その他の紹介 または 感想 D   


塞王の盾

今村翔吾

集英社



2024/3/31

2021/10/30 発行
著者ーーー1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビューし、同作で第7回歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞を受賞。2018年「童神」(刊行時『童の神』に改題)で第10回角川春樹小説賞を受賞、同作は第160回直木賞候補となった。『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。2020年『じんかん』で第11回山田風太郎賞を受賞、第163回直木賞候補となった。2021年、「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第6回吉川英治文庫賞を受賞。他の文庫書き下ろしシリーズに「くらまし屋稼業」がある。

      ************************

 どんな攻めをも、はね返す石垣。
 どんな守りをも、打ち破る鉄砲 。「最強の楯」と「至高の矛」の対決を描く 「塞王」と「砲仙」

 越前・一乗谷城は織田信長に落とされた。幼き匡介(きょうすけ)はその際に父母と妹を喪い、逃げる途中に石垣職人の源斎(げんさい)に助けられる。匡介は源斎を頭目とする穴太衆(あのうしゅう)(=石垣作りの職人集団)の飛田屋で育てられ、やがて後継者と目されるようになる。匡介は絶対に破られない「最強の楯」である石垣を作れば、戦を無くせると考えていた。両親や妹のような人をこれ以上出したくないと願い、石積みの技を磨き続ける。秀吉が病死し、戦乱の気配が近づく中、匡介は京極高次(きょうごくたかつぐ)より琵琶湖畔にあ..る大津城の石垣の改修を任される。
一方、そこを攻めようとしている毛利元康は、国友衆(くにともしゅう)に鉄砲作りを依頼した。「至高の矛」たる鉄砲を作って皆に恐怖を植え付けることこそ、戦の抑止力になると信じる国友衆の次期頭目・彦九郎(げんくろう)は、「飛田屋を叩き潰す」と宣言する。
 大軍に囲まれ絶体絶命の大津城を舞台に、宿命の対決が幕を開ける――。

     **********************

 ダンス講師から小説家になった異色の作家。それだけでも面白いのに、歴史を見る視点もまたユニーク。

 今まで考えたこともなかった石垣職人の視点から見た時代。凄い!



蜩ノ記

葉室麟

祥伝社文庫



2024/3/19

平成25/11/10 発行
命を区切られたとき、人は何を思い、いかに生きるのか?

 豊後羽根(うね)藩の檀野庄三郎は不始末を犯し、家老により、切腹と引き替えに向山村に幽閉中の元郡奉行戸田秋谷
の元へ遣わされる。秋谷は七年前、前藩主の側室との密通の廉で家譜編纂と十年後の切腹を命じられていた。
編纂補助と監視、密通事件の真相探求が課された庄三郎。だが、秋谷の清廉さに触れるうち、無実を信じるように
なり……。凛烈たる覚悟と矜持を描く感涙の時代小説!
(解説 ロバート キャンベル)

         **************************

 「黒牢城」を読んで黒田官兵衛について他の作家もと捜したら葉室麟「風渡る」にたどり着き、葉室氏には直木賞を取った「蜩ノ記」があるではないかと読み始めた。

 第一四六回直木賞受賞作
 選考委員らは「受賞に値する作品」(渡辺淳一)、
 「深い素養がなくてはかけない作品」(宮部みゆき)、
 「定められた命を感情表現に頼らずに写し取った技は秀逸」(浅田次郎)、
 「若い作家ではこうはいかない」(伊集院静)と総じて好意的な評価をしているが
 、「主人公らが清廉すぎる」(林真理子)、
 「既視感に満ちた話」(桐野夏生)、
 「おどろきがない」(宮城谷昌光)など批判的な意見もあった

 たしかに主人公が清廉すぎ、できすぎ感があった。でも実在の人物であるらしい。


輝山
澤田 瞳子
徳間書店




2024/3/17
2021/9/30 発行
第165回直木賞受賞作家の受賞第一作!
あの山は命の輝きを永遠に宿し続けるいのちの山――

世界遺産・石見銀山を舞台に、懸命に生きる人々の生きざまを活写した歴史群像。

 代官・岩田鍬三郎の身辺を探るため、江戸から石見国大森銀山にやって来た金吾。代官所で中間として働き始めるが、そこで待っていたのは銀山を支えるため懸命に生きる人々との出会い。
命の危険にさらされながら間歩の中で鉱石を採掘する掘子、重い荷を運び母と妹を養う少年、世を憎み、酒浸りの日々を送る僧侶。そして彼らを慈悲深く見守る岩田鍬三郎……。
さまざまな思いに触れ、金吾はいつしか彼らに魅せられていく。
  他 「満つる月の如し

      ******************

 


どうぶつのお医者さん
1巻〜12巻
佐々木 倫子
1989/花とゆめcomics



2024/2/15
 著者ーーー

 進路に悩む高校3年生・西根公輝(通称:ハムテル)。抜け道に利用していたH大学構内で、「般若のような顔の子犬」と怪しい教授・漆原に出会い、彼の人生は大きく変わる…!? シベリアンハスキーのチョビ、猫のミケ、鶏のヒヨちゃん他 個性的な動物と人間に囲まれた賑やかな日々が幕を開ける

     **********************

 


風渡る

葉室麟

講談社




2023/12/24

2008/6/30 発行
著者ーーー福岡県立明善高等学校卒業。西南学院大学文学部外国語学科フランス語専攻卒業]。地方紙記者、ラジオニュースデスク等を経て]、2005年に江戸時代元禄期の絵師尾形光琳と陶工尾形乾山の兄弟を描いた『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞を受賞

50歳から創作活動に入り、4年後に文壇デビューを果たした。2007年、『銀漢の賦』で第14回松本清張賞を受賞。2012年、『蜩ノ記』で第146回直木三十五賞を受賞。久留米市を拠点に、敗者や弱者の視点を大切にした歴史時代小説を生み出し

2017年12月23日午前2時、病気により福岡県福岡市の病院で死去

    ************

 秀吉の懐刀・黒田官兵衛と、日本人修道士・ジョアン。2人は、未曾有の変革の時を、時代の風を受けて生き抜いた。居場所を求めて駆け抜けた2人。信長から、キリシタン禁止令の時期を、折々にかかわりあいながら生きてきた2人。お互いの心にあるものを察しながら、時代を体現した黒田官兵衛とジョアンの交歓を、さわやかに描く。

人に優しき稀代の名将・官兵衛

「神の罰より、主君の罰を恐れよ、主君の罰より、臣下、百姓の罰を恐るべし」。戦国の世で、神の愛のため戦うと誓った黒田官兵衛。土牢の幽閉から逃れ信長への謀反に暗躍、秀吉の懐刀となり勇名轟かせた策士でもあった。「民を貴しとなす」とした稀代の名将の真の姿が、新直木賞作家による渾身の筆で現代に甦る。

     *************************

 初読みの作家さん。黒田官兵衛がキリシタンだったとは。今までとは視線の角度が違っていて興味深かった。
 黒田官兵衛に関してはもっと他の作家のモノも読んでみたい。以前、司馬遼太郎のを読んだはずだが、覚えていない。残念。


複雑さを生きる
やわらかな制御

安冨 歩
岩波書店



2023/9/27
2006/2/22 発行
 生命は、錯綜する「因果交流電灯」のただなかに取り込まれながら、今日まで進化し続けてきた。われわれもまた、同じ複雑な諸関係の中で、さまざまのリスクに取り込まれながら、日常生活を営んでいる。
なぜこのようなことが可能なのか。
複雑系科学から得られる知恵を駆使しつつ、その不思議を理解する論理を構築するとともに、「原因→結果」の枠組みに依拠してより精緻な管理を目指す
思考の本質的問題を指摘し、複雑で多様な世界とかかわるための具体的方法として、間接的アプローチによる「やわらかな制御」を提示する。(表扉)

