは、いつ、どんな才能を持った人間を地球上に出現させるのか、まさに、神の仕業としか思えれないな、と思います。
M・K ローマ人の物語を通して、現代社会の構図を知る、といういい勉強になりました。自分の考え、生活観のしばりが感じられたことは、これからの自分の考えを見つめるのに今までとは違う第1歩を知った気がします。
T・S ゆっくりゆっくりローマがローマとして形を成していく紀元前6世紀頃の様子が、おぼろげながら私にも理解できたような気がします。ハンニバルが誰にも真意を明かさないまま大軍を率いてアルプスを越えローマに挑むところは「うわぉ」と声が出ました。作家がわずかな資料をもとに見てきたように「叙述」してくれるおかげです。いや、まさに作家にはローマ人たちが生きて動いているのが見えているのでしょうね。おもしろいからどんどん読みたいのだけれど少しずつしか進めません。速読の技を身に付けたいと思うこの頃です。

M・I
N・W 課題図書にならなければ読まなかった本。ほんの1部にしろ読むことができて良かった。ユリウス・カエサルの活躍した時代をたどることによって、当時の紀元前のローマの人々、イギリス、フランス、ドイツの人々の暮らしぶり、政治形態などを知ることができた。知らないことを知ることは楽しい!!知識として定着することは難しいだろうが、“知るを楽しむ”ひとときを持てて幸いだった。
T・Y 他国の歴史をベースにして、これほどの作品に仕上げ、見事に完結された作家塩野七生に、只畏敬の念を抱くばかりです。そして完読された田中さんに万歳!

H・T 塩野さんのこの長い本を読んで感じたことですが、まず第一にこの本は歴史資料ではなく塩野さん自身の主観による歴史物語じゃないかと、思います。私には全巻面白かったですが、とくにハンニバル戦記、ユリウスカエサル(英語読みジュリアスシーザー)、それから後半にでてくるキリスト教世界との関わりが特に面白いと、思いました。ハンニバルとシーザーに関しては作者自身が惚れ込んで男の中の男とゆう感じでとらえて描写していますし、キリスト教に関しては、デリケートな宗教問題を実に注意深く書いています。それから、興味のある方はシーザーの書いた「ガリア戦記」も読んでみてはいかがですか。2000年以上前に書かれた本ですが、実に簡潔な文章で作者の才能を感じます。
R・K
M・I
H・T 「ローマ人の物語」とても読めるものではないと思っていたが、文庫本1冊「ユリウス・カエサル 上」を読み出したら興味がわいて来てもう少し読んでみようかなぁと思ふ様になった。あまりにも広大な歴史的物語を綴る著者に只々感心。そして皆さんの話をきいて又々感激感心ばかり。しおりの会に出席出来る事を感謝する1日です。

おりひめ

カエサルの部分を1冊だけ、と思って読み始めたが、文章も事柄のとり上げ方も、とても読みやすいので、全巻読む気になった。ルビコン以前を読んでカエサルのすごさを再認識したことはもちろんだが、1巻を読んで、ローマは征服した人々を重用したり子息をローマに留学させるなど、意外な政策でもローマが大きくなっていったのがわかった。今までに見た、たくさんの映画のシーンも思い出された。

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