フォーラム共通知をひらく
 文理の壁を越えて、これまでの常識や定説にとらわれず、様々な立場や学問分野を代表する知の最前線を総結集し、現代社会の複雑な問題を解きほぐし、新しい思考のための広場から、新たな知のコスモロジーをきりひらく。(裏扉)

     **********************

 途中、面白く感じる部分もあったが、分ったような分らなかったような・・・・・・・。


日本人の知らない日本語 4
海外編

蛇蔵&海野凪子
メディアファクトリー



2023/5/3
2013/8/2 発行


日本人の知らない日本語 3
祝 卒業編

蛇蔵&海野凪子

メディアファクトリー



2023/5/1
2012/3/9 発行
イラストの愉快なうまさと、なるほどと思う内容の良さ

 

 花にみずをやる→× だったのが○になった例など


兼好さんの遺言
徒然草が教えてくれる
わたしたちの生き方
清川妙
小学館



2023/4/30
2011/4/2 発行
   著者ーーー

   ***************************

 著者は、兼好さんを紹介したいのね。
 
 若い人に向けて、生き方の指針を示してあげるのはいい。でも、人生が残り少なくなっている私にはもういいかな?


日本人の知らない日本語 2
爆笑!日本語「再発見」
コミックエッセイ

蛇蔵&海野凪子

メディアファクトリー



2023/4/23
2010/2/19 発行
**************************

 すっぱ抜くーースッパ(忍者)=透破 が素早く情報を手に入れる様から

 ら抜き言葉ーー出られるー出れる
 れ足すーーー書け れ る
 サイレーーー歌わ さ せていただく

 お通し=関東
 突き出し=関西

 かなの濁音の由来
 半濁音ーーポルトガル人から?

以上のことが面白く印象に残った事柄だった

読書日誌Top


日本人の知らない日本語
なるほど〜X爆笑!の
日本語”再発見”
コミックエッセイ

蛇蔵&海野凪子

メディアファクトリー



2023/4/16
2009/2/20 発行
「日本語の謎」に日々気づかされる日本語教師の日常。大爆笑の日本語バトル。

私が印象に残ったのは

 

   シカト  ピカイチ    これらは任侠言葉だったの?  オドロキ!


検事の信義
柚月 裕子
角川書店



2023/1/24
2019/4/20 発行
 著者ーーー1968年、岩手県生まれ。2008年、『臨床真理』で『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞を受賞。16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞を受賞。丁寧な筆致で人間の機微を描きだす、今もっとも注目されるミステリ作家の一人。他の著書に『最後の証人』『検事の死命』『蟻の菜園‐アントガーデン‐』『パレートの誤算』『朽ちないサクラ』『ウツボカズラの甘い息』『あしたの君へ』『慈雨』『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』『盤上の向日葵』などがある。

         *****************

 検事・佐方貞人は、亡くなった実業家の書斎から高級腕時計を盗んだ罪で起訴された男の裁判を担当していた。被告人は実業家の非嫡出子で腕時計は形見に貰ったと主張、それを裏付ける証拠も出てきて、佐方は異例の無罪論告をせざるを得なくなってしまう。なぜ被告人は決定的な証拠について黙っていたのか、佐方が辿り着いた驚愕の真相とは(「裁きを望む」)。
孤高の検事の気概と執念を描いた、心ふるわすリーガル・ミステリー!


        ***********************


プリズム
貫井 徳郎




2023/1/6
1999/10/25 発行
小学校の女性教師が自宅で死体となって発見された。彼女の同僚が容疑者として浮かび上がり、事件は容易に解決を迎えるかと思われたが……。万華鏡の如く変化する事件の様相、幾重にも繰り返される推理の構築と崩壊。究極の推理ゲームの果てに広がる瞠目の地平とは? 『慟哭』の作者が本格ミステリの極限に挑んで話題を呼んだ衝撃の問題作。

       ***********************

 著者の後書きにあったように、


遠い朝の本たち
須賀敦子
筑摩書房



2023/1/5
1998/4/25 発行
 人生が深いよろこびと数々の翳りに満ちたものだということを、まだ知らなかった遠い朝、「私」を魅了した数々の本たち。それは私の肉体の一部となり、精神の羅針盤となった――。一人の少女が大人になっていく過程で出会い、愛しんだ文学作品の数々を、記憶の中のひとをめぐるエピソードや、失われた日本の風景を織り交ぜて描く。病床の著者が最期まで推敲を加えた一冊。

           **********************

 
私の母の世代、母が集めていた中原淳一の絵の話も出てきたので親しみがわいた。
 読みながら、子供時代の友人のことや、当時考えていたことなどが思い出された。
 自分が何を読んできたのかも思い出されるし、いろいろと思いが広がる本だ。

 幼少期や戦時下の女学生時代、戦後に外国語を学び、自律したいと願いながらその足で海を渡っていく…そんな須賀さんが歩んできた一歩一歩の傍らにあった本たち
作者の豊かな読書の世界が素晴らしい。文章も。


まっくら
森崎 和江
三一書房



2022/11/7
1977/6/30 発行
 筑豊の炭鉱で働いた女性たちの声を聞き取り、その生き様を記録。自らへの誇りを失わず、真っ暗な地の底で過酷な採炭労働に従事した彼女たちの逞しさを生き生きと描く。

 森崎和江のデビュー作。筑豊の炭坑町に移り住み、「女炭坑夫たち」からの聞き書きを断片的な考察とともにまとめている。

       **************************

  


ビッグデータ・コネクト
藤井太洋
文春文庫



2022/10/22
2015/4/10 発行
著者ーーー1971年、鹿児島県奄美大島生まれ。2012年、ソフトウェア会社に勤務するかたわら執筆した長編小説『Gene Mapper』を電子書籍で自費出版。異例の話題を呼んだ同作は、加筆訂正ののち、2013年に『Gene Mapper‐full build‐』として商業出版される。2014年発表の第2長編『オービタル・クラウド』で、第35回日本SF大賞を受賞する

                   *        *         *


京都府警サイバー犯罪対策課の万田は、ITエンジニア誘拐事件の捜査を命じられた。協力者として現れたのは冤罪で汚名を着せられたハッカー、武岱。二人の捜査は進歩的市長の主導するプロジェクトの闇へと…。行政サービスの民間委託計画の陰に何が?ITを知りつくした著者が描くビッグデータの危機。新時代の警察小説。


        ***********************

 凄い! 緻密な設定。圧倒されてなかなか頭に入ってこないけど、夢中で読んだ。面白かった。



死者の雨
モヘンジョダロの墓標
周木 律
新潮社



2022/10/19
2018/9/20 発行
 「死者の丘」と呼ばれるモヘンジョダロを擁する都・パキスタンで人工知能学者のヒュウガ博士が謎の死を遂げる。調査を進めるうちに、同時期に世界各地で四人の博士の怪死体が発見された事実が判明。ヒュウガ博士の死と不可解な連続死の関係、そして、博士が遺した「アトラスの謎」の真相とは?京都・シンガポール・イタリア・インドを舞台に、完全記憶を持つ天才数学者、一石豊が人類最大の秘密を暴く!(Bookデータベース)

     *************************

 


転落の記

私が起こした
詐欺事件、その罪と罰

本間龍

飛鳥新社



2022/10/15
2012/1/27 発行
著者ーーー著述家。1962年、東京都に生まれる。1989年、博報堂に中途入社し、その後約18年間、一貫して営業を担当する。2006年同社退職後、在職中に発生した損金補填にまつわる詐欺容疑で逮捕・起訴され、栃木県の黒羽刑務所に1年間服役。出所後、その体験をつづった『「懲役」を知っていますか?』(学習研究社)で作家デビュー。東京電力福島第一原発事故を機に、博報堂時代の経験から、原発安全神話を作った広告を調査し原発推進勢力とメディアの癒着を追及。また、憲法改正国民投票や東京オリンピックなど、様々な角度から大手広告代理店のメディアへの影響力の実態を発信するなど、幅広く活動中。

主な著書に『名もなき受刑者たちへ』(宝島社)、『転落の記』(飛鳥新社)、『電通と原発報道』『原発広告』『原発広告と地方紙』(以上、亜紀書房)『大手広告代理店のすごい舞台裏』(アスペクト)、『原発プロパガンダ』(岩波新書)『メディアに操作される憲法改正国民投票』(岩波書店)『電通巨大利権』(サイゾー)、『広告が憲法を殺す日』(集英社)。2020年東京オリンピックにおける無償ボランティア問題の構造と欺瞞を告発した『ブラックボランティア』(カドカワ)。2018年11月より電子書籍ショートブック『東京五輪ボランティア問題アーカイブ』シリーズを刊行開始。2020年の開催まで、10巻以上の予定で東京五輪問題を追い続ける。

      *      *     *

  「たとえ順風な人生においても、落とし穴は至る所にある」博報堂元社員が、未公開株詐欺の顛末を語る。転勤、未回収売上金、一部上場、不倫…。企業人が堕ちていくすべての要素が詰まった、身につまされる悔恨の告白。


      *****************

 とても読みやすく面白かった。
 頭が良く、世の中も知り、物事のことも分っている人でさえ、魔が差したように犯罪に手を染めてしまういきさつが、よく分った。
 いつもyou tube で見ている人なので顔を思い浮かべながら読んだ。


博覧男爵

志川節子


祥伝社







2022/10/14

令和3/5/20 発行
 著者ーーー1971年、島根県生まれ。早稲田大学卒。2003年に「七転び」で第83回オール讀物新人賞を受賞。2009年に初単行本『手のひら、ひらひら 江戸吉原七色彩』を上梓する。つづく13年、『春はそこまで 風待ち小路の人々』が第148回直木賞候補となる。端整で凛とした作風が多くの読者に支持されている。本作は黒船来航に揺れる幕末に、日本を武力に頼らない真の文明国にするため、初めて博物館や動物園を創った田中芳男の絶えざる挑戦を描いた感動作。著書に『花鳥茶屋せせらぎ』(祥伝社文庫)『煌』『かんばん娘』等がある。

        *       *       *

  日(ひ)の本(もと)にも博物館や動物園のような知の蓄積を揃えたい!
黒船の圧力おびただしい幕末。信州飯田で生まれ育った田中芳男は、巴里で行われる万国博覧会に幕府の一員として参加する機会を得た。その衝撃は大きく、諸外国に比して近代文化での著しい遅れを痛感する。軍事や産業を中心に明治維新が進む中、日の本が真の文明国になるためには、フランス随一の植物園ジャルダン・デ・プラントのような知の蓄積を創りたい。
「己れに与えられた場で、為すべきことをまっとうする」ことを信条とする芳男は、同じ志をもつ町田久成大久保利通らと挑戦し続け、現代の東京国立博物館や国立科学博物館、恩賜上野動物園等の礎を築いていく……。

     **********************

 芳男は石を集めていた。子供の頃、私も集めていたなあ、というのを思い出した。

 読後の印象としては地味だなあ、ということ。私が知らなかっただけでその世界では知られた人らしいが、「博物館の父」と呼ばれた人とは思えなくて、他の人の方が尽力したような印象を受けた。

 他の書評でももっと書きようがあるのでは・・・・というのがあった。

 


ヴェネツィアの恋人
高野 史緒
河出書房新社



2022/8/26
2013/2/18 発行
著者ーーー1966年茨城県生まれ。茨城大学卒業。お茶の水女子大学人文科学研究科修士課程修了。1995年、第六回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作「ムジカ・マキーナ」でデビュー。2012年「カラマーゾフの妹」で第五八回江戸川乱歩賞を受賞。他の著書に、「カント・アンジェリコ」「架空の王国」「ヴァスラフ」「ウイーン薔薇の騎士物語シリーズ」「アイオーン」「ラー」「赤い星」編著に「時間はだれも待ってくれない 21世紀東欧SF・ファンタスチカ傑作集」などがある。

      *      *      *

 短編集ーガスパリーニ/錠前屋/スズダリの鐘つき男/空忘の鉢/ヴェネツィアの恋人/白鳥の騎士/ひな菊

 怪しくも美しい七夜の物語。さあ、その欲望の代償をお支払い下さい。ーーーという内容紹介があるだけで、他の書物のような紹介がない。
 読みにくかった。何だろう?何が言いたいの?SF?ファンタジー?
 そう思って読めば少しはこの作者の世界に入って行けそうかな?

 前回読んだ本の感想の所に「歴史改変が18番の作家」というのがあって、ああ、それなら分かる、と思った。でも楽しめるところまでは行かなかった。


店長がバカすぎて
早見 和真
角川春樹事務所



2022/8/4
2019/7/18 発行
谷原京子、二十八歳。吉祥寺の書店の契約社員。超多忙なのに薄給。お客様からのクレームは日常茶飯事。店長は山本猛という名前ばかり勇ましい「非」敏腕。人を苛立たせる天才だ。ああ、店長がバカすぎる! 毎日「マジで辞めてやる」と思いながら、しかし仕事を、本を、小説を愛する京子は――。全国の読者、書店員から感動、共感、応援をいただいた、二〇二〇年本屋大賞ノミネート作にして大ヒット作。

         **********************

 図書館で予約数が多くなかなか手に取ることができなかった。読んでみると、もの凄く読みやすい。
 第1話 店長がバカすぎて
 第2話 小説家がバカすぎて
 第3話 弊社の社長がバカすぎて
 第4話 営業がバカすぎて
 第5話 神様がバカすぎて
 第6話 結局、私がバカすぎて

 


アールダーの方舟
周木 律
新潮社



2022/5/30
2014/12/20 発行
 これは、怒れる神の鉄槌なのか。伝説の地、アララト山で、ノアの方舟調査隊隊員が次々と壮絶な最期を遂げる。背筋も凍る事態に直面したのは、あらゆる知識をその頭蓋に収めた天才学者、一石豊。一石はカメラマン・森園アリスと共にこの連続死の謎に挑み、同時に方舟の真実を解き明かしてゆく。気鋭の推理小説作家が構築した、美しくも壮大なミステリ大伽藍。

 文庫化にあたり「雪山の檻」〈ノア方舟調査隊の殺人)と改題
         
*************

    うんざりするほど理屈っぽい、と思ったのにまたこの作者のモノを読んでしまった。読みながら思う。頭の中の知識をありったけ見せびらかすために作った小説なのか?と。
 今回有り難く教えていただけるのは宗教についてだ。キリスト教、ユダヤ教、イスラム教、それらの派閥の違いや、誤解している事柄など。
 アール・ダー 『痛みの山」

 他の人の感想にもあるが、アララト山を舞台にしたノアの箱舟にまつわるミステリと聞いて興味を持ち読んでみたが、一石豊という男が自分の宗教に対する意見を述べるページだけで全体の3分の1以上あり、宗教話で膨らませたあまり内容のないミステリーーーということになるかな。



眼球堂の殺人
The Book

周木 律
講談社novels



2022/5/17
2013/4/3 発行
著者ーーー周木 律 某国立大学建築学科卒業。『眼球堂の殺人 ~The Book~』(講談社ノベルス、のち講談社文庫)で第47回メフィスト賞を受賞しデビュー。同書に始まる堂シリーズの他、著書に『アールダーの方舟』(新潮社)、『災厄』『暴走』(KADOKAWA)、『猫又お双と消えた令嬢』『猫又お双と教授の遺言』、『猫又お双と一本足の館』(いずれも角川文庫)、『不死症(アンデッド)』(実業之日本社文庫)がある。

        *        *        *

新たな理系&館ミステリ。シリーズ第一作神の書、"The Book"を探し求める者、放浪の数学者・十和田只人(とわだただひと)がジャーナリスト・陸奥藍子と訪れたのは、狂気の天才建築学者・驫木煬(とどろきよう)の巨大にして奇怪な邸宅"眼球堂"だった。二人と共に招かれた各界の天才たちを次々と事件と謎が見舞う。密室、館、メフィスト賞受賞作にして「堂」シリーズ第一作となった傑作本格ミステリ!


       *************************

  うんざりするほど理屈っぽい。
 これ、メフィスト賞なのか?こういうのを好きな人がいるってことね。
 シリーズだけど、次の作品を読む気になれなかった。


殺人事件が起きたので
謎解き配信
してみました

越尾 圭
宝島社文庫



2022/5/15
2020/10/20 発行
著者ーーー1973年、愛知県知多郡東浦町生まれ。同志社大学文学部中退。早稲田大学教育学部卒業。第17回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉として「クサリヘビ殺人事件蛇のしっぽがつかめない』にて2019年にデビュー。

        *        *       *

人気動画配信のソウスケが生配信中にカメラの前で突然死んだ。果たしてこれは事故か殺人か。配信を見ていた友人の動画配信者カイは、世話になったソウスケの恩義に報いるべく彼の死の謎に迫ろうと決意。パートナーの千尋を説得し、自身の推理を披露する配信を開始する。一方、警察は事件を殺人と断定。捜査一課の田井中も捜査に加わるが、彼もまた人気動画配信者という裏の顔を持ち・・・・・・。

        **********************

 今時の小説だなあ。
動画配信者が事件の被害者であり、謎解きもそうだし、警察関係者もこっそり動画配信していたり。
 私は凄く面白かったが、年配者には理解不能なのかもしれないと年配者である私が言うのもおかしいが。
 


陰翳礼賛
谷崎潤一郎
青空文庫


2022/4/16
タイトル通り、ただひたすら陰翳の良さを礼賛している。
なるほどと思うところもあれば、アレ?違うかな?と思うところもある。
西欧は明るすぎる・・・・・というのは違うような・・・・・部屋の照明は現代では日本の方が蛍光灯で明るすぎ、西欧の方がスポットライト程度の室内の明かりではないかな。

女性について書いている部分も??が。
女性を人間とおもってないかのような、失礼な感覚→私の思い違いか?


わたしの良い子
寺地はるな
中央公論新社



2021/12/18
2019/9/10 発行
著者ーーー佐賀県 唐津市 出身 。 高校卒業後、アルバイトやパソコン教室通いをし20歳で就職 。 32歳で結婚し、 大阪府 に転居 。 会社勤めと主婦業の傍ら、35歳から 小説 を書き始める 。 別名義で応募した作品が第29回・第30回 太宰治賞 、第10回日本ラブストーリー&エンターテインメント大賞の最終候補となる 。 2014年 、「ビオレタ」で ポプラ社 が主催する第4回 ポプラ社小説新人賞 を受賞する 。 2020年 、『夜が暗いとは限らない』で第33回 山本周五郎賞 候補。 2021年、『水を縫う』で第42回 吉川英治文学新人賞 候補。

        *******************

 「どうしてちゃんとできないの?他の子みたいに」 出奔した妹の子ども・朔と暮らすことになった椿。 勉強が苦手で内にこもりがちな、決して《育てやすく》はない朔との生活の中で、椿は彼を無意識に他の子どもと比べていることに気づく。 それは、大人としてやってもいいことなのだろうか――。 大人が言う「良い子」って、何?

       **************

  女性共感率No.1作家・・・・・だそうだが?
  当たり前の日常生活を描いたものにはあまり関心がわかない。
 共感するよりもっと刺激的な内容が私にはいい。


トワイライト
Twilight
ラブ&ブラッド!
ヴァンパイヤ・ロマンス
ステファニー・メイヤー
Stephenie Meyer
小原亜美 訳



2021/11/30
2005/8/20 発行
「きみは自分のことがぜんぜん見えていない。きみ はこれまで会った誰とも違うんだ」
ハチミツ色の瞳、シルクのような声、彫刻のような横顔……
雨と霧の街フォークラスで出会った美少年エドワードは、他とは違う空気をまとっていた。
なぜかベラだけをにらみつけ、避けようとするエドワード。そこには、彼にしかわからない秘密が隠されていた。
土地に伝わる<冷人族>の伝説、狼を守り神とするインディアンの掟……。
禁断の恋におちたベラとエドワードの切なく甘い運命が動きはじめる。

      **************************

 娘の所有していた本を読んでみた。
 ティーン向け小説シリーズ、全世界でシリーズ合計で1億部以上を売り上げている。
 2008年に映画化され、シリーズ5作累計で全世界興収33億ドル超を記録し、ヤングアダルト小説の映画化ブームの火付け役となった「トワイライト」シリーズ。

 ということだが、大人の私が読むと、ちょっと・・・・。


明治維新とは何だったのか
〜薩長抗争史から「史実」を読み直す

一坂太郎
創元社



2021/11/16
2017/11/20 発行
 著者ーーー1966年、兵庫県芦屋市生まれ。幕末維新史研究家。萩博物館特別学芸員、至誠館大学特任教授、防府天満宮歴史館顧問、春風文庫主宰。大正大学文学部史学科卒
 著書に『長州奇兵隊 勝者のなかの敗者』『吉田松陰とその家族』『幕末歴史散歩 東京編』
『幕末歴史散歩 京阪神編』『高杉晋作の「革命日記」』『高杉晋作を歩く』
『坂本龍馬を歩く』『高杉晋作』『司馬遼太郎が描かなかった幕末』など。


        ****

 明治維新を推し進めたのは、内戦の「勝者」である薩摩・長州の下級武士たちであった。しかし、薩長は常に協力して近代日本を建設したわけではなかった。権力闘争を繰り返して派閥を生み、その構図は戦争の時代へとつながっていく。本書は薩長がなぜ時代をリードできたのか、その功罪は何かを中心に、丹念に一次史料をたどって再検証するもの。150年の間に書き換えられてきた「史実」を問い直す。

     **************************

 薩摩は体育会系で長州は文化会系、お芋とお萩
 明治政府は、薩長で交代で総理大臣を出すことにした・・・・とか?
 長州は朝敵だったはずなのに・・・・と思ったり、西郷が闘いたがったとか、今まで知らなかったことばかり。


エンジェルフライト
国際霊柩送還士
佐々 涼子
集英社



2021/11/2
2012/11/30 発行
著者ーーー1968年神奈川県横浜市出身。早稲田大学法学部卒業。日本語教師を経てフリーライターに。新宿歌舞伎町で取材を重ね、2011年『たった一人のあなたを救う駆け込み寺の玄さん』(KKロングセラーズ)を上梓。2012年『エンジェルフライト―国際霊柩送還士』で第一〇回開高健ノンフイクション賞を受賞

        *****

運ぶのは遺体だけじゃない。国境を越え、“魂”を家族のもとへ送り届けるプロフェッショナルたち。2012年第10回開高健ノンフィクション賞受賞。

     *********

 読むまでこのような仕事があることに気づきもしなかった。
 凄い人たちだ。有り難いとも思った。

 他に紙つなげ!彼らが本の紙を造っている  もある


建築士探偵の事件簿
蒼井碧
宝島社



2021/8/26
2020/10/29 発行

不結論馬(ふゆいろんま)は大学院で建築史を研究している学生である。

論馬は高校時代に義兄の秀一(しゅういち)と共に旅先で不可思議な事件に遭遇する。それから九年経った今、論馬を訪ねてきた女性歴史学者、由布院蘆花(ゆふいんろか)との出会いをきっかけに、再び奇妙な事件に巻き込まれていく。

鍾乳洞内で発見された首無し死体、新雪に覆われて密室状態になったログハウス内での大量殺人、誰もいない場所での謎の発火。それらの事件に向き合うことで、「世界七不思議」という歴史的建造物の謎を解明することとなる。

      **********************

  歴史的建造物「世界七不思議」と日本に現存する「七つの景観」との関係について述べる蘊蓄は、まあ良かったが、建築士か?建築史?探偵か?あまりピントこなかった。
 以前に読んだ「オーパーツ死を招く至宝」も「このミステリーがすごい!」大賞だったらしいが、いまいちだった。


椿山課長の七日間

浅田次郎
朝日新聞社



2021/7/29
2002/10/1 発行
 働き盛りの46歳で突然死した椿山和昭は、家族に別れを告げるために、美女の肉体を借りて七日間だけ“現世”に舞い戻った! 親子の絆、捧げ尽くす無償の愛、人と人との縁など、「死後の世界」を涙と笑いで描いた。

      ***********************

  映画になっている。椿山課長が死後に偶然知り合ったヤクザ武田組長、7歳の雄太少年の初七日の間のドラマ。


天涯の海
 酢屋三代の物語

車 浮代

潮出版社



2021/7/18
2020/10/20 発行
著者ーーー 〈車浮代〉大阪府出身。時代小説家/江戸料理文化研究家。国際浮世絵学会会員。著書に「蔦重の教え」「免疫力を高める最強の浅漬け」など。

江戸後期。知多郡半田村で酒造業を営む五代・中野半左衛門の急死により、婿養子に迎えられた三六は、酒造りの傍ら酒粕を使った粕酢造りを思いつく。

後に分家を許された三六は、又左衛門を興す。初代から二代、三代へと、粕酢造りは受け継がれていくが、彼らの行く手には幾多の苦難が待ち構えていた。三人の又左衛門は、いかにして粕酢を江戸中に広めたのか――。

いまや世界で愛される日本の寿司(SUSHI)。その流行の淵源となった「粕酢」に生涯をかけた人々の歴史長編小説。

     ********************


こぐちさんと僕の
ビブリアファイト部
活動日誌2



ビブリア古書堂の事件手帖スピンオフ

峰守ひろかず
原作・監修 三上延

電撃文庫





2021/7/14
2018/10/10 発行
 旧図書室を護るため、生徒会長の旭山扉から課されたビブリアファイトを戦い抜いた響平とこぐち。なんとか部室の廃止は免れ、二人も新学年へと進級した。
 新部員の戸成早紀も加わり、ますますビブリアファイトへの熱も高まるかと思いきや、ちょっとだけ増えた旧図書室の利用者の相手をしたり、響平はこぐちに想いを伝えられずモヤモヤしたりと相変わらずの日々。しかし、思いがけず市立図書館で小学生に本の紹介をすることになった一行は、そこで出会った聖桜女学園のお嬢様、天塚のどかとビブリアファイト三番勝負をすることになり──。
 実在の名作も多数登場する、本好き少女と恋する少年を描く、青春の1ページ。

       ***********************


老乱

久坂部 羊
朝日新聞出版



2021/7/6
2016/11/30 発行
著者ーーー1955年大阪府生まれ。医師、作家。大阪大学医学部卒。20代で同人誌「VIKING」に参加。外務省の医務官として9年間海外で勤務した後、高齢者を対象とした在宅訪問診療に従事。2003年、『廃用身』で作家デビュー。2014年、『悪医』で第3回日本医療小説大賞受賞

        *

老い衰える不安をかかえる老人と、介護の負担でつぶれそうな家族。介護する側の視点だけでなく、認知症になった老人の心の動きも細やかに描き、親と子の幸せのかたちを探る。在宅医療を知る医師でもある著者が描く、迫力満点の認知症小説。

       ****************************

 


こぐちさんと僕の
ビブリアファイト部
活動日誌


ビブリア古書堂の事件手帖スピンオフ

峰守ひろかず
原作・監修 三上延

電撃文庫



2021/7/3
2017/3/10 発行
鎌倉のとある高校に、豊富な蔵書を持ちながら、利用者が少なく廃止寸前の旧図書室があった。図書部に在籍する、読書すると作品世界に没頭しちゃう小動物系な卯城野こぐち。彼女はその体質から、落ち着いて読書できるのが旧図書室だけだった。そんな旧図書室とこぐちを助けるため、秘密の趣味は朗読配信と中二病な小説執筆の前河響平が立ち上がる。生徒会長に掛け合うと、旧図書室維持のため、生徒同士で書評バトルを行う「ビブリアファイト」に挑むことになり―。お勧めの本をプレゼンするビブリアファイトでは、実在の名作を多数紹介。原作小説の栞子さんも登場する、本好き少女と恋する少年を描く、青春の1ページ。

     ****************************

 「電撃文庫リザレクションシリーズ」で、人気シリーズの外伝を原作とは別の作家が書くというもの。

 ラノベしか読まない読者層にこのような形で過去の名作を紹介するのはなかなか面白い企画だ。


 響平くんに言わせれば『若草物語』は百合日常モノとなり『ホームズ』はおっさん同士のラブコメディとなる。堅っ苦しいイメージがつきまとう古典でも、響平くんのレビューや楽しそうに語るこぐちさんの書評は意外性がある。こんな読み方があるのかと驚いた。

 人物造形が物足りなく思ったりもしたが、ラノベの青春ものってこんなに軽いのかと思って納得。それなりに楽しめた。


末期ガンになったIT社長からの手紙

藤田憲一

幻冬舎



2021/4/14

2006/6/10 発行
著者ーーー1970年愛媛県生まれ。中央大学法学部卒。(株)NCI代表取締役社長。ダイレクトマーケティング広告会社、大手広告会社で戦略プランナー、シンクタンクで新規事業を担当し、女性サイトのCEO(最高経営責任者)、ポータルサイト運営の電機メーカー子会社事業部長を経て、現職。商品開発、広告戦略企画、新規事業育成において驚異的な確率でヒット商品を手掛けることで知られる。33歳でガン発病、35歳で再発、余命3カ月の宣告を受け、本書を執筆しつつ、ガンと闘った。2006年10月永眠。享年三六歳

        *      *

IT(情報技術)業界で大きな成功を手にした若手起業家が、ある日「末期ガン、余命数カ月」の宣告を受けた。物質面、金銭面では「もう望むものはない」などと達観したかのようなそぶりを見せる著者。しかしその一方で、「結婚がしたい。子供を残したい」と生への未練を包み隠さず吐露する。

最初のガンの発見と手術から1年半後に再発が判明し、余命宣告を受けたのは今年の1月だ。6月現在も、著者は「メディアとネットの融合」を目標に事業運営を続けている。本書の最終章では、実務の事業計画書を模して作った「人生の総仕上げ」を公開。IT業界と今後のガン治療発展のために、自分ができることは何かを冷静に見つめ、率直な言葉で綴る。著者は、残された人生を「人生の休日」ではなく「世の中への貢献期間」と決意した…。

        *************************



ひとりの午後に
上野千鶴子
NHK出版



2021/3/29
2010/4/25 発行
読み進めるうちに読者は、いつのまにか「一人で生きていくこと」を考えるようになっていく。『おひとりさまの老後』が大ヒットした上野さんだが、上野さんが実際に一人で生きている上での心境や生活の様子が、ここには綴られている。

       ********************************

 読み始めてすぐは甘いお菓子のことばかりだったので、なんだよう、と思った。
 少しばかり読み進んだら、さすが、という感性になってきた。
 それでも、今まで持っていた上野氏のイメージとは違うのでいささか驚く。とくに「おしゃれ工房」に連載したのが非常に驚きの元になった。
 あとがきを読んで納得した。編集者が「これまでの読者が知らない、新しい一面を引き出すようなエッセイを」と要求されたからだそうだ。だから意外性のあるおしゃれ工房だったり内容だったりしたのか。

 女は助手席でいい、という父親の言いなりだったが、必要に迫られ免許を取ったらスピード狂になってしまったとか、浅川マキの歌が好きだとか、コンパで歌を強要されて私も浅川マキを歌った記憶が甦り、なかなか面白く読ませてもらった。

 そしてさすがだと思うのは、日常のことを語っているようで鋭い感性を感じる内容であり、社会学者なんだなあと思う。


夜行

森見登美彦

小学館



2021/3/3

2016/10/30 発行
十年前、同じ英会話スクールに通う僕たち六人の仲間は、連れだって鞍馬の火祭を見物にでかけ、その夜、長谷川さんは姿を消した。十年ぶりに皆で火祭に出かけることになったのは、誰ひとり彼女を忘れられなかったからだ。夜は、雨とともに更けてゆき、それぞれが旅先で出会った不思議な出来事を語り始める。尾道、奥飛騨、津軽、天竜峡。僕たちは、全員が道中で岸田道生という銅版画家の描いた「夜行」という連作絵画を目にしていた。その絵は、永遠に続く夜を思わせた―。果たして、長谷川さんに再会できるだろうか。怪談×青春×ファンタジー、かつてない物語。直木賞&本屋大賞ダブルノミネート作品。(bookデータベース)

        ******************************

 第1話から第4話まで、どれも尻切れトンボ。
 最後にオチらしき物、パラレルワールド?
 なんで直木賞ノミネート?表現力、文章力はありそうなので評価されたのか、でもすっきりしない。

 森見ワールドが好きな人たちがいるらしい。私は好きになれなかった。

 直木賞の選考委員の言葉、高村薫氏の「怪奇小説なので、人間の手触りなどは求めないが、怪談は怪談なりに仕掛けの整合性が欠かせない。思いつきで繰り出した異界の仕掛けがあちこちで放置されたままになっており、描きかけの習作を見せられているようだった。」や
 東野圭吾氏の「「私の苦手なジャンルの小説だ。」「おそらく合理性を求めるのは野暮で、作者の描く風景が好きか嫌いかという問題だろうが、私は最後まで疑問がいくつも頭に残ったままになる読書は、あまり好きではない。しかし文学性という点でほかの委員が高評価をつけるなら、反対はしないつもりだった。」という評価がしっくりきた。


オーパーツ死を招く至宝
蒼井 碧

宝島社



2021/1/23
2018/2/1 発行
 貧乏大学生・鳳水月の前に現れた、自分に瓜二つの男・古城深夜。鳳の同級生である彼は、オーパーツ―当時の技術や知識では制作不可能なはずの古代の工芸品―の、世界を股にかける鑑定士だと自称した。水晶髑髏に囲まれた考古学者の遺体に、密室から消えた黄金シャトルなど、謎だらけの遺産をめぐる難攻不落の大胆なトリックに、変人鑑定士・古城と鳳の“分身コンビ”の運命は?

      ***********************

  主人公に、オーパーツ鑑定士というキャラクターを配置しただけあって、水晶髑髏だの黄金シャトルだの恐竜だのストーンヘンジだの、うんちくがすごい。密室トリックなども、それなりに工夫はされている。

 オーパーツが好きだから読んでみたが、「このミステリーがすごい!」大賞を取った作品とは思えないかも。


日本軍兵士
ーーアジア・太平洋戦争の現実



吉田裕

中公新書





2020/7/28


2017/12/25 発行
著者ーーー1954(昭和29)年生まれ。77年東京教育大学文学部卒。83年一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。83年一橋大学社会学部助手、助教授を経て、96年より一橋大学社会学部教授。2000年より一橋大学院社会学研究科教授。専攻・日本近現代軍事史。日本近現代政治史

      *      *      *

日本軍兵士の過酷すぎる実態 語り継がれていないアジア・太平洋戦争

アジア・太平洋戦争による日本人死者は、民間人が80万人、軍人・軍属が230万人の計310万人。日露戦争の戦没者が9万人であることを踏まえると、とてつもない数字だ。さらに驚くべきことに、その9割が戦争末期、1944年以降のわずか1年ほどのあいだに亡くなったと推算されるという。短期間に甚大な死を引き起こす要因となった、日本軍兵士たちのおかれた苛酷な肉体的・精神的状況の実態を、豊富な資料に基づき緻密に描き出した新書が売れている。

「被爆や空襲、沖縄戦のような体験は、いまなおよく語り継がれています。しかし戦場の話は、多くの人が従軍したにもかかわらず、あまり語り継がれていない。関連した本も最近の作品は漠然とした内容が多い。そこを具体的に、詳細に書いたことが、驚きをもって多くの読者に受け止められたのではないでしょうか」(担当編集者)

昨今、日本軍の勇猛さをとかく賞賛するような本も多いが、本書は異を唱える。立論に説得力があるのは、情緒に流れていないからだ。

 異常に高い餓死率、30万人を超えた海没死、戦場での自殺と「処置」、特攻、体力が劣悪化した補充兵、靴に鮫皮まで使用した物資欠乏・・・・・勇猛と語られる日本兵たちが、特異な軍事思想の下、凄惨な体験を強いられた現実を描く。

「著者は兵士の目線、地を這うような目線での具体的な体験談を紡ぎ出すと同時に、鳥瞰的に戦争を捉えることも忘れません。他国と比べて異常に高い餓死率など客観的な数字を記することで、極端な例だけを取り上げた恣意的な内容ではないとわかり、兵士たちの『声』がより真に迫るものに感じられるんです」(担当編集者)評者:前田 久         (週刊文春 2018年05月24日号掲載)

      ***********************

 2019年新書大賞第1位。

 小説の形で読むよりもデータと事実の連なりが、私に凄さを伝える。
 この本を読むまで気づかなかったことがたくさんある。兵隊は、歯磨きができなくて歯が悪くなる。特攻機は浮力があってスピードが出なくなる、など。


帰郷
浅田次郎
集英社



2020/7/14
2016/6/30 発行
 著者ーーー1951年東京都生まれ。95年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、97年『鉄道員』で直木賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、06年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞と司馬遼太郎賞、08年『中原の虹』で吉川英治文学賞、10年『終わらざる夏』で毎日出版文化賞を、それぞれ受賞。15年に紫綬褒章を受章。16年『帰郷』で大佛次郎賞を受賞

         *        *        *        *

 戦争は、人々の人生をどのように変えてしまったのか。帰るべき家を失くした帰還兵。ニューギニアで高射砲の修理にあたる職工。戦後できた遊園地で働く、父が戦死し、その後母が再婚した息子…。戦争に巻き込まれた市井の人々により語られる戦中、そして戦後。時代が移り変わっても、風化させずに語り継ぐべき反戦のこころ。戦争文学を次の世代へつなぐ記念碑的小説集。第43回大佛次郎賞受賞作。 (Bookデータベース))

       *******************************

 氏の作品は初めて読む。今まではなぜか拒絶反応があって読まなかった。読みやすいとか面白いとかの評価は知っていたのだが。
 そして読んでみたら確かに読みやすかった。
 ただ、私より年下の戦争経験の無い人が書いた戦争関連の物語だから、作った話なんだな、と思って上滑りしていった。


満つる月の如し
仏師・定朝

澤田瞳子
徳間書店



2020/7/9
2012/3/31 発行

 著者ーーー1977年、京都府生まれ。同志社大学文学部卒業、同大学院博士前期課程修了。奈良仏教史を専門に研究したのち、2010年に長編作品『孤鷹の天』でデビューし、同作で中山義秀文学賞を受賞。2013年『満つる月の如し 仏師・定朝』で新田次郎文学賞受賞。2016年『若冲』で親鸞賞を受賞(直木賞候補にも)。他の著書に『日輪の賦』『泣くな道真 大宰府の詩』『与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記』『腐れ梅』『火定』(吉川英治文学新人賞および直木賞候補)『龍華記』『落花』(山本周五郎賞および直木賞候補) 「京都鷹ヶ峰御薬園日録」シリーズがある。作家・澤田ふじ子の娘。

    ********************

 時は藤原道長が権勢を誇る平安時代。若き仏師・定朝はその才能を早くも発揮していた。道長をはじめとする顕官はもちろん、一般庶民も定朝の仏像を心の拠り所とすがった。が、定朝は煩悶していた。貧困、疫病が渦巻く現実を前に、仏像づくりにどんな意味があるのか、と。華やかでありながら権謀術数が渦巻く平安貴族の世界と、渦中に巻き込まれた定朝の清々しいまでの生涯を鮮やかに描き出した傑作。(Bookデータベース))

       *****************************

 ずいぶんと読み応えがあった。


あの天才がなぜ転落
伝説の12人に学ぶ
「失敗の本質」

驚愕の破滅人生!

玉手義朗著



2020/6/30
2019/4/22 発行
  著者ーーー1958年生まれ。筑波大学社会工学類卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行(現JPモルガン・チェース銀行)などで、外国為替ディーラーの経験を積む。1992年、TBS(東京放送)入社。経済部デスクや経済キャスターなどを務める傍ら、経済関連の書籍や記事を執筆。TBSを定年退職した後、現在はフリーランスのエコノミスト、メディア評論家として活動。日本の近代西洋建築に造詣が深く、各地に残る名建築を200以上訪問

    *    *    *    *

 “エジソンを打ち負かした天才科学者”“三菱・三井を超える巨大商社を率いた名参謀”“史上最大のバブルを生んだフランス中央銀行総裁”“松下幸之助と並び称された瀬戸内の再建王”“リッチな証券マン生活を捨てた異能の画家”あれほどの成功をつかんだ男がなぜ?リスクをとって攻め続けた人生を称え、その敗因に学ぶ。(Bookデータベース)

         ***************************

  エジソンは知っていてもテスラのことはこの本を読むまで知らなかった。会社の名前として知っていただけだ。でもエジソンよりも凄い天才だったことは、今ちょうど映画になっている。映画ではテスラを支援した人物の方が主役だが。むしろ、「エジソンって、そんなにお金にこだわる人だったんだ……」ということに驚きながら読んだ。

 失敗した人の人生ばかりを集めたのを読み続けると、気持ちが沈む。でも、失敗の本質を筆者が、経済的視点から分析してあり、参考になる話ではある。


ハッピーバースデー
青木和雄 吉富多美
金の星社



2020/6/21
2005/4/ 発行
 実の母親に愛してもらえず、誕生日さえ忘れられてしまった11歳の少女・あすかは、声を失ってしまう。しかし、優しい祖父母の元で自然の営みに触れ、「いのち」の意味を学ぶ。生まれかわったあすかがどんな行動を起こすのか。そして、母親の愛は戻って来るのか…
「ああ、あすかなんて、本当に生まなきゃよかったなあ。」自分の思い通りに成長した長男に比べ、できの悪い娘あすかに容赦ない言葉を浴びせる母静代。しかし静代の見せかけの鎧は、職場の年若い上司なつきによって徐々に剥がされていく。愛に餓え、愛を求めて彷徨う母娘の再生の物語。 (Bookデータベース)

    ****************************

 子供は可愛いはずなのに、どうして可愛がってやれないのか?・・・・・・・それはきっと母親に何かトラウマでもあって問題があるのだろう、と思っていたらやはりそうだった。
 母、静子は幼い頃、病弱な姉ばかりを両親がかまって自分が放って置かれたと思い込んでいた。

 読みながら連想したのは、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの弟さん達は、疎外感を感じたりはしなかったのだろうか、ということだった。

 それと、自分の子育てで、子供に嫌な想いをさせてなかっただろうか、ということも反省しながら読んだ。

 これは児童書ということだが、親が読むべき物語かもしれないなあ。


紙鑑定士の事件ファイル
模型の家の殺人

歌田 年
宝島社



2020/6/3
2019/8/28 
どんな紙でも見分けられる男・渡部が営む紙鑑定事務所。ある日そこに「紙鑑定」を「神探偵」と勘違いした女性が、彼氏の浮気調査をしてほしいと訪ねてくる。手がかりはプラモデルの写真一枚だけ。ダメ元で調査を始めた渡部は、伝説のプラモデル造形家・土生井と出会い、意外な真相にたどり着く。さらに翌々日、行方不明の妹を捜す女性が、妹の部屋にあったジオラマを持って渡部を訪ねてくる。土生井とともに調査を始めた渡部は、それが恐ろしい大量殺人計画を示唆していることを知り―。第18回『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作。

       ********************************

 


僕はイエローでホワイトで、
ちょっとブルー


ブレイディみかこ
新潮社



2020/4/16
2019/6/20 発行
優等生の「ぼく」が通う元・底辺中学は、毎日が事件の連続。人種差別丸出しの美少年、ジェンダーに悩むサッカー小僧。時には貧富の差でギスギスしたり、アイデンティティに悩んだり。世界の縮図のような日常を、思春期真っ只中の息子とパンクな母ちゃんの著者は、ともに考え悩み乗り越えていく。落涙必至の等身大ノンフィクション。

     *********

 


鎮西八郎為朝
上・下
南條範夫
文春文庫



2020/3/23
1990/12/10 発行
 源氏の御曹司ながら、その自由剛気な性格を父・六条判官為義に嫌われ、都から遠く離れた九州・豊後へ放逐された若き源為朝。許婚の美姫白縫に横恋慕する平氏の豪族“肥後の白虎”平康則との確執から、ついに自らの恋と青春をかけ、一騎当千の家来・郎党をひきいて鎮西九国の平氏と対決することに―波瀾万丈の痛快時代巨篇。(上)

 許婚の美姫白縫を宿敵・平康則に奪われた八郎為朝は、彼女を追って康則の本拠川尻を攻撃するが、白縫の姿はなかった。だが海千山千の家来・紀平次の活躍によって彼女と再会を果した八郎は、伝説の反逆児であった祖父陸奥二郎義親とめぐり合い、その後だてを得て、いよいよ平氏方の豪族討伐に立ちあがった。 (下)

         ****************************

 ずいぶんとくだけた内容で読みやすかった。
 解説にあったが、戦後の時代小説第1次剣豪小説ブームの三人の一人、他は五味、柴田。戦前の時代物には見られなかった斬新な手法だそうである。解説は武蔵野次郎。



妹背山婦女庭訓 魂結び

大島真寿美
文藝春秋



2020/3/16
2019/3/10 発行
虚実の渦を作り出した、もう一人の近松がいた──
「妹背山婦女庭訓」や「本朝廿四孝」などを生んだ人形浄瑠璃作者、近松半二の生涯を描いた比類なき名作!

江戸時代、芝居小屋が立ち並ぶ大坂・道頓堀。大阪の儒学者・穂積以貫の次男として生まれた成章(のちの半二)。末楽しみな賢い子供だったが、浄瑠璃好きの父に手をひかれて、竹本座に通い出してから、浄瑠璃の魅力に取り付かれる。父からもらった近松門左衛門の硯に導かれるように物書きの世界に入ったが、弟弟子に先を越され、人形遣いからは何度も書き直しをさせられ、それでも書かずにはおられなかった……。
著者の長年のテーマ「物語はどこから生まれてくるのか」が、義太夫の如き「語り」にのって、見事に結晶した奇蹟の芸術小説。

筆の先から墨がしたたる。やがて、わしが文字になって溶けていく──

         ****************************

 


Google
完全ガイドブック


2020/3/
(目次)
第1章 Googleサービスの基本を知ろう
第2章 Google検索を使いこなそう
第3章 Gmailでメール環境を快適にしよう
第4章 Googleマップを使って出かけよう
第5章 Googleカレンダーで予定を管理しよう
第6章 Googleドライブでファイルを管理しよう
第7章 Googleフォトで写真を整理しよう
第8章 YouTubeの動画を楽しもう
第9章 Google Chromeを使いこなそう
第10章 そのほかのGoogleサービスを使おう

     ******************************

 既に使っていたり知っていたりしたのであまり驚かなかったので斜め読み。


熱源
川越宗一
文藝春秋



2020/2/28
2019/8/30 発行
 樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。
 一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。
 日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。
文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。
樺太の厳しい風土やアイヌの風俗が鮮やかに描き出され、国家や民族、思想を超え、人と人が共に生きる姿が示される。
 金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作。(Bookデータベース)

       ******************************

 


持統天皇
壬申の乱の「真の勝者」
瀧浪貞子



2020/2/24
2019/10/25 発行
 後の天智天皇の子として大化改新の年に誕生した少女は、五歳のときに祖父が自害し、心痛の余り母が没するという悲劇を体験する。十三歳で叔父の大海人皇子(後の天武天皇)と結婚。有間皇子の謀反や白村江の戦いの後、二十七歳のとき、古代最大の争乱である壬申の乱を夫と共に起こし、弟・大友皇子に勝利する。その後は中央集権化に邁進し、兄弟継承だった皇位を父子継承に転換させた。古代国家を形作った女帝の実像とは。

   *****************************

 当時の皇位は兄弟継承が慣習であったこと、女帝は実子を皇太子から外すことが前提であったこと、即位は三十歳になってからとされていたなど、興味深い。
 だが、子どもや孫に継がせたい思いが、制度を変えることになる。皇位継承のルールを変え、「万葉集」を編み、
 


小学生のための
スターウォーズで学ぶ
 はじめてのプログラミング

学研





2020/1/18
2019/10/1 発行
 プログラミングは、まるでゲームのよう。
これなら小学生に楽しく覚えられるかもしれない。

 私が期待したモノとは違っていたが。


 タイム・ラッシュ
天命探偵真田省吾
神永 学
新潮社


2020/1/17
2008/3/20 発行
 真田省吾、職業は探偵。養護施設で育ち、元警視庁の敏腕刑事に拾われ事務所に住み込みで働いていた。ある日、謎の美少女から奇妙な依頼が持ち込まれる。「私の夢の中で殺される人を助けて」。彼女は人の死を予見する能力を持ち、それが現実になる可能性、これまで100%──この予知夢に法則はあるのか、そして運命は変えられるのか?

        ****************************

 


旅をする木


星野道夫

文藝春秋





2020/1/13

1995/8/15 発行
正確に季節がめぐるアラスカの大地と海。そこに住むエスキモーや白人の単純で陰翳深い生と死を、味わい深い文章で描く。天と地と人が織りなす物語を、暖かく語りかけてくるエッセイ集。

        *****************************

 写真のない星野道夫ってどうよ?
 と思いながら読み始める。はじめは何だかなーと思っていたが、少しずつ心にしみ始める。静かな文章が、アラスカの大地の広大さ、静けさ、そして寒さを感じさせ、そこに生きる人や動物の息遣いを写真以上に感じさせてくれた。
 このような環境にいると哲学者になるのかなァ。

 「スイスには自然は残っていないのです。ほとんどが人の手が入った人工的な自然です。もし動かせるのなら、スイス人は山の位置さえも動かしたでしょう」ぼくはこの旅で、どうしてアラスカにはスイスやドイツからの観光客が多いのかがわかりました。数日前、友人とザルツプルク郊外の山に登ったのです.けれどもアラスカから来ると、コーロッパアルプスに箱庭のように小さく見えます。とでも美しいのですが、奥行きがないのです。ホッとさせてくれる自然ですが、人間を拒絶するような壮大さがないのです。ヨーロッパの人びとがアラスカに魅かれるのは、本当の野生の自然を求めてやって来るのですね。そのことが身にしみてわかりました。ーーーこうして星野氏もアラスカに惹かれたのか。

 あとがきにーーー木が生えない北極圏のツンドラで、なぜ流本が海岸に打ち上げられているのだろうと不思議に思いました。それは川に流され、長い旅をへて海に出て、やがで海流に運ばれながらある日遥かな北の海岸にたどり着いた一本のトウヒの木だったのです。ーーーーけれども、その流木は風景の中でひとつのランドマー
クとなり、 一羽のツグミが羽を休める場所だけでなく、ホッキョクギツネがテツトリーの匂いを残すひとつのポイントになっていたのかもしれません。また流本はゆっく,と腐敗しながらまわりの土壌に栄養を与え、いつの日かそこに花を咲かせるのかもしれません。そう考えると、その流木の生と死の境というものがぼんやりしてきて、あらゆるものが終わりのない旅を続けているような気がしてくるのです。ーーー誰もがトウヒのようにそれぞれの一生の中で旅をしているのでしょう、と語っている。

 この出版の1年後に熊に襲われ無くなっている。とても残念なことだ。


ipadバカ
美崎 栄一郎
アスコム



2019/12/10
2011/1/24 発行
くる日もくる日もiPadと向かい合い、仕事、生活の様々なシーンに活用し倒した著者。

スケジュールやタスク管理、メール、写真、クラウド系のオンラインストレージ、ノート、プレゼン、地図、ゲーム、子育て・・・などなど、これまでに試したアプリは計800種類以上。

1000冊の書籍もスキャンしてすべて取り込み、自宅の書棚をスッキリ整理。講演や商談、打ち合わせ時にもiPadをフル活用して喝采をあびる週末には妻の料理や子どもとのゲームにもiPadの登場。

        *******************************

 


怖い絵
中野京子
朝日出版社



2019/12/9
2007/7/25 発行



読書日誌Top

inserted by FC2 